コラム
大切にしたいもの 8 争わない心
2012年4月27日 公開 / 2014年3月11日更新
1 「争わない」という言葉の意味
争わない、とは、あなた自身に対する相手の言い分を受け入れ、反論しないと言うことです。さらには、あなた自身に対する相手の要求を受け入れてあげるということです。
2 争わないことの難しさ
人を「責めない」でいることも、人を「褒める」ことも、人の考えを受け入れ、考え方の多様性の一つとして知識を「増やす」ことも、それをしたからといって、“損になる”ことではありません。
ところが、争わないとなると、直接利害に関係し、“損になる”結果を招きます。
あなたは、あなたとは利害が対立する相手の要求を受け入れることができますか?
一般の人にとっては、争わないで相手の要求を受け入れることは、たいへん困難が伴うのではないかと思います。
3 世に成功を収めている人は、争わない人が多い。
今から20年以上も前のことです。建設会社の経営者A氏は、数千万円もの建築代金を有している債務者B社の社長から、建築工事に瑕疵があるので工事代金は1円も支払わないと言われたとき、“分かった、では請求しない”と言い、請求を断念されたことがありました。私は、当時も今もA氏の会社の顧問弁護士を務めていますが、このときはびっくりしてA氏に訴訟を起こすことを勧めました。しかしA氏は、“相手が悪かった。我が社はB社と訴訟をしているというだけで信用に傷がつく。だから争い事にはしない。”と言われたものです。
その後も、A氏の会社は、年々信用を厚くし、会社の業績を挙げ続け、財務内容の堅実の度も深め、県内では有数の会社になっています。
A氏の人生哲学は、他人と争わない、相手から裏切られても自分は裏切らない、というものです。
俗に“損して得をとれ”などという言葉もありますが、世に成功を収めている人には、争わない人が多いように思えます。
4 争わないことは、誇りをもった余裕を示すこと
争わないことは、卑屈な譲歩ではありません。誇りをもった余裕を示すことです。
後味の悪い譲歩や、卑屈な譲歩、後悔するような譲歩は、ここでいう“争わない”こととは次元が違います。
5 争うとき
譲歩が、その人の尊厳にかかわるものならば、断固、争いを避けてはなりません。しかし、その尊厳すらも、それが“小事”であれば、“小事に拘泥せず”もまた争わない心といえるでしょう。
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