コラム
相続 160 特定の推定相続人に対し何も相続させたくないときの遺言事項
2011年4月28日
1 直接的な文言では、遺言は無効
特定の推定相続人Aに対しては、何も相続させたくないと考え、
「遺言者は相続人Aには何も相続させないこととする」
と遺言を書いた場合、その遺言は無効になります。
そのような遺言を有効とする根拠がないからです。
2 相続人廃除の意思表示をする遺言は可能だが、廃除理由がないと無効
相続させたくない理由が、民法892条でいう「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」に該当すると思えるときは、その具体的な内容を遺言書に書き、また、遺言執行者を指定するのが良いでしょう。この場合は、相続開始後、遺言執行者が、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求してくれることになります。
「遺言文例」
第○条 長男太郎は、お金の無心を繰り返し、遺言者がお金を渡さないときは、遺言者をしばしば侮辱し、遺言者が病気で寝ているときに足蹴にして暴行を加えるなど虐待を続けているので、長男を相続人から廃除する。
第○条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
3 何も相続させたくない推定相続人に相続人廃除の理由がないとき、あるいは廃除理由が弱いと思えるとき
この場合は、予備的に、その相続人の遺留分を侵害しない範囲で、遺産分割方法の指定により特定の財産を相続させるようにしなければなりません。
遺留分を侵害しない範囲の相続分の指定ですますと、他の相続人と遺産分割協議をしなければならないことになり、紛争を生じさせるリスクがあります。
4 遺言文例
第○条 第○条による相続人廃除が家庭裁判所で認められない場合は、遺言者は、下記の財産を長男に相続させる。
この財産は、遺言者の全財産のほぼ1/8の価値を占め、長男の遺留分を侵害するものではないと考えるので、長男には不満であっても、第○条に書いたような事情も考慮し、納得して欲しい。
5 財産の選び方
何も相続させたくない相続人へ、やむを得ず、一定の価値ある財産を相続させるのですから、他の相続人にとって重要度の少ない財産、換金性の乏しい財産から順に選んでいくことになると思われます。
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