コラム
遺産分割⑩ 遺産収益の分配問題
2015年2月15日
1,遺産から揚がる収益は,全相続人の分割債権であることに注意(誤解の多いところ)
遺産の中にある収益物件(例:賃貸マンション)から揚がる収益(賃料,利息,配当金など)は,遺産でもなければ,遺産分割の結果その収益物件を相続することになった相続人の財産でもありません。
それは全相続人が,指定相続分又は法定相続分に応じた分割債権として取得するものです(最高裁判所平成17年9月8日判決)。
父親が亡くなり,長男が,マンションの管理をし,賃料を受領していても,他の相続人から異議はでなかった。そして,その後の遺産分割で,そのマンションは長男が相続することになったとしても,相続開始後,遺産分割の時までに生じた賃料債権は,他の相続人にも権利があるので,注意が必要なのです。
2,遺産分割の対象にできる場合
遺産から揚がる収益で,相続開始時から遺産分割時までに生じたものは,全相続人が相続分で分割取得します(前述の判例)が,全相続人が合意すれば,これを遺産分割の対象にすることはできます(東京高裁昭和63年1月14日決定)。
その場合の調停条項の書き方(又は遺産分割協議条項)の例を示しておきます。
例:
当事者全員は,相手方の保管する別紙物件目録記載のマンションの平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日までの賃料収入を,本件遺産分割の対象とすることを確認する。
関連するコラム
- 相続相談 41 相続分の譲渡と贈与税 2012-08-21
- 相続税のお話し 7 代償分割に潜む落とし穴 2013-05-22
- 相続と登記 9 遺留分減殺請求と登記 2012-09-08
- 相続相談 相続放棄と未支給年金の取得 2013-09-10
- 遺言執行者④ 相続財産目録調整義務続き➁ 2015-01-25
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。