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相続 186 相続人がいない場合

2011年9月20日 公開 / 2016年3月15日更新

テーマ:相続相談

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

 人が財産を残して亡くなったが、相続人がいない場合、その財産はどうなるのでしょうか?
1 相続財産法人の成立
民法951条は「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。」と規定しています。この場合の「法人」を「相続財産法人」といいます。だれが所有者かわからない、所有者はいないのかもしれない、そのような権利の帰属主体が明確でない相続財産を、法は、法人とみなしているのです。

2 相続財産の管理人の選任
民法952条1項は「前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。」と規定しています。
通常は、後述の特別縁故者が、利害関係人として、相続財産の管理人の選任の申立をします。

3 一回目の広告
民法952条2項は、「前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。」と規定していますので、一回目の広告は、家庭裁判所がすることになります。

4 管理人の職務
① 財産目録の作成
管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、相続財産の財産の中から支弁する(民法952条が準用する民法27条)。
② 財産状況の報告
相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない(民法954条)。

5 二回目の広告
 民法957条は、「第一回目の広告の後、二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。」と規定しています。これは相続財産管理人がする広告です。広告の手続は別の規定に定めがあります。

6 三回目の広告
二回目の広告で定めた期間の満了の後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができません(民法958条)。
これは家庭裁判所が、管理人等の請求を受けてする広告です。

7 特別縁故者からの相続財産の分与の請求
民法958条の3第1項は、三回目の広告をした場合において、「相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」と定め、同条2項で「前項の請求は、第958条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。」と定めていますので、特別縁故者は、三回目の広告で定めた期間の満了後三箇月以内に、相続財産の分与の請求が出来ることになります。
なお、この期間は厳守しなければなりません。
最高裁平成17.5.20決定は、民法958条の広告(三回目の広告)期間経過後の財産分与の申立は不適法になるものとしています。

8 特別縁故者とは?
前述のように、特別縁故者は「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」です。
このうち、「その他特別縁故があった者」とは、「上記「被相続人と生計を同じくしていた者」又は「被相続人の療養看護に努めた者」に該当する者に準ずる程度に被相続人との間に具体的かつ現実的な精神的・物質的に密接な交渉のあった者で,相続財産をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に特別の関係があった者と解するのが相当であり,その特別縁故の有無については,被相続人の生前における交際の程度,被相続人が精神的・物質的に庇護恩恵を受けた程度,死後における実質的供養の程度等の具体的実質的な縁故関係のほか,被相続人との自然的血縁関係をも考慮して決すべきものと解される。」とされています(広島高裁平成15.3.28決定)。

9 特別縁故者が複数いる場合
その場合は、具体的、実質的な縁故の濃淡を中心にしてその程度に応じた分与がなされるべきであるとされます。
前記広島高裁平成15.3.28決定は、2人の特別縁故者がいる場合の分与について「被相続人を自宅に同居させて以来約19年間もの長期間,家族の協力を得て被相続人の療養,看護に努めてきた甲の特別縁故は,被相続人の財産管理を中心とした乙の特別縁故に比べるとこれよりは相当濃密なものであり,その程度の割合は,甲が7,乙が3の程度のものと認めるのが相当である。」として全相続財産を7対3の割合で分与しました。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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