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契約書 12 業務委託と労働者派遣の分水嶺

2013年12月21日

テーマ:契約書

コラムカテゴリ:法律関連

1,問題
甲社と乙社が業務委託契約を結び、乙社の従業員が甲社へ出向き、業務委託契約の履行をするというケースは、アウトソーシングの1つの形態ですが、この業委託契約は、はたして、請負契約なのか、労働者派遣契約なのかは、重要な問題です。
契約が、前者の場合は、格別問題は起きませんが、契約が後者の場合は、たちまち偽装請負などの非難を受ける可能性もあるからです。

2,業務委託と労働者派遣を分ける基準
業務委託の場合は、受託者が自社の従業員に指揮命令をし、労働者派遣の場合は、派遣先企業が派遣労働者に対し指揮命令をします。これは最低限、業務委託か労働者派遣を分ける基準になりますが、それだけにはとどまりません。昭和61年労働省告示37号(最終改正平成24年厚生労働省告示518号)「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」には、製造現場での製造業務や、車両運行管理、医療事務受託、バンケットサービスなどの契約で、業務委託契約になる場合のあることを前提に、ある程度、具体的な基準を取り上げていますが、いま一つ明確とはいえません。
2,具体的に検討
前記告示に取り上げられている、製造現場での業務、車両運行管理、医療事務受託、バンケットサービスを、想定しながら、具体的な基準を考えて見ますと、
(1)乙社が、従業員丙を、甲社に派遣して、丙が甲社の従業員の指示するところに従い仕事をするが、乙社は、丙を派遣する以外に特段の仕事をしない場合は、甲社が乙社に対し支払う委託料は、労働者派遣の対価というほかなく、これは明らかに労働者派遣契約になります。
(2)しかし、逆に、①乙社のする業務が、従業員丙を甲社に派遣する以外にもあるということが具体的に明らかにされ、②委託料も、派遣された従業員の労務の対価を超えるものであること、③丙は、具体的な業務遂行の現場で、甲の役員や従業員の指示を受けないで乙社の指示を受けることになっていることが明らかであれば、業務委託契約といえるでしょう。
(3)例えば車両運行管理業務の委託契約があったと仮定した場合、乙社が、甲社が保有する自動車の全部につき、点検、補修、検査などの計画を立て、その計画の下で、場合によっては従業員を甲社に派遣して、場合によっては乙社に自動車を異動させて、点検、修理、点検する。また、乙社の従業員を甲社に派遣して甲社の自動車を運転して甲社の役員の送迎をする場合も、あらかじめ甲社から乙社に送迎計画を知らせ、乙社から乙社従業員の丙に送迎に関する具体的な指示をする。送迎の途中で、甲社の役員から丙に対し、直接運転の内容について指示をしたときは、丙から乙社にその旨の連絡をし、乙社から丙に対し、甲の役員の指示に従うべきか否かを指示し、丙は乙社の指示に従い運転をする(なお、甲社と乙社との間の車両運行管理業務中に、甲社の役員が運行計画の変更を求めたときは、乙社の判断で、安全運転の確保などの理由があるときは甲社の役員の指示を拒否できるという一文があると労働者派遣契約性が薄らぐでしょう。)ことを明らかにし、報酬(委託料)も、丙の労働の対価を超えるものであることが一見明らかになっておれば、業務委託契約ということになるでしょう。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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