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不動産 中途解約を認める場合の空室保証特約の効力も制限される

2014年7月26日 公開 / 2017年9月8日更新

テーマ:不動産法(賃貸借編)

コラムカテゴリ:法律関連

建物賃貸借契約の特約として,賃借人からの中途解約を認める代償として,新賃借人が建物を賃借するまでの間,賃借人が引き続き賃料相当額の金員の支払を約束する場合がありますが,その期間を限定した裁判例があります。

東京地裁昭和50年10月28日判決です。

同判決は,契約期間が5年間の賃貸借契約で,
特約①「保証金は5カ年据置とし預託期間中は総べて無利息とする。」
特約➁「乙は都合によつて賃借契約期間中と雖も解約することができる。その場合本契約物件を甲に於て新たに賃貸し、新賃借人よりの保証金を以つて預り保証金の返還をする。」
特約③「保証金の償却は保証金の2割とする。」
特約④「乙が本賃借物件を完全に明渡したる後30日間を経過して甲は保証金を還付する。」
特約⑤「乙は,中途解約後も,新賃借人が賃借するまでは,従前の賃料と同額の金員を支払う。」
という特約が結ばれているケースで,賃借人が本件建物を明渡した後現在まで新たな賃借人が入居していないのは、その原因はもつぱら賃貸人側と経済界の不況によるものであつて賃借人側の事情によるものではないと認められるから、賃借人が負担すべき賃借料は、通常新な賃借人が入居するまでの期間、すなわちおそくとも賃借人が本件建物を明渡した後3か月分に限定するのが、当事者間の公平を図る上から相当であると判示しました。

このような判断は,妥当なものとして支持されるであろうというのが,判例タイムズ№334-248です。

なお,この判決は,特約①の「保証金は5年間据置とする。」との定めは、本件契約が中途解約がなされることなく5年間継続される通常の場合における保証金返還に関する定めであつて、中途解約がなされた場合においては適用ないものと解するのが相当である,として,賃借人は,5年間の据え置き期間を置く必要はなく,特約④により,建物を明渡した後30日を経過した時点において保証金の返還請求ができると判示しました。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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