コラム
ホールディングスが増えた理由
2017年7月30日 公開 / 2017年9月20日更新
「のう、後藤!最近ホールディングスという語が入った商号をよく見るが、なにか理由があるのか?」
「ホールディングスというのはなあ、一般には、純粋持株会社又は事業持株会社のことだ。純粋持株会社というのは、ドイツ語でいうコンツェルンだが、これは、自らは事業をしないで、傘下に多くの完全子会社を支配し、効率のよい経営を追及する会社形態をいう言葉だ。我が国の戦前、財閥といわれた企業群があっただろう。あれもコンツェルンだ。ところで、菊池よ!お前も知ってのとおり、戦後すぐ独禁法が制定されただろう。この法律はGHQの要請を受けてできたものだが、その時、第9条で純粋持株会社が禁じられたんだ。これが財閥解体の正体さ。これは、当時あった三井とか三菱という財閥が日本の軍事力を支えた元凶と、アメリカに思われたことによるのだ。これにより、我々は、長い間、“財閥は悪い”という誤った観念を持ってしまったんだが、敗戦国で純粋持株会社を禁止したのは、日本だけだぞ。それだけアメリカは、我が国の軍事力の復活を恐れていたということかもしれないがな。」
「それで、現在なぜ、ホールディングスが多くなったんだ。」
「それはなあ、その後、すなわち平成9年、アメリカが、我が国に、ビッグバンといわれる金融市場の開放、を迫ったとき、時の政府が、それを受け入れる条件として、純粋持株会社を解禁することをアメリカに承知させたんだ。アメリカがわが国に、ビッグバンを求めたのは、当時、わが国の民間金融資産が1200兆円を超えたなどといわれ、アメリカの金融機関や証券会社にとって、これが垂涎の的になったということだよ。その結果、わが国は一方で金融の自由化を認め、他方で独禁法を改正して純粋持株会社の設立を可能にしたのだよ。それ以後、わが国においても、純粋持株会社が多数設立されたが、事業会社を傘下に収めた純粋持株会社にホールディングス、銀行、証券、保険会社を傘下に収めた金融持ち株会社にファイナンシャルグループという商号が、よく見られるようになったんだ!もっとも、純粋持株会社ばかりでなく、自らも事業をする事業持株会社も、ホールディングスを使っているがね。」
「なるほど。俺たち、戦後の教育のせいか、財閥は悪だというイメージをもっていたよなあ。でも違うんだ。傘下に多数の完全子会社をもってするホールディングスは、資金調達力にも優れるもんなあ。効率の良い事業経営の一つの形なんだな。」
「恐らく、今、最も理想的な企業の形かもしれないよ。」
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