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相続 85 葬式費用

2010年12月31日

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き



1 葬式費用の負担者
⑴ 相続財産の中から、相続財産に関する費用に準じて支弁すべし、との見解
民法855条は「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。」と定めていますので、葬式費用が相続財産に関するものなら、その中から支弁すべきことになりますが、葬式を相続財産に関するものということには無理があります。ただ、この規定を類推して、葬式費用も相続財産から負担させるべきと考える見解があります(甲府地裁昭和31.5.29判決)。

⑵ 全相続人が、法定相続分又は指定相続分の割合で負担するとの見解
この見解による審判例としては、大阪家裁昭和51.11.25審判外多数あります。

⑶ 香典で賄い、不足が生ずれば相続財産の中から支弁し、それでも不足があれば全相続人が法定相続分又は指定相続分の割合で負担すべしとの見解
これが通説的な見解と言えます。

2 身分不相応の葬式をした場合の負担者
葬式費用の負担者は誰か?という問題には直接関係しませんが、民法309条1項に「葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額について存在する。」との規定があります。また同条2項には「前項の先取特権は、債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額についても存在する。」との規定もあります。ですから、「葬式費用のうち相当な額」は、特に法が保護するところ厚いものがあるのですが、逆に言えば、それを超える額、つまりは身分不相応の葬式をしたときの相当額を超える金額は、保護されないものと言えます。
ここから、その超過費用は、葬式の主宰者である喪主が負担すべしと言う結論になるのです。この結論は異論を見ません。

3 香典とは何か?
⑴ 香典の意味
 香典とは、死者の供養、遺族の悲しみへの弔意の意味を込めた贈与財産とされています。
⑵ 受贈者は誰か?
 ア 喪主が受贈者、との見解が一般的
父が死亡し、長男が喪主となって、二男の友人が二男に香典を託した場合でも、その香典は、長男である喪主に贈与されたものとされるのです。
 イ 例外
一般的な金額に比べて多額の香典がなされた場合、それは香典をした贈与者の意思によっては、被相続人によって扶養されていた未亡人や幼児への生活や教育を支援する趣旨の贈与の場合もあれば、交通事故の加害者が被害者の相続人へ損害賠償額の一部あるいはそれに加算したものとして支弁する場合もありますので、そのような多額の香典については、贈与者の意思を推測して、その意思に従った扱いをすべきことになります。

⑶ 香典の使い道
香典は、死者の供養、遺族の悲しみへの弔意の意味を込めた贈与財産ですから、ここから、香典は、まずは葬式費用に充てるべし、という1⑶の見解につながるのです。

⑷ 香典の余りが出た場合
香典を葬式費用に充当したが、余ったという場合、それは⑵イのような例外の場合なら、贈与者の意思にしたがった分け方をしなければならず、そうでない場合は、喪主が自分の裁量で、今後の祭祀費用に充てる、寄付その他の方法で社会に還元する、遺族間で分ける、喪主がそのまま取得しておく、等のことが許されることになります。

4 弔慰金
これは葬式費用とは関係しませんが、被相続人の死後、勤務先などから支払われる場合のある金銭です。
この法的性格は、香典と同じく、勤務先などから支払われる贈与金です。これは恩恵的なものとされますので、相続人には、それを請求する権利はなく(就業規則や勤務規定で明確な約束をしている場合は例外)、支払は専ら支払う側の裁量に委ねられています。勤務先に「弔慰金は遺族に支払う」という規定がある場合も、ぞの遺族の意味や範囲は支払う側で決めてよく、相続人ではない内縁の妻に支払われる場合もあります。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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