コラム
遺言執行者⑩判例に書かれた「特段の事情」の意味
2015年1月31日 公開 / 2015年2月2日更新
最高裁二小平成3年4月19日判決は,
遺言書は,遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきものである,と判示した後で,
遺言書において特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言者の意思が表明されている場合の遺言者の意思は、
「遺言書の記載からその趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り,」
遺産の分割の方法を定めた遺言であると解すべきであると判示しています。
また,
最高裁判所第二小法廷平成10年2月27日判決は,
「相続させる」遺言の対象になった不動産の占有、管理は,
「遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り、」
遺言執行者は、当該不動産を管理する義務や、これを相続人に引き渡す義務を負わない,と判示しています。
ここで,「遺言書の記載からその趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り」という表現と
「遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り」という言葉が使われていますが,
「特段の事情」とは,
判例の解釈(平成3年判例の場合は「相続させる」遺言は遺産の分割の方法を定めた遺言であるとの解釈,平成10年の判例の場合は,「相続させる」遺言の遺言執行者には「相続させる」遺言の対象になった不動産の管理や受遺相続人への引渡義務はないとの解釈)に反するものが,遺言書に書かれていることをいいます。
要は,遺産の分割の方法を定めた遺言である場合は,遺言執行者のなすべきことはありません(平成11年判例のような遺言の実現が妨害される事態が生じた場合は別ですが。)。
また,その場合は,遺言執行者は対象財産の管理や相続人への引渡義務を負いません。
それが判例の解釈なのですが,遺言者の意思がそのような場合でも遺言執行者の関与を求めている場合(これが「特段の事情」の意味です。)は,遺言執行者が関与できるように解釈するという意味です。
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