コラム
新しい契約書案 改正民法に合わせて①「瑕疵」という言葉は使わない
2015年1月6日 公開 / 2015年1月7日更新
1,民法改正が近い
昨年の9月に,法務省から民法(債権関係)の改正仮案が公表されました。本年2月までに要綱がまとめられて公表され,3月以降改正法案が国会に上程され,民法(債権関係)改正法が成立し,来年か再来年あたり改正民法が施行される見込みです。
2,法律概念が変わる
改正民法の時代を迎えると,それまでに存在していた法律概念(法律用語)が変わるという現象が起こります。例えば,「瑕疵」という用語です。「瑕疵」は改正法の下では「種類又は品質に関して契約に適合しない目的物」という言い方になります。
すなわち,仮案第30は,「売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合の事実を知った時から1年以内に当該事実を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時に目的物が契約の内容に適合しないものであることを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときは、この限りでない。」と定めているからです。
3,契約書を書く場合,用語が違ってくる
法律概念が変われば,契約書に書く法律概念もまた変わってきます。
「瑕疵」という用語は使われなくなり,「契約不適合」という用語に変わるなどです。
なお,現在の民法では存在する「隠れた瑕疵」という概念の「隠れた」に相当する概念は,改正民法の中にはありません。
ですから,契約書を書く場合も,用語を変えただけでよいというものではありません。
ですから,これからの契約書に書く文言は,これまでなら「瑕疵があったときは」又は「隠れた瑕疵があったときは」と書いていた場合も,これからは「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物であったとき」という書き方をすべきことになります。場合によっては,「瑕疵(種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物)」というように,瑕疵という言葉を使い,その意味として改正民法の言葉を書く書き方をしたほうがよいかもしれません。
(以下続く)
関連するコラム
- 契約書 第三者のためにする不動産売買契約 2014-02-10
- 契約書知識 3 「全責任を負う」という言葉の誤解 2013-11-27
- 契約書 賃貸借契約で「公租公課は貸主が負担する。」との約定の意味 2014-11-02
- 契約書知識 16 契約書の表記は公用文表記法による 2014-01-07
- 契約書知識 15 契約書の記載事項(2) 2014-01-06
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。