コラム
テレビ報道等が名誉毀損になる場合② 名誉毀損にならない要件
2018年2月14日
1 名誉毀損の成立要件
これは、「公然事実を摘示し、人の名誉を毀損すること」(刑法230条)です。
「公然」とは、不特定多数の人が見聞きできる状態にすることです。
「人の名誉を毀損する」とは、「人の社会的地位を低下させる」ことです。
2 名誉毀損にならない場合
名誉毀損の要件を満たしている場合でも、次の⑴又は⑵の要件を満たした場合は、不法行為(名誉毀損)にはなりません。
⑴
①公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合で、
②ア摘示された事実が真実であることが証明されたとき、
又は、
⑵
①公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合で、
②イ行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるとき
これは、昭和41年6月23日最高裁第一小法廷判決が、名誉毀損の不法行為が成立しない場合として、「民事上の不法行為たる名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(このことは、刑法230条の2の規定の趣旨からも十分窺うことができる。)。」と判示しているからです。
3 新聞による報道の一部が前記⑴の要件を満たし、他の一部が前記⑵の要件を満たしているので、不法行為が成立しない(名誉毀損にはならない)とされた判例
前記最高裁判決は、新聞が衆議院議員の総選挙の立候補者につき、「学歴および経歴を詐称し、これにより公職選挙法違反の疑いにより警察から追及され、前科があつた旨の記事を掲載したが、右記事の内容は、経歴詐称の点を除き、いずれも真実であり、かつ、経歴詐称の点も、真実ではなかつたが、少くとも、被上告人において、これを真実と信ずるについて相当の理由があつた。」と認定し、新聞社の不法行為を否定しました。
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