コラム
事業の承継3 何故,経営者は,小説「徳川家康」を読むのか?
2016年5月27日 公開 / 2016年5月30日更新
苦しみよ!不幸よ!汝らは決して悪いものではない。
苦しみや不幸の経験は、その原因を教えてくれ,かつ,その打開の方法を考えさせてくれる。
人に,学問があれば,この知識と知恵から,哲学が生まれる。
哲学とは,苦しみや不幸に打ち勝つ理を,分かりやすい言葉で表現する力であり,論理であり,光である。
だから,苦しみや不幸は,悪いものではない。
これは,アレクサンドル・デュマが、小説「モンテ・クリスト伯」の中で、ファリア神父の口を通して語った言葉です。
そして,ファリア神父は,エドモン・ダンテスを無実の罪に陥れ,光すら差さない監獄に送った犯人達を,この哲学と論理を拠り所として,解明してみせるのです。
すなわち,ファリア神父は,「罪は,そこから利益を得るものによって犯される。」という法の箴言(しんげん。諺・格言と同義)を用い,論理をもって,ダンテスを牢獄に送ることで利益を受ける者として,ダンテスから許嫁を奪う利益のあったフェルナン,犯罪の隠蔽とダンテスの地位を奪う利益のあったダングラール,父親の名前が出ることによって身の破滅を招くことから逃れる利益のあったヴィルフォールを,浮かび上がらせ,彼らが犯人であると断ずるのです。
その後,脱獄したダンテスの調査で,ファリア神父の言ったことが真実であったことが分かるのですが,論理と哲学をもって考えろ,と言ったファリア神父の言は,まさに正鵠を射たものであったのです。
山岡荘八の書いた小説「徳川家康」が、多くの経営者に読まれるのは、波瀾万丈の家康の生涯を描く,戦国史の面白さと、彼の粒々辛苦の中から生み出した哲学(格言)が、経営者の心を捉えたからであろうと思われます。
徳川家康は、実に多くの格言を残しています。この格言は、アレクサンドル・デュマのいう哲学であり、光ですが、その格言を読み、自分自身の思いと重なる部分に、大きく頷き、まだ、経験していない格言には啓示を受け、経営や生き様の基準にしようと意欲する経営者の姿が、想像されるところです。
関連するコラム
- 賢い事業承継の手順 7 除外合意や固定合意を結ぶ際に結べる他の合意も利用した遺留分対策が可能 2016-07-16
- 賢い事業承継の手順 4 暦年贈与の活用 2016-07-13
- 事業の承継4 何を承継させたいのか? 2016-05-28
- 女性経営者 広岡浅子 2016-06-30
- 人も,後継者も,いつまでも,呉下の阿蒙にあらざるなり 2016-06-14
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。