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11 ブルータスお前もか!データ(品質検査)ねつ造事件の系譜

2023年4月2日

テーマ:コーポレートガバナンス改革

コラムカテゴリ:法律関連

10.ブルータスお前もか!と叫びたくなる、データ(品質検査)ねつ造事件の系譜

(1)データねつ造事件の連鎖が、低成長の原因か?
我が国の上場会社、しかも東証プライム市場に上場した大企業の何社かが、役者を代え、時には同じ役者が繰り返し、連年、品質検査のねつ造劇を演じ、観客のスタンディングオペレーションならぬ、世間の指弾を受け続けているが、この品質検査ねつ造事件の系譜は、深刻な“失われた30年”という名の長い長い日本経済の低成長とは無関係ではあるまい。

かつて名門として知られ、「雪印」という高いブランド力のあった会社(雪印食品)は、2001年に、牛肉の産地偽装事件を演じ、それがため、舞台から引きずり降ろされてしまった(廃業のやむなきに至った)が、このような日本の誇る名門企業が、同じ轍を踏む姿など、誰も見たくはないはずだ。これからも上場会社の品質検査ねつ造事件が連年続くとなると、日本の企業の成長軌道を元に戻すことは望むべくもないことになってしまう。

(2)影響するところ大
品質検査ねつ造事件の影響するところは、実に大きい。
➀ グローバルな経済戦争の中で、競争力を落としていくであろう。
これは少し考えるだけでわかるはず。

② 退職する者、自殺をする者、健康な体変じて精神疾患になる者が出るであろう。
これは、名門企業の社員になった喜びが、ある日ある時に消え去り、親にも言えない、後ろ暗い犯罪の共犯者となっている事実を知れば、必然的に発症する病理現象である。
③ 会社が、パワハラの温床になるであろう。
データねつ造の片棒を担がされていることを知った社員は、退職しないまでも、病気にならないまでも、意識的、無意識的なサボタージュを起こすであろう。そうすると、それに対する上司の苛立ちの声がありして、パワハラに発展することも、見やすい道理である。これは“品質検査ねつ造事件の陰にパワハラあり”というべき自然現象であると思える。

以上の経済競争力の劣化と職場環境の激変は、陰に陽に、いろいろな形で負の遺産となって、当該企業にいつまでも残ることになるであろう。
それにとどまらず、日本人の倫理の高さに影を落とすことも、懸念される。
であるから、日本政府は、政治面と政策面から、品質検査ねつ造の系譜を断ち切る行動を起こすべきである。

罰則の強化や行政処分の強化は、必要であろう。アメリカでは、ことのほか、重い罰則規定があるようなので、それに倣うべきであろう。

経営トップの記者会見での叩頭謝罪と、役員報酬の数ヶ月間一定割合の返納(時には引責辞任)だけでは、品質検査ねつ造事件の系譜を断つことはできないであろう。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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