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不動産 不動産 農地を買って仮登記している場合の権利と時効(続き)

2014年3月27日

テーマ:不動産

コラムカテゴリ:法律関連

3,売主の時効消滅援用権が権利の濫用になる場合がある

買主の農地転用許可申請協力請求権を,時効によって消滅したという,売主のする消滅時効の援用が,権利の濫用に当たるから許されないとされた裁判例があります。

東京高裁平成11年11月17日判決は,次の事実関係の下では,売主の時効援用権の行使が権利の濫用になって許されない,と判示しました(一審の判決も同様です)。
①市街化調整区域内の農地について,農地法五条の農地転用を条件とすることを明示した売買契約を結んだ。
➁農地転用許可を受けるために事実上不可欠である自治体との協議成立までに相当の期間を要することが予想されたことを,売主買主とも知っていた。
③買主は,売主に売買代金全額を支払い,売主は、農地の耕作を止めて,土地を買主に引き渡した。以後土地の管理は買主がしている。
④売主も買主も,土地の実質的な所有者は買主であるとの認識を有し,固定資産税は買主が負担してきた。
⑤買主は,売買契約後,農転許可を得るため,積極的な働きかけを続けてきており、その努力もあって、その地区の開発計画が次第に実現の可能性を帯びるようになっている。
⑥以上の次第で,法律上本件売買契約に基づいて当事者が履行すべき行為は、売主による農地転用許可申請手続と所有権移転本登記手続を除けば、既に実現ずみであるということができ、右の手続が遅れていることにより、売主が受ける法律上の不利益というのは考えられない。
⑦そうすると、現時点において、売る主が許可申請協力請求権について消滅時効を援用し、本件土地を取り戻すことを容認するならば、買主が長年にわたって取り組んできたその地区開発に向けての努力の結果を奪い去ることになるし、仮に、将来現実に本件土地付近が市街地として開発されたときは、売主は、買主が払った努力の上に、市街地開発による利益を享受するという不当な結果を招くことにもなる。
⑧よって,売主による許可申請協力請求権の消滅時効の援用は、権利の濫用になり許されない。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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