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立退料の提示額が,裁判所の考える金額より少なかった場合は,提示額が無効になるのか?

2014年4月17日 公開 / 2017年9月8日更新

テーマ:不動産法(賃貸借編)

コラムカテゴリ:法律関連

Q 新耐震基準を満たしていない古い賃貸ビルを建て替えて,ビル賃貸業を続けたいと思っていますが,そのためには全テナントに対し,立退料を提示して,賃貸借契約の解約を申し入れる必要がありますが,①その場合に提示した立退料が,裁判所の考える金額より少なかった場合は,立退料の提示は無効になるのですか?また,➁適正な立退料を支払えば,解約が認められるのですか?

A
1,①について
最高裁判所昭和46年11月25日判決は,立退料の支払については,特に賃貸人が賃貸人の提示した金額しか支払わないという意思でない限り、賃貸人は,立退料の金額については,一定の範囲内で裁判所にその決定を任せていると考えられるとして、賃貸人が提示した金額を超える,裁判所が相当であると考える立退料を,賃貸人が賃借人に支払うことと引き換えに,建物を明渡すよう判決をなしうると判示しました。
したがって,賃貸人の提示する立退料の金額が,裁判所が考える金額より少ない場合でも,立退料の提示が無効になるものではありません。心配ならば,「裁判所の鑑定による立退料を支払う。」という程度の表現をしておれば大丈夫です。

2,➁について
新耐震基準より前の構造基準に基づく建物を対象にした賃貸借契約については,東京地方裁判所平成24年5月28日判決が「新耐震基準より前の構造基準に基づく建物であり,既存不適格である。」とか「阪神・淡路大震災においても新耐震基準より前の構造基準に基づく建物に被害が集中しており,本件建物も耐震対策を必要とする。」という言い方をしているところですので,すでに複数の裁判例もあり,適正な立退料の支払をすれば,解約することが容易になっていると思われます。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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