コラム
大切にしたいもの 友
2017年3月22日
刎頸(ふんけい)の友という言葉があります。その友のためなら、たとえ首を切られても、悔いないくらいの友、という意味の言葉です。
そのような友というのを想像することは、凡々たる我が身には不可能なことですが、中国の三国志に光彩を放つ、関羽と張遼との関係は、一つの友の形です。
はじめ、関羽は、呂布軍との戦いの中で、敵将張遼に会います。張遼は呂布軍の将です。お互い、ああ、良き敵将かな!と言って眺めあい、そして矛を交えます。いずれも大剛の者。勝負は尽きません。やがて、呂布は破れ曹操に殺されます。張遼は死をかけて最後の一戦を試みようとしたのですが、関羽が、義のない犬死にをするなかれ!と言って、曹操に降伏することを勧めます。このとき関羽は、大兵力を擁する曹操軍の驥尾に付く弱小軍、劉備玄徳の義弟であり、その武将です。
張遼は、その後、士を愛する曹操にみとめられ、その一武将になるのですが、その後、曹操と劉備との間に戦いが始まります。そして、弱小軍である劉備軍は破れ、四分五裂となり、劉備は、華北の袁紹を頼って逃亡します。
関羽は劉備を逃がすため、曹操軍と最後まで戦いますが、衆寡敵せず、ついに敗死する覚悟を決めます。そこへやってきたのが、曹操軍の武将になった張遼です。張遼は関羽に会い、関羽には、同年同月同日に共に生まれることは望まぬが、同月同月同日に共に死なん!と、桃園の誓いを立てた劉備(もう一人は張飛)がいるではないか。劉備の妻子を保護し劉備に引き合わせる責任があるではないか。それまでは死ぬなかれ!と言って、曹操に降伏することを勧めます。
このとき、関羽は、捕虜になる条件として、張遼を介して曹操に三つの約束をさせます。捕虜となった武将が天下の覇者曹操に、条件を付けるのですから凄いものです。その約束の一に、劉備が生きていることが分かったときは、関羽はいつでも曹操の下を去る、という約束があるのです。さすがの曹操もそんな約束は飲めません。それを、懸河の弁をふるって、曹操にその約束をさせたのが張遼だったのです。かくして、関羽は曹操の下、虜将として、それなりの活躍をするのですが、曹操と袁紹との白馬の戦いで顔良と文醜を討ち取った絵は、さながら三国志上に、燦と輝く一幅の絵になっているほどです。
その後、関羽は、劉備の生きていることを知り、約束どおり、曹操が支配する許都を去るのですが、それを去らせまいとする曹操幕下の武将らの中にあって、張遼はひとり、曹操を説得して、関羽の脱出を助けるのです。その後も、関羽と張遼は、敵と味方に別れ、長い戦いを戦うのですが、英雄は英雄を知るの心で、敵でありながら、お互いを認め合うのですから、すごいものです。
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