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交通事故 14 逸失利益⑤ 症状固定日

2012年5月28日 公開 / 2012年8月15日更新

テーマ:交通事故

コラムカテゴリ:法律関連

1 症状固定の意味
症状固定とは、「相当の治療期間を経て、これ以上治療をしても治療効果が認められない段階になった時」である。

2 裁判例に見られる症状固定の時期
(年齢は症状固定時)
・48歳女性、右手小指のRSD等14級。症状固定まで521日間(京都地判平16.3.24)
・25歳女性。左下肢の痛み14級。159日間(大阪高判平21.9.10)
・33歳男性。右足関節運動障害12級。20ヶ月間(名古地判平22.3.17)
・28歳女性。左足関節の可動域制限12級。390日間(東京地判平15.12.8)
・58歳女性。併合11級。603日間(名古地判平21.11.25)
・29歳男性。右膝関節の動揺性等併合9級。7年1ヶ月間(神戸地判平21.7.27)
・25歳女性。外傷性神経賞等併合8級。767日間(仙台地判平20.6.27)
・48歳女性。併合7級。556日間(東京地判平13.9.5)
・61歳女性。併合6級。316日間
・32歳男性、一下肢を膝関節以上で失ったもの4級。2294日間(神戸地判平17.11.1)
・80歳男性、外傷性くも膜下出血等1級。492日間(名古屋地判平17.8.26)
以上により、後遺症の症状固定時が、まちまちであることが分かる。
後遺症の症状固定日は、実務では、担当の医師の判断が尊重されること、被害者の症状がさまざまであること、医師による症状固定のとらえ方の違いがあることによるものと思われる。

3 症状固定時が変わると、損害賠償額は大きく変わる
後遺症があって、休業している場合、後遺症固定時までは、休業損害金が全額損害になり、症状固定時から以後は原則として67歳まで逸失利益が損害になるのが原則。
この場合、症状固定時期によって、損害額は大きく変わる。
⑴ 例:症状固定時まで1年の場合
例えば、事故時満40歳。後遺症7級、年収が600万円の被害者がいるとする。そして、症状固定時が事故の1年後とすると、
休業損害金は、600万円×1年分=600万円
逸失利益は600万円×0.56×14.3752(41歳から67歳までのライプニッツ係数)=4830万0672円
合計5430万0672円
⑵ 例⑴の症状固定が事故の2年後とすると、
休業損害金は、600万円×2年分=1200万円
逸失利益は600万円×0.56×14.0939(42歳から67歳までのライプニッツ係数)=4735万5504円
合計5935万5504円
結局のところ、症状固定時が1年遅れると、総損害額は505万4832円増えることになる。

ここから、被害者から見れば、十分な治療期間をとってもらい、これ以上、治療をしても治療効果がない段階を慎重に、つまりは遅めに、決めてもらうべきという考えが必要になるが、加害者から見れば、症状が固定していて、治療をしても効果がないのに、なお治療を続けているとの疑いを持ちやすくなる、と言いうる。
裁判では、むち打ち症に関して、相当かつ必要な治療期間はいつまでか?症状固定日はいつと考えるか?で争いになることが多い(別項で詳説)。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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