コラム
新著 第3章 リスク管理システム(内部統制システム)の整備
2019年12月3日
新著予告(概要)
第3章 リスク管理システム(内部統制システム)の整備
能者は座して千里の先を見るというが、取締役は、千里の先はおろか、地球の裏側まで見えるシステムをつくる義務がある。これがリスク管理システム(内部統制システム)の整備義務である。
1. 大和銀行事件(大阪地方裁判所平成12年9月20日)判決 取締役としての善管注意義務及び忠実義務の内容をなすものと(して)・・・健全な会社経営を行うためには、・・・事業の種類、性質等に応じて生じる各種のリスクの状況を正確に把握し、適切に制御すること、すなわち・・・リスク管理システム(いわゆる内部統制システム)を整備することを要する。・・・
・・。
2. 財界に激震起こす
財界は、この判決に衝撃を受け、これじゃあ取締役のなり手がいなくなる!などと言い、政治家に働きかけて、取締役の責任軽減制度が立法化されるなどした。
3. 子会社のリスクまで把握できる内部統制システムの整備義務
福岡高裁平成24年4月13日判決がきっかけになり、「親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」が、この判決の直後に付け加えられた。
4. 株主代表訴訟
今日では、取締役の不祥事によって会社に損害が発生したことがマスコミ等で明らかになると、ほとんどの場合、取締役に対する株主代表訴訟が提起されるようになっている。
5. 内部統制システム整備義務は、会社以外に広がる
組合組織の法人、医療法人、社会福祉法人等は言うに及ばず、大学についても、自治体にも内部統制システム(リスク管理システム)を整備する義務が明文化されたほどだよ。なお、・・・最高裁判所も仙台高裁判決を支持した(日経2019年10月12日「大川小訴訟 遺族勝訴が確定 学校現場に重い責任」)。
6. 最高裁の判決でいう、内部統制システム整備のメリット
最高裁は、通常想定される架空売上げ等の不正行為を防止し得る程度の内部統制システムが整えられている場合は、通常想定されないリスクに気がつかなかったとしても、取締役には責任はないと判示している(最高裁判決平成21年7月9日)。
7. Dドーナツ事件判決とクライシス・マネージメント
リスクが発生した後の処置については、「クライシス・マネジメント」といわれる問題がある。ドーナツの製造販売をするD社につき、大阪高等裁判所平成18年6月9日判決は、取締役が、不祥事を知った後は、速やかに信用失墜を最小限にとどめる適切な対応を取るべきだったのに、そうしなかったことにより被害の拡大を招いたことを捉えて、「積極的に公表しなかったことは、消極的隠蔽と言い換えられる」と指弾し、取締役の損害賠償責任を認めたよ。本判決では、「クライシス・マネジメント」という言葉が初めて使用され、最高裁でも支持された。
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