コラム
「営業秘密」と企業法務
2021年7月7日
「営業秘密」と企業法務
1.不正競争防止法で保護
「営業秘密」は、不正競争防止法で保護されています。
不正競争防止法では、窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(営業秘密不正取得行為)は犯罪として処罰されたり、差止請求や損害賠償請求の原因にもなります。
2.最近の有名な事件
‘1)本年(2021年)1月、高速通信規格「5G」に関するソフトバンクの技術情報を不正に持ち出したとして、警視庁が同社の元社員を不正競争防止法違反(営業秘密領得)容疑で逮捕しました。この元社員は、持ち出した直後に同業の楽天モバイルに転職していたことから、その後、ソフトバンクがこの元社員と楽天モバイルに対し10億円の損害賠償などを求める民事訴訟を起こす事態に発展しました。
(2)本年7月はじめのマスコミ報道によれば、回転ずし店大手「かっぱ寿司」を運営する会社の社長が同業他社の売り上げデータなどを不正に受け取ったとの疑いで、警視庁が不正競争防止法違反事件として捜査を開始したことが報じられています。
3.営業秘密持ち出し事例頻発
マスコミ報道によれば、警察庁のまとめでは、2020年1年間で、全国の警察が不正競争防止法違反(営業秘密領得)で検挙した事件は22件あり、検挙事件数では過去最高となったとのことです。
その原因としては、①企業間の競争の激化や②人材の流動性の高まり、それに③企業内での秘密管理体制の甘さがあるとされています。
4.営業秘密の持ち出し犯人
多いのは、中途退職者です。
情報処理推進機構(IPA)は2021年3月、国内企業を対象に営業秘密の管理状況についてまとめた調査を公表しましたが、調査に応じた会社は、約2000社。
そのうち5.2%の企業が、情報漏洩と思われる事案を経験。
さらにそのうち「中途退職者による漏洩」が36.3%で、ルート別ではこれが最多となったとのことです。
5.営業秘密の要件
営業秘密を保護してもらいたいと考える会社は、その情報が、
①秘密として管理されていること(秘密管理性)
②事業などに有用なこと(有用性)
③公然と知られていないこと(非公知性)
の3つの要件を満たす必要があります。
このうち、最も大切なのは①の秘密管理性です。
例えば、パスワードを設けたり、アクセスを制限したりして一般の情報と区別して管理し、営業秘密であることが、社員にわかるような秘密管理性を持たせておく必要があるのです。
6.デジタルフォレンジックで自衛
会社は、企業秘密を守る必要があります。
その方法の一つに、「デジタルフォレンジック(電子鑑識)」の活用があります。
「デジタルフォレンジック(電子鑑識)」というのは、膨大なメールなどのデータを人工知能(AI)を使って分析する技術のことですが、これは2021年6月にあった東芝事件で一躍脚光を浴びることになりました。これについては過去のコラムで解説済みです(2021/06/13 独立社外取締役に求められる適性)。
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