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宅建業者の注意義務と最高裁判例、それに高裁判決紹介

2021年12月9日 公開 / 2022年8月20日更新

テーマ:宅建業法

コラムカテゴリ:法律関連

宅建業者の注意義務と最高裁判例、それに高裁判決紹介

1.宅建業者の不動産仲介報酬に課された制約の意味と法律効果について
最高裁昭和45年2月26日判決は、「宅地建物取引業法17条1項、2項は、宅地建物取引の仲介報酬契約のうち告示所定の額を超える部分の実体的効力を否定し、右契約の実体上の効力を所定最高額の範囲に制限し、これによつて一般大衆を保護する趣旨をも含んでいると解すべきであるから、同条項は強行法規で,所定最高額を超える契約部分は無効であると解するのが相当である。そして、売買の依頼をした売主が違約金を取得して売買が完結に至らないで終つた場合に、売主から媒介を依頼された宅地建物取引業者が報酬金を取得できる場合の報酬金額についても、宅地建物取引業法17条1項、2項、昭和40年4月1日建設省告示第1、174号の適用があると解すべきである。」と判示。

2.宅建業者が、その顧客と媒介契約によらずに売買契約により不動産取引を行う場合の義務
福岡高裁平成24年3月13日判決は、「宅建業者が,その顧客と媒介契約によらずに売買契約により不動産取引を行うためには,当該売買契約についての宅建業者とその顧客との合意のみならず,媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要があり,これを具備しない場合には,宅建業者は,売買契約による取引ではなく,媒介契約による取引に止めるべき義務があるものと解するのが相当である。宅建業法46条が宅建業者による代理又は媒介における報酬について規制しているところ,これは一般大衆を保護する趣旨をも含んでおり,これを超える契約部分は無効であること(1の最高裁判決を引用)及び被控訴人らは宅建業法31条1項により信義誠実義務を負うこと(なお,その趣旨及び目的に鑑み,同項の「取引の関係者」には,宅建業者との契約当事者のみならず,本件のように将来宅建業者との契約締結を予定する者も含まれると解するのが相当である。)からすれば,宅建業者が,その顧客と媒介契約によらずに売買契約により不動産取引を行うためには,当該売買契約についての宅建業者とその顧客との合意のみならず,媒介契約によらずに売買契約によるべき合理的根拠を具備する必要があり,これを具備しない場合には,宅建業者は,売買契約による取引ではなく,媒介契約による取引に止めるべき義務があるものと解するのが相当である。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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