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民法と税法 低額譲渡の基準となる「時価の2分の1未満の価額」の射程範囲

2014年10月30日

テーマ:民法と税法

コラムカテゴリ:法律関連

Q 不動産を,時価の2分の1未満の価額で譲渡すると,譲渡した人には,時価で譲渡したものとみなされ,譲渡所得課税がなされ,譲渡を受けた人は,時価との差額を贈与されたものとして贈与税が課されると聞きましたが,事実ですか?

A 個人が法人に資産を譲渡した場合は,そのとおりです。
 すなわち,所得税法59条1項2号は,「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)」をした場合は,時価で譲渡したものとみなすという規定ですが,ここでいう「政令で定めた額」は,所得税法施行令69条で「資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額」とされていますので,個人が法人に対し,「時価の2分の1未満の価額」で資産を譲渡した時に限り,低廉譲渡となり,譲渡した個人にみなし譲渡所得課税がなされ,譲渡を受けた法人は譲渡価額と時価との差額について寄附を受けたことになり,法人税が課されることになります。
 しかし,個人対個人の場合は,これらの規定は適用されません。方59条1項2号が,括弧書きで,法人に対するものに限る,と規定しているからです。
なお,資産とは,土地、借地権、建物、株式等の資産のことで,譲渡とは、有償無償を問わず、所有資産を移転させる一切の行為のことで,売買、交換、競売、公売、代物弁済、財産分与などがあります。
個人の譲渡者対個人の譲受者の場合については,国税庁ホームページの「No.4423 著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」に,「個人から個人に著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合には、その財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額は、財産を譲渡した人から贈与により取得したものとみなされます。著しく低い価額の対価であるかどうかは、個々の具体的事案に基づき判定することになります。」と書かれています。なお,これにも,念入りに,「法人に対して譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合に、時価で譲渡があったものとみなされる「著しく低い価額の対価」の額の基準となる「資産の時価の2分の1に満たない金額」により判定するものではありません。」と書かれています。
なお,ここでいう「時価とは、その財産が土地や借地権などである場合及び家屋や構築物などである場合には通常の取引価額に相当する金額を、それら以外の財産である場合には相続税評価額をいいます。」と書かれています。
したがって,個人から個人への資産の譲渡の場合は,対価が「時価の2分の1以上の価額」である場合でも,「個々の具体的事案に基づき判定され」「著しく低い価額の対価」であるとされると,譲渡人には,みなし譲渡所得課税がなされ,譲受人には,贈与税が課されることになります。
 節税目的で,親族間で時価より低い金額で資産を譲渡すると,低額譲渡とされるおそれが大です。
なお,土地の時価については,「相続税評価額が公示地価の8割程度とされているところから、相続税評価額を0.8で割って求めた金額」と考えておくと問題はないであろうという人がいます。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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