コラム
成年後見人からの質問 事前に葬儀費用を被後見人口座から出しておきたい・・・
2015年1月9日
Q 私は,母の成年後見人をしていますが,現在,母はいつ亡くなってもおかしくない状況下にあります。被後見人が亡くなると,私の後見人としての資格もなくなりますが,子として葬儀をしなければなりません。その費用に充てるため,今のうちに,母の銀行預金口座からお金を引き出しておくことはできますか?
A
葬儀費用は,葬儀を主宰する者(喪主)が葬儀の契約の当事者となることから,第一次的には喪主が葬儀費用を負担することになります。被後見人の財産から葬儀費用を支出することについては,推定相続人全員の合意があれば可能であるとされています(片岡ほか「家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務」121頁)。
被後見人が生前から葬儀の準備をしておくことは,被後見人の自己決定権の尊重の見地から認められるべきものとされ,後見人が被後見人の意思を尊重して,葬儀費用の準備のために被後見人の財産から一定の支出をすることは,一般的に被後見人にとって必要性が認められます。したがって,被後見人に葬儀費用の事前準備の意思があったとみられる場合は,可能でしょう。この場合は,被後見人の社会的地位,人間関係や交際範囲等から判断して,社会常識に照らして相当と認められる葬儀費用を事前に引き出すことができるとされています。(同書69頁)。
もっとも,葬儀費用を事前に引き出した場合,預かり金としてその他の金銭とは別に保管しておく必要があります。後見終了後2か月以内に管理の計算が完了すると,相続人への財産引き渡しまでの間,現金については年5分の割合による利息を付さなければならなくなるので(民法870条,873条1項),必要以上の現金を手元に置かない方がよいとされています(寺町東子「成年後見の実務」LIBRA,Vol.10・14頁)。
関連するコラム
- 民法雑学 コピー1枚500円は違法 2013-11-09
- 民法雑学 最高裁の破棄判決例と囲繞地通行権 2015-03-09
- 民法雑学 4 公立病院における診療債権、水道料金債権など自治体債権の消滅時効期間 2013-08-05
- 民法雑学 農協の理事会での理事と監事の発言の差異 2014-08-05
- 継続的契約の一方的な解約は許されるか? 2011-07-26
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。