コラム
親の土地に家を建てさせてもらったが、地代を支払わない場合は、税金がかかるの?
2015年10月4日
いいえ。原則として、かかりません。
昭和43年11月25日大阪地方裁判所判決は、妻が夫から無償で土地を借受けた場合、つまり使用貸借契約を結んだ場合、借主である妻は、その契約によって無償で利益を受けているが、その利益は、通常権利金が支払われる地域であっても、権利金を支払わないですんだことによる権利金相当額ではなく、妻が夫に支払わずにすんだ賃料相当額である、と判示し、使用貸借契約では権利金の認定課税を認めませんでした。
国税庁は、この判決を契機に、相続税法(相続税と贈与税)の取扱いを変更し、相続税個別通達昭48直資2-189「使用貸借に係る土地についての相続税お呼び贈与税の取扱いについて」で、取扱いを整備し、使用貸借の場合は権利金の認定課税をしないこと、地代相当の贈与についても、その金額が少額である場合や課税上弊害がないと認められる場合には贈与税は課税しないことにしました(相基通9-10)。
参考(国税庁のQ&Aより)
親の土地に子供が家を建てたとき [平成17年4月1日現在法令等]
土地の貸し借りが行われる場合に、借り手は地主に対して地代を支払います。
権利金の支払が一般的となっている地域においては、地代のほか権利金などの一時金を借地権設定の対価として支払うのが通例です。しかし、親の土地に子供が家を建てたときに地代や権利金を支払うことは通常ありません。
このように地代も権利金も支払うことなく土地を借りる場合を土地の使用貸借といいます。
親の土地を使用貸借して子供が家を建てた場合、子供が親から借地権相当額の贈与を受けたことになるのではないかという疑問が生じます。
しかし、使用貸借による土地を使用する権利の価額はゼロとして取り扱われていますので、この場合、子供に借地権相当額の贈与税が課税されることはありません。
この使用貸借されている土地は将来親から子供が相続する時に相続税の対象となります。相続税の計算のときのこの土地の価額は他人に賃貸している土地ではなく自分が使っている土地として評価されます。つまり、貸宅地としての評価額でなく更地としての評価額になります。(昭48直資2-189)
<注意>
なお、使用貸借契約を結んでも税金がかからないというのは、地主、借主とも個人の場合だけです。法人が関与しますと、税金がかかりますので、注意が必要です。
関連するコラム
- 税金と養育費 2012-03-30
- 民法と税法 低額譲渡の基準となる「時価の2分の1未満の価額」の射程範囲 2014-10-30
- 民法と税法 8 和解金支払時に,源泉徴収義務はあるか? 2014-10-20
- 民法と税法 3 時効取得(財産を時効取得したときの税金と時効取得の時期) 2013-06-24
- 民法と税法 4 不動産取得税の性格 2013-07-06
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。