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マンション① 言葉の意味

2015年8月12日 公開 / 2015年9月7日更新

テーマ:マンション

コラムカテゴリ:法律関連

 本コラムで,暫くの間,マンション問題を扱いたいと思います。
第1回目は,言葉の定義についてです。
なお,本連載コラムでは,「  」内の用語は,区分所有法に規定された法令用語又は判決書の中の言葉です。また,で,“  ”内の用語は,講額上(学問上)呼称されている用語です。

1 マンションの意味 
 平成12年に制定された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」第2条によれば,「マンション」とは,次のイ又はロをいいます。
イ 区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの並びにその敷地及び附属施
又は
ロ 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内にあるイに掲げる建物を含む数棟の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地及び附属施設

このように,マンションとは,人の居住の用に供する専有部分のある一棟の建物並びにその敷地及び附属施設又はそのような建物が複数ある団地をいいますが,一般の人が,マンションを購入した,などという場合のマンションは,多くの場合,一棟の建物の中の特定の専有部分をいうものと思われます。
 すなわち,区分所有法(以下「法」といいます。)1条は,「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。」
と規定していますが,この法1条でいう,「一棟の建物」の中の,「独立して住居」」として使用される専有部分をいう場合をいうのです。
したがって,法的な意味のマンションの範囲と,一般人がいうマンションの範囲が異なる場合があります。

2 専有部分と共用部分
 一棟の建物のうち「独立して住居・・・としての用途に供することができる・・・各部分」は,「専有部分」といわれ,それ以外の部分は「共用部分」といわれます(法2条の定義規定を参照)。

3 共用部分に“法定共用部分”と“規約共用部分”がある
 一棟の建物のうち,専有部分以外の
「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」(法4条1項)は,
性格上も,所有権の対象になりえず,法が定めた共用部分という意味で“法定共有部分”といわれます。
また,専有部分であっても,区分所有者の団体(通常は,“管理組合”)の規約により,特定の専有部分(多くは,管理室や集会所)を,共用部分と定めることができます。
規約によって共用部分とされた専有部分は,“規約共用部分”といわれます。

4 結局,専有部分とは?
 以上により,専有部分とは,一棟の建物のうち,
①構造上区分された部分であり(構造上の独立性),
➁住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができる部分(利用上の独立性)
であるという2つの要件を備えている部分から,規約共用部分をを除いたものということになります。

5 観念的には分けられても,現実に,専有部分と法定共用部分を分けることには困難を伴う場合あり
共用部分の修理費用は,団体(管理組合)が負担し,専有部分の修理費用は,区分所有者が負担することが原則ですので,特定の場所が,共用分になるか,専有部分になるかは重要な問題になります。
そのような問題の発生に備えて,専有部分の共用部分の境界は,規約で明確にしておく必要があります(標準管理規約7条並びに8条及び別表第2参照)。


参照:区分所有法1条から4条まで
(建物の区分所有)
第1条は,「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。」 (定義)
第2条 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第4条第2項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
2 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
5 この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第5条第1項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。
6 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。

(区分所有者の団体)
第3条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

(共用部分)
第4条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

参照:マンション標準管理規約(単棟型)
(専有部分の範囲)
第7条 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。
2 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
一天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
二玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
三窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。
3 第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。

(共用部分の範囲)
第8条 対象物件のうち共用部分の範囲は、別表第2に掲げるとおりとする。

別表第2 共用部分の範囲
1 玄関ホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、電気室、
機械室、パイプスペース、メーターボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、
内外壁、界壁、床スラブ、基礎部分、バルコニー、ベランダ、屋上テラス、車
庫等専有部分に属さない「建物の部分」
2 エレベーター設備、電気設備、給排水衛生設備、ガス配管設備、火災警報設
備、インターネット通信設備、ケーブルテレビ設備、オートロック設備、宅配
ボックス、避雷設備、塔屋、集合郵便受箱、配線配管(給水管については、本
管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手
及び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」
3 管理事務室、管理用倉庫、集会室及びそれらの附属物

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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