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相続相談 自社株式の価格③ オーナー社長が持つ自社株の価格

2013年10月13日

テーマ:相続相談

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

これは、当然、被相続人が支配株主であるので、支配株主の有する株式の価格ということになります。 

1 定義
支配株主とは、原則として発行株式数の過半数を有する株主をいいます。議決権制限株式を発行している会社にあっては、発行株式数のうち議決権を有する株式の過半数を有する株主をいいます。
なお、非支配株主とは、支配株主ではない株主をいいます。

2 支配株主が有する株式の価格の算出方法と理由
支配株主は、会社の経営者となり、会社が獲得するキャッシュフローや利益をコントロールでき、自らの役員報酬を自由に決め得る一方、会社に利益があっても配当をしないことで非支配株主に1円の利益も与えないこともでき、場合によっては、会社を解散して残余財産の分配に預かることもできます。
そこで、支配株主の株式の価格は、将来の期待収益から株価を算出する、DCF法を含むインカム・アプローチの収益還元法、あるいは、会社財産に着目する純資産方式、あるいは、この双方の方式を加重平均する併用方法が一般的な方法とされています。
 これに対し、非支配株主は、会社を支配する力は無く、支配株主によって経営に参加させてもらえても、自らの力ではなにもできない、また、配当すら保障されているわけではない、受動的で弱い立場に立ちますので、その有する株式の価格は、配当還元法により算定されるのが適当だとされています。

3 過半数に届かない株式数でも、支配株主の株式の価格で評価される場合
東京高裁平成20.4.4決定は、譲渡制限付き株式につき売主と指定買主間で争いになった株式の価格についてなされた株価の決定事件ですが、発行株式の40%を有する売主から、発行株数の60%を有する買主へ譲渡された株式の価格を決定するのに、40%の株式は、特別決議(会社の解散や定款変更に必要な決議)を拒否できるだけの力があること、本件株式が売主から買主へ移動することで、買主は会社を完全に支配できることになることを理由に、本件株式については経営権の移動に準じて扱うべきで、この場合に用いられる評価方式である純資産方式や収益還元方式を検討すべきである、と判示しています。
買主にとって、経営権に影響のある株式の移動も、支配株主の有する株式価格算定方法が採用された例です。
なお、この高裁決定は、一審の決定ともに、会社がベンチャー企業として成長力が大きいこと、将来の利益も十分に見込めること、純資産方式を採用すると株式の価値を過小に評価してしまうことから、併用することを含めて純資産方式は採用できないとして、収益還元方式によって株価を決定しました。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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