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菊池捷男

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菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

コラム

解釈論と政策論➁ その違い

民法雑学

2015年10月1日 / 2015年10月2日更新

昨日のコラムの続きです。
1 判例の趣旨
 最高裁判所平成12年3月14日判決は,
民法772条の「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」
という規定の適用について,
① 妻がその子を懐胎したと思える時期に,夫とは事実上の離婚をしていて夫婦の実態が失われている場合には,妻が産んだ子が夫の子であるとの推定は受けない。すなわち,事実上離婚して夫婦の実体を失っている男女は,戸籍の上で夫婦であっても,民放772条でいう「婚姻中」には当たらない,
また,
➁ 妻と夫が,互いに遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合も,妻が産んだ子が,夫の子であるとの推定は受けない。すなわち,このような男女の場合は,「婚姻中」には該当しない,
したがって,①及び➁のケースでは,夫は子に対し,いつでも,出訴期間の制限を受けない親子関係不存在確認訴訟を起こし,子を自分の戸籍から抹消することができる,と判示し,

そして,最高裁判所平成26年7月17日判決は,これを当然の前提にしながらも,
③ ①や➁のような関係が認められない夫婦間にあって妻が懐胎した子は,「妻が婚姻中に懐胎した子」であることは否定できず,たとえDNA検査によって夫の子でないことが科学的に証明でき,かつ,その子が真の父と実母と一緒に暮らし,真の父を「お父さん」と呼んでいる生活をしていても,その子は戸籍上の夫の子であることの推定を受けるので,出訴期間の制限を受け,父が子の出生を知った後1年を経過すると,嫡出否認訴訟は起こせないのでその子を戸籍から抹消する方法はない。
との趣旨を判示しました。

2 科学的に親子関係が否定される場合でも,子であることを否定できない理由
最高裁判所平成26年7月17日判決での櫻井龍子裁判官の補足意見は,
① 嫡出否認制度の趣旨は,生物学上の親子関係がない子を嫡出子として認めるわけにはいかないからであるが,
➁ 嫡出否認の訴訟に1年間という出訴制限を定めた法の趣旨は,
a)公の秩序,
b)妻の利益,
c)子の福祉
などを考慮したものであるから,
ただ,父と子の間に生物学的親子関係が否定されるというだけは,親子関係を否定することはできない。
DNA検査などで,生物的親子関係が否定された場合も,出訴制限を受けず,親子関係不存在確認訴訟を起こしうるかどうかは,立法政策の問題であり,民法772条の解釈論で結論を導き出すことはできない。
というものです。

3 政策論は,相反する考えがありうる。その一方の政策論を解釈論とすることは不可能
政策論には,必ず,相対立する見解があります。
法律上の夫婦の間で,日常,性的な関係が結ばれている中,妻が夫以外の男性と性交渉を結び,その男性の子を出生した。その子が物心のついた頃,夫は,DNA検査その他の方法で,その子が自分の子でないことを知った。その場合に,出訴制限のない親子関係不存在確認訴訟を起こし,その子を父の戸籍から抹消できることにすると,その子を大きく傷つけてしまうでしょう。
その場合,それでもしかたがないという考えもあれば,そのような訴訟は許すべきではないという考えの人もいると思われます。
そのいずれを正義と考えるかについては,相対立する考えがありうるわけですので,前者の考えを民法772条の考えであるとすると,後者の考えは全面的に否定されることになります。
政策論とは,複数の相対立する考えが併存する考えです。法の解釈に,相対立する政策論の一方の考えを採用することは許されるものではないといえるでしょう。
最高裁判所平成26年7月17日判決は,そのようなことをいう判決だと思われます。

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