コラム
賃貸借契約の中途解約権
2014年3月28日 公開 / 2017年9月8日更新
Q 私は,賃貸用のマンションを建築し,賃貸業を始めたばかりの者ですが,借家人は,賃貸借契約期間中,解約は自由にできるのですか?
期間満了前に,勝手に解約されないようにする方法はありませんか?
A
賃貸借契約の期間を定めた場合,借主も,その期間中は解約をしないという約束のもとに契約をしたものと考えられています。したがって,特約がない限り中途解約をすることはできません(民法618条)。
ですから,確認の意味で,賃貸借契約書には,「借主は,契約期間中,本契約を解約することはできない。」と定めておくとよいでしょう。
むろん,中途解約を認める特約を結ぶことは可能です。この場合,例えば1か月前というように一定の予告期間を設ける場合があります。また,これに解約金(違約金)が発生するという条項を設ける場合があります。解約金(違約金)が発生する旨を定める特約を定めるときには,その内容が公序良俗に違反しない限り有効となります(東京地判平成8年8月22日)。
東京地判平成8年8月22日判決は,
①建物賃貸借契約期間の途中での賃借人からの解約を禁止し、期間途中での解約又は解除があった場合には、違約金を支払う旨の約定自体は有効である。
➁しかし、違約金の金額が高額になると、賃借人からの解約が事実上不可能になり、経済的に弱い立場にあることが多い賃借人に著しい不利益を与えるとともに、賃貸人が早期に次の賃借人を確保した場合には事実上賃料の二重取りに近い結果になるから、諸般の事情を考慮した上で、公序良俗に反して無効と評価される部分もある。
③本件は,契約期間が4年間で,契約期間の途中で解約したときは,残存期間の賃料相当額を違約金として支払うという約定があった。
④本件の賃借人は,10か月を経過した後で賃貸借契約を解約したので,約定によって,残存期間3年2カ月分の賃料相当額の違約金の支払義務が生ずることになる。
⑤しかし,賃借人が明け渡した本件建物について、賃貸人が次の賃借人を確保するまでに要した期間は、実際には数か月程度である。
⑥約3年2か月分の賃料相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人会社に著しく不利であり、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから、その効力を全面的に認めることはできず、1年分の賃料相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効と解する,と判示しました。
契約条項例
中途解約権を認める特約やその解約金(違約金)の条項例を,以下のとおりご紹介しておきます。
①中途解約権を認める条項
例)第○条 貸主又は借主は,本契約期間内であっても,○日(週間・カ月)前でに相手方に書面で通知することにより本契約を解除することができる。
②中途解約の場合に解約金(違約金)が発生する(期間制限なし)
例)第○条 借主が本契約を期間満了前に中途解約する場合,借主は貸主に対し,本契約が中途解約により終了した日の翌日から契約期間満了までの賃料相当額を違約金として支払わなければならない。
※解約金(違約金)の予定額として上記のような定め方をした場合,中途解約日から契約期間満了日までの残存期間が長期にわたり,解約金(違約金)の金額が高額となるとき,公序良俗違反として特約の一部が無効とされ,解約金(違約金)が制限されることがあります(東京地判平成8年8月22日・資料)。
他に,解約金(違約金)の予定として○か月分の賃料というように確定的な額を定める場合もあります。
③中途解約権の場合に解約金(違約金)が発生する(期間制限あり)
例)第○条 借主が本契約締結後○年以内に中途解約する場合,借主は貸主に対し,本契約が中途解約により終了した日の翌日から契約期間満了までの賃料相当額を違約金として支払わなければならない。
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