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民法雑学 マンションの上の階から下の階への水漏れ

2014年6月10日 公開 / 2016年3月15日更新

テーマ:不動産

コラムカテゴリ:法律関連

Q 私が住んでいるマンション101号室の天井から水漏れがあって、天井や壁、らんま、家財道具をぬらす事故が起きましたが、原因が分かりません。しかし、水漏れの場所は、101号室の天井の上のスラブといわれる躯体部分の下に敷設された,上の階201号室の排水管と推定されています。この場合、101号室の被害の責任者は、201号室の所有者でしょうか、管理組合でしょうか?

A 
1,マンションの法的な位置
 マンションとは、一棟の建物の中に、住居、店舗、事務所などが、構造上他の部分からは独立して存在している場合の、一棟の建物をいう場合もあれば、一棟の建物の中の個々の独立した部分(これを「専有部分」といいます。)をいう場合があります。
 ここでは、区分所有法でいうように、一棟の建物を一棟の建物といい、個々の独立した部分を専有部分というようにします。
 一棟の建物には、専有部分のほかに、廊下、エレベーター、階段などの、専有部分の所有者が共同で使う部分(これを「共用部分」といいます。)がありますが、102号室の専有部分から水が漏れて階下の101号室の専有部分に被害を与えた場合は、102号室の区分所有者が責任を負うことになります。

2,躯体部分であるコンクリートスラブの下にある枝管からの漏水は?
 一棟の建物としてのマンションには,下の階の天井と上の階の床の間に,躯体部分であるコンクリートスラブが設置されていますが,そのスラブの下にある枝管から下水が流れ出,その下の階の専有部分に被害を与えた場合,その責任は誰が負うかについては判例があります。
 すなわち,最判平成12年3月21日は
「①本件建物の707号室の台所、洗面所、風呂、便所から出る汚水については、同室の床下にあるいわゆる躯体部分であるコンクリートスラブを貫通してその階下にある607号室の天井裏に配された枝管を通じて、共用部分である本管(縦管)に流される構造となっているところ、本件排水管は、右枝管のうち、右コンクリートスラブと607号室の天井板との間の空間に配された部分である。
➁本件排水管には、本管に合流する直前で708号室の便所から出る汚水を流す枝管が接続されており、708号室及び708号室以外の部屋からの汚水は流れ込んでいない。
③本件排水管は、右コンクリートスラブの下にあるため、707号室及び708号室から本件排水管の点検、修理を行うことは不可能であり、607号室からその天井板の裏に入ってこれを実施するほか方法はない。
④右事実関係の下においては、本件排水管は、その構造及び設置場所に照らし、建物の区分所有等に関する法2条4項にいう専有部分に属しない建物の附属物に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分に当たると解するのが相当である。」と判示しているのです。
 したがって,この場合の責任者は,管理組合になります。

3,原因不明の場合
 水漏れの原因が不明で、その場所も特定できない場合は、建物区分所有法9条が「建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵かしは、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」と規定していますので、共用部分の所有者つまりは全区分所有者が費用を出し合って作っている管理組合の責任になります。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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