コラム
遺言執行者⑤ いわゆる「相続させる」遺言における遺言執行者の権利と義務
2015年1月26日 公開 / 2015年2月2日更新
1,問題
実務上非常に多い、いわゆる「相続させる」遺言とは、そも、どういう法的性格を帯びた遺言書であるのか?その遺言書における遺言執行者には、権利(権限)としては、何ができ、何ができないのか?義務としては、何をすべきか?何はしなくともよいのか?
を、問題点として、暫くの間、この問題について連載していくこととします。
2,「相続させる」遺言書の中身
(1)「私は全財産を長男に相続させる。」という遺言
これは、相続分(相続割合の意味)の全部指定の遺言であると同時に、全財産の遺産分割方法の指定(特定の相続人に特定の財産を直接遺産分割の方法として割り当てるという意味)の遺言です。
(2)「私は私の財産の3分の1を長男に相続させる。」という遺言
これは、相続分を指定しただけの遺言です。ここで指定された相続分は指定相続分といい、この遺言があると、ここに書かれた相続人に関しては、法定相続分は適用されません。
(3)「私は、預金の全部を次男に相続させる。」という遺言
これは、遺産の分割の方法を定めた遺言です。
3,重要な判例
(1)最高裁判所平成3年4月19日判決(香川判決。平成3年判例)
いわゆる「相続させる」遺言の法的性格を、統一した先駆的判例です。その後の最高裁判所判決(判例)も、地裁、高裁の裁判例、家裁の審判も、平成3年判例を引用しながら、その判例を敷衍する形で、新たな問題についての判例を構築し、また裁判例・審判例を生み出しております。そのような遺言執行者実務を指導する判例だけに有名な判決で、一つの金字塔といってもよい判決です。そのため,裁判長の名字を冠して香川判決と呼ばれることもあります。
(2)最高裁判所平成7年1月24日判決(平成7年判例)
(3)最高裁判所平成10年2月27日判決(平成10年判例)
(4)最高裁判所平成11年12月16日判決(平成11年判例)
この判例を分析することで,自ずと,この遺言における遺言執行者の権利義務が見えてきます。
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