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原状回復と,明渡との関係

2014年7月1日 公開 / 2017年9月8日更新

テーマ:不動産法(賃貸借編)

コラムカテゴリ:法律関連

Q 私は店舗の賃借人でした。
 本年3月末に賃貸借の期間が満了したので,同日賃貸人に建物を明け渡し鍵も返しました。
しかし,私は,賃貸借契約書で約束していた原状回復を十分にはしませんでした。
賃貸人は,原状回復を完全にするまでは建物を明け渡したことにならないという理由で,その本年4月1日から原状回復工事を完了する日までの賃料(相当損害金)の請求をすると言ってきました。
私は,原状回復工事に必要な費用は当然支払うつもりですが,賃料相当損害金まで支払う義務はあるのですか?

A ありません。
東京地裁平成18年12月28日判決(判例秘書06135386)は,「一般に,賃貸借契約における賃借人の目的物返還義務としての不動産の明渡しとは,当該不動産の占有者が立ち退くとともに,不動産内にあった動産を取り除いて賃貸人に直接的な支配を移すことであると解される」とされ,明渡し時点で,天井ないし床に固定されたパーテーションや壁ないし床に固定された書棚が残置していたとしても,「本件不動産から退去し,内部にあった動産を取り除き,原告に本件不動産の鍵を返還したと認められるから,同日をもって本件不動産を明け渡したと認めるのが相当である」と判示しているところです。
さらに,東京地裁平成21年1月16日判決(LEX/DB25462680)は,「一般に,建物賃貸借契約において,当該契約終了に基づく建物返還後,少なくとも通常想定しうる範囲の原状回復工事に必要な相当期間については,特段の合意のない限り,賃借人に賃料等を負担させないものとするのが通例である」と判示しているところです。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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