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臨時職員のダブルワークと労働時間制及び社会保険適用の問題

2016年4月3日 公開 / 2016年4月5日更新

テーマ:地方行政

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 労働時間

Q 現に甲という会社に勤務(パートタイム)をしている人を,自治体において臨時職員(学校教員)として雇用する場合,労働基準法上の問題はありますか?また,社会保険の被保険者資格はありますか?

1 労働基準法による規制
 ⑴公務員にも労働基準法が一部適用され(地方公務員法58条3項,教職給与特例法10条),労働基準法32条の労働時間規制も適用されますので,週40時間を超えての労働を求めることはできません。
⑵学校教員には夏休みがあるので,このことを考慮して,1年単位の変形労働時間制(労働基準法32条の4)が採用できないかを考えても,同制度は事業場単位での適用になりますし,そもそも地方公務員には変形労働時間制の適用がありませんので(労働基準法の当該条項の適用を排除しています)ので,週40時間を超える勤務になる場合は,雇用は困難です。

2 行政解釈
 しかしながら,週40時間を超えても,超過勤務の条件を満たしている場合は(①36条協定を結び,➁割増賃金を支払うこと)一事業場で8時間労働した後に他の事業場で働くことも可能です(行政解釈)。

2 社会保険の適用について
 社会保険については,行政解釈によれば,短時間労働者であっても常時雇用される関係(常用的使用関係)にあると認められれば,被保険者となるにされます。この判断は,総合的な判断になりますが,主として,労働時間と労働日数が目安になります。
 まず,労働時間についていえば,いわゆる正社員の所定労働時間を1としたときに,短時間労働者の労働時間が概ねその4分の3以上になることが求められます。また,労働日数についても同じように,いわゆる正社員の所定労働日数を1としたときに,短時間労働者の労働日数が概ねその4分の3以上になることが要件とされています。これらの要件を満たす場合には常用的使用関係に該当すると判断され,短時間労働者であっても社会保険の被保険者となることができます。
 ここで,短時間労働者が2以上の事業所に勤務している場合には,それぞれの事業所でこれらの要件を判断することになります。したがって,2事業所がともにそれぞれ4分の3の基準を下回る場合には,双方の事業所ともに社会保険に加入させる義務はないということになります(年金事務所担当者から確認)。ですから,労働時間を調整することにより,正社員等の労働時間の4分の3を下回る労働時間しか勤務できないことになると,どちらの事業所でも社会保険の適用を受けるとこができないおそれがあります。
 ただし,平成28年10月からは,501人以上の従業員を雇用する事業所においては,週20時間以上勤務する労働者について,社会保険の被保険者とする義務が生ずることになります。
以上
参考文献など
1 労働基準法解釈総覧【改訂14版】 厚生労働省労働基準局,平成23年
2 割増賃金請求訴訟の知識と実務 東弁研修センター,平成25年
3 日本年金機構ウェブページ
このコラムは,弁護士箱守英史が書いた報告書を,菊池が短くしたもの

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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