自分で出来る膝痛の治し方(膝のお皿編)
こんにちは、GENRYUです(^^)
この記事の要点
・膝が気になる方に向けて、自分の「歩き方」を確かめる3つのチェックを紹介します。
・スマートフォンの動画で見る、5mの速さを測る、条件を一つだけ変えて歩く、の3つです。
・体を少し傾けて歩くのは、「悪い歩き方」とは限りません。膝を守るための、身体の工夫であることもあります。
・足首・足裏・股関節で見えたことが、歩くときにどう現れているかをつなげて読みます。まずは廊下で10歩、3分でできる方法から始められます。
・歩き方を変えると膝への負担の指標が変わるという研究はありますが、痛みが長く楽になるかはまだ分かっていません。
前回のコラムでは、膝の上にある股関節の動きを、3つのチェックで確かめました。
これで、膝の下(足首・足裏)と、膝の上(股関節)がそろいました。
今回は、シリーズでお伝えしてきた「見る順番」の最後、
歩き方
です。
止まった状態や、その場での動きで見えたことが、実際に歩いているときにどう現れているのか。
それを確かめるのが、今回の目的です。
前回までのコラムをまだお読みでない方は、こちらからどうぞ。
→「膝が気になる人へ|足首と足裏を自分で確かめる3つのチェック」を読む
→前回「膝が痛いのに、なぜ股関節を見るの?」を読む
始める前に:安全のための約束
こんなときは、チェックをせずに医療機関へ
- 膝や足の付け根に体重をかけられないほど痛い
- 膝が急に腫れた、熱を持っている、発熱がある
- 膝が引っかかって伸びない・曲がらない、ガクッと崩れる
- 転んだりぶつけたりした後から痛い
- 夜、じっとしていても強く痛む
- 片方のふくらはぎや脚が急に腫れて痛む・熱っぽい(血栓の可能性があるので、その日のうちに受診を)
- 急につま先が上がりにくい、つまずきやすい、脚に力が入らない・しびれる
- 10代前後のお子さんが、膝や太ももの痛みで足を引きずっている
息苦しさや胸の痛みを伴う場合は、迷わず119番に連絡してください。
チェック中の約束
- 滑りにくい床で、つまずく物のない場所で行う
- ふらつきが心配な方は、家族にそばにいてもらう
- 痛みがはっきり強くなったら、その場でやめる
- すでに病院やリハビリで指示を受けている方は、その指示を優先する
今回も4つのルールで
- 「見えたこと」と「原因」を分けて書く
- 条件も一緒に書く(靴か裸足か、場所、朝か夜か)
- 変えるなら一つだけ
- 結果は「楽になった・同じ・悪くなった・分からない」のどれかで残す
歩き方のチェックでは、特に「条件」が大切です。
同じ人でも、靴、床、疲れ具合、急いでいるかどうかで、歩き方は大きく変わるからです。
まずは今日、3分だけ:廊下で10歩
動画や5mの計測は、余裕がある日だけで大丈夫です。
1. 普段どおり10歩ほど歩き、膝の気になり度を0〜10でメモします(0=まったく気にならない、10=とても気になる)
2. 歩幅をいつもより少しだけ小さくして、10歩歩き、0〜10でメモします
3. 普段どおりに戻して10歩歩き、もう一度0〜10でメモします
→ 変えたときだけ数字が下がり、戻すとまた上がるなら、歩幅が関係しているかもしれません。数字が変わらなくても、それが今日の大切な記録です。
なぜ、最後に「歩き方」を見るの?
歩くことは、私たちが一日の中で最も多く繰り返す動作の一つです。
そして歩くときには、
- 足首がすねを前に運び
- 足裏が地面の情報を受け取り
- 股関節が骨盤と太ももを支え
- 膝がその間で体重を受け止める
という、これまで見てきたすべての要素が、同時に、しかも素早く使われています。
だからこそ、これまでのチェックで見えた特徴が、歩き方にも現れているかを確かめることに意味があります。
研究で分かっていることを、「関連」と「原因」に分けて整理してみます。
関連として分かっていること
- 内側型の変形性膝関節症の方では、歩くときに膝が外側へ揺れる動き(ラテラルスラスト)がある膝は、18か月の間に膝の内側の状態が進んでいる割合が高かった(Chang 2004)
- 内側型の変形性膝関節症の方120名を調べた研究では、歩くときの体の横への傾きや足先の向きが、膝の内側への負担の指標のばらつきの一部と関係していた(Hunt 2008)
- 歩く速さは、高齢の方の健康状態や将来の生活機能と関係する指標として、多くの研究で使われている(Middleton 2015)
ただし、これらは「関連」です。
例えば、体を立っている脚の方へ傾ける歩き方は、膝の内側への負担の指標を下げる方向に働くことが分かっています。
つまり、「傾いて歩く=悪い歩き方」ではなく、膝を守るための身体の工夫である可能性もあるのです。
歩き方を変える研究で分かっていること
足先の向きや体の傾きを変えて歩く練習の研究をまとめた報告では、練習の直後に、膝の内側への負担の指標が下がる方法がいくつか見つかっています(Silva 2022)。
ただし、
- 根拠の確かさは「非常に低い〜低い」と評価されている
- 数週間以上続けた研究はまだ少ない
- 足先を内に向けると負担の指標の一部は下がるが、別の場面の指標は上がる、など一長一短がある
ことも報告されています。
さらに、これらの研究で測っているのは「膝の負担の指標」で、痛みそのものではありません。
「この歩き方が正解」と一つに決めて、自己流で歩き方を変え続けるのはおすすめしません。
今回のチェックは、歩き方を「直す」ためではなく、自分の歩き方を知り、条件を一つ変えたら何が変わるかを確かめるためのものです。
脳から見た「歩く」ということ
歩き方は、膝や股関節だけで決まっているわけではありません。
歩く動きを組み立て、調整しているのは脳と神経です。
脳の研究から、歩き方と膝の痛みを考えるうえで役立つことを、3つ紹介します。
1. 歩くときも、脳は「注意」を使っている
歩くことは、何も考えずにできる「自動運転」のように感じますよね。
ところが、歩きながら計算などの考え事をしてもらう研究をまとめた報告では、考え事をしながら歩くと、歩く速さが落ちることが示されています(Al-Yahya 2011)。
つまり、歩くことにも、脳の「注意」の力が使われているということです。
だからこそ、チェックをするときは、おしゃべりやスマホを見ながらではなく、歩くことだけに集中して行ってください。条件がそろい、記録を比べやすくなります。
2. 脳の中の「膝の地図」は、ぼやけることがある
脳の中には、体のどこに何があり、どう動いているかを表す「地図」のようなものがあります。
膝の痛みが続いている方では、この地図が変化していることを示す研究があります。
- 痛みのある変形性膝関節症の方20名では、膝の皮膚で「2点を2点として感じ分ける力」が、痛みのない方より低下していた。脳の感覚の地図で、膝の部分がぼやけている可能性が考えられている(Stanton 2013)
- 日本の研究グループが変形性膝関節症の方65名を調べた研究では、自分の膝の感じ方の変化(体の感じ方のずれ)が大きい方ほど、動くときの痛み、生活の困りごと、動くことへの怖さが強い傾向があった(Nishigami 2017)
- 変形性膝関節症の方は、膝の位置を感じ取る感覚(固有感覚)が低下している割合が高いことが、研究のまとめで示されている(van Tunen 2018)
ただし、これらも「関連」です。
Stanton 2013では、感じ分ける力の低下と痛みの強さには、はっきりした関係は見られませんでした。「地図がぼやけたから痛い」と決まったわけではありません。
3. 痛みは、脳が出す「守って」のサイン
前回の股関節のコラムでお伝えしたように、痛みは「体が壊れている量」をそのまま表すものではなく、脳が「この部分を守る必要がある」と判断したときに出すサインと考えられています(Moseley & Butler 2015)。
そして、目から入る情報も、この判断に影響します。
膝の痛みがある方を対象にした小さな研究では、映像の工夫で「膝の見え方」を変えながら膝に触れると、膝の痛みが平均で約25%軽くなりました(Stanton 2018)。
これは特別な装置を使った実験で、すぐ家でまねできるものではありません。
それでも、「見ること」と「感じること」が、脳の中でつながっていることを教えてくれます。
動画で自分の歩き方を見ることや、足裏の感覚に注意を向けることは、脳に新しい情報を届けることでもあるのです。
チェック1 動画で、自分の歩き方を見る
なぜ動画なのか
歩いている自分の姿は、自分では見えません。
鏡の前を歩いても、見ようとした瞬間に歩き方が変わってしまいます。
スマートフォンの動画なら、普段に近い歩き方を、あとからゆっくり見返すことができます。
やり方
1. 廊下など、まっすぐ5m以上歩ける場所を選びます
2. スマートフォンを台の上に固定するか、家族に持ってもらいます(腰の高さくらい)
3. 正面から:カメラに向かって、普段の速さで歩きます
4. 横から:カメラの前を横切るように、普段の速さで歩きます
5. それぞれ2〜3回撮ります
歩き始めと止まる直前は歩き方が変わりやすいので、真ん中あたりの数歩を見るのがコツです。
動画アプリのスロー再生や一時停止を使うと、見やすくなります。
見るポイント(正面から)
- 足を着いた瞬間、膝が内側や外側へ揺れていないか
- 片脚で体重を支えているとき、反対側の骨盤が下がっていないか
- 体が、支えている脚の方へ大きく傾いていないか
- 足先の向きは左右で同じか(外向き・内向き)
見るポイント(横から)
- かかとから着いているか、足裏全体やつま先から着いているか
- 後ろの足で、地面を押して離れているか
- 膝は、着地のときに少し曲がり、そのあと伸びているか
- 左右で、歩幅に違いはあるか
動画を見るときのコツ
動画を見返すときは、次の3つを意識すると見やすくなります。
- 一度に一つの場所だけを見る(1回目は膝だけ、2回目は骨盤だけ、のように)
- 右脚と左脚を、同じ場面で比べる(右の着地と、左の着地を見比べる)
- 見えたことだけを書く(「右膝が着地で外へ揺れる」まで。「だから右膝が悪い」とは書かない)
当院で歩き方の動画を一緒に見ると、まず「自分が歩いていると思っていたイメージ」と「実際の歩き方」の違いに驚かれることが多いです。
このずれは、上で紹介した「脳の中の膝の地図」とも関係しているかもしれません。
だからこそ、思い込みではなく、動画で事実を確かめることに意味があります。
でも、それは「悪い歩き方」が見つかったのではなく、自分の身体がしている工夫に気づけたということです。
膝が気になるのは、どの瞬間?
歩くときの一歩は、大きく3つの場面に分けられます。
- 着地:かかとが床に着き、体重を受け止め始める瞬間
- 支え:片脚で体重を支え、体が脚の上を通り過ぎていく間
- 蹴り出し:かかとが浮き、つま先で地面を押して脚が離れる瞬間
膝が気になるのがどの場面かを書いておくと、これまでのチェックとつなげやすくなります。
例えば、「着地」で気になるなら、足裏の感じ方や足の着き方。
「支え」で気になるなら、股関節の片脚立ちの結果。
「蹴り出し」で気になるなら、足首の前に倒れる動き。
もちろん、これは「次に見る場所」のヒントで、原因を決めるものではありません。
結果の読み方
着地のときに膝が外側へ揺れる
→ 前々回お伝えした「ラテラルスラスト」に近い動きかもしれません。中高年の方で、この動きがはっきり見え、膝の内側が痛む場合は、一度整形外科で膝の状態を確かめてもらうのも一つです。
片側で骨盤が下がる・体が大きく傾く
→ 前回の股関節チェック2(片脚立ち)と同じ側に特徴が出ていないか比べてみましょう。
片側だけ足先が外を向く・かかとが早く浮く
→ 足首のチェック(ニー・トゥ・ウォール)と同じ側か比べてみましょう。
片側だけ歩幅が小さい
→ その側の脚で体重を支える時間を、短くしているのかもしれません。痛みを避けるための自然な工夫であることも多いです。
チェック2 5mを歩く速さを測る
なぜ速さを測るのか
歩く速さは、見た目よりも多くのことを教えてくれます。
膝が気になる方の中には、自分では気づかないうちに、ゆっくり歩くようになっている方もいます。
速さを数字で残しておくと、日による違いや、変化の流れが分かりやすくなります。
やり方
1. 床に、テープなどで「スタート」と、そこから5m先に「ゴール」の印をつけます
2. スタートの2mほど手前から歩き始めます(助走をつけるため)
3. 普段の速さで歩き、スタートの線を越えてからゴールの線を越えるまでの時間を、家族にストップウォッチで測ってもらいます
4. ゴールを越えても2mほど歩き続けてから止まります
5. 2回測って、平均を記録します
一人で行う場合は、スマートフォンで動画を撮り、あとで時間を確かめる方法もあります。
計算のしかた
歩く速さ(m/秒)= 5(m)÷ かかった時間(秒)
例えば、
- 5mに4秒 → 5÷4=1.25m/秒
- 5mに5秒 → 5÷5=1.0m/秒
- 5mに6秒 → 5÷6=約0.83m/秒
となります。
数字の受け止め方
アジアの高齢者の筋肉の衰え(サルコペニア)の基準では、6mを普段の速さで歩いて1.0m/秒未満を、体の働きが低下している目安の一つとしています(AWGS 2019)。
ただし、これは高齢の方の筋肉の衰えを見つけるための基準で、測る距離も今回の5mとは違います。
膝が気になる方の「正常・異常」を決める数字ではありません。
大切なのは、他の人と比べることより、自分の数字を記録し、日や条件による変化を見ることです。
もう一歩:歩数も数える
余裕があれば、5mを何歩で歩いたかも数えてみてください。
速さが同じでも、歩数が多い(歩幅が小さい)か少ない(歩幅が大きい)かで、歩き方は違います。
チェック3 条件を一つだけ変えて歩く
なぜ条件を変えるのか
チェック1・2で、自分の歩き方の特徴が見えてきました。
チェック3では、条件を一つだけ変えたら、膝の感じ方や歩き方がどう変わるかを確かめます。
これはシリーズを通してお伝えしてきた、
評価 → 条件を一つ変える → もう一度評価
の、歩き方バージョンです。
やり方
次のうち、どれか一つだけを選びます。
変化A 足先の向きを、いつもより少しだけそろえる
チェック1で、片側だけ足先が外を向いていた方向けです。ほんの少しで十分です。大きく変えると、別の場所に負担がかかることがあります。
変化B 歩幅を、いつもより少しだけ小さくする
着地のときに膝が揺れる、膝が気になるという方向けです。
変化C 前回の股関節チェックで「楽になった」ことを、一つだけ取り入れる
例えば、足裏の3つの点を感じてから歩き出す、などです。
選んだら、
1. まず普段どおり5mを歩き、膝の感じ方を確かめます
2. 次に、選んだ一つだけを変えて5mを歩きます
3. もう一度、普段どおりに戻して歩きます
4. 3回の歩き方で、膝の感じ方、速さ、動画の見え方を比べます
最後に「普段どおり」に戻して歩くのがポイントです。
変えたときだけ楽で、戻すとまた気になるなら、その条件が関係している可能性が高まります。
注意してほしいこと
その場で楽になっても、すぐに「これからずっとこの歩き方で」と決める必要はありません。
歩き方を長く変えることの効果は、研究でもまだはっきりしていないからです。
何度か同じ結果が出るか、記録で確かめてみてください。
余裕がある方へ:坂道や階段で確かめる
平らな廊下で変化が見えた方は、普段の生活で気になる坂道や階段でも、同じ条件で確かめることができます。
ただし、階段では必ず手すりを持ち、坂道は人や車の少ない、慣れた場所で行ってください。
上りと下りでは、膝の使われ方が大きく違います。
特に下りでは、膝を曲げながら体重を受け止める場面が増えるため、平らな道では気にならない方でも膝が気になりやすくなります。
「平らな道・上り・下りのどれで気になるか」を書いておくだけでも、大切な手がかりになります。
9つの記録をつなげて読む
シリーズを通して、足首・足裏・立ち上がり・股関節・歩き方と、合わせて9つのチェックを紹介してきました。
これらをつなげると、自分の身体の「傾向」がより見えやすくなります。
例1 足首から歩き方までつながるタイプ
- 足首:右が前に出にくく、かかとが浮きやすい
- 立ち上がり:右のかかとが浮く
- 歩き方:右の足先が外を向き、右の歩幅が小さい
- 変化A(足先を少しそろえる)で、右膝が少し楽
この場合、「右の足首の動きが、右膝の歩き方に関係しているかもしれない」という仮説が、より強まります。
例2 股関節から歩き方までつながるタイプ
- 股関節:右脚の片脚立ちで、左の骨盤が下がる
- 歩き方:右脚で支えるとき、体が右へ大きく傾く
- 変化を加えても、膝の感じ方は同じ
この場合、体を傾けるのは、右の股関節の働きを補う「工夫」なのかもしれません。
変化を加えても同じだったことも、大切な情報です。
例3 歩き方だけに特徴が出るタイプ
その場でのチェックでは左右差がないのに、歩き方では片側の歩幅が小さい。
この場合は、止まった状態では見えない「歩くときの使い方」に特徴があるのかもしれません。
痛みへの不安から、無意識に片側をかばっていることもあります。
どの場合も、これらは「原因の断定」ではなく、次に何を確かめるかの「仮説」です。
1週間の記録から見えること
例えば、こんな記録が集まったとします。
月曜・朝:5mに5.2秒(約0.96m/秒)。右の歩幅が小さい。右膝が少し気になる。
水曜・夜:5mに4.6秒(約1.09m/秒)。右の歩幅はやや小さい。右膝は気にならない。
金曜・朝:5mに5.0秒(1.0m/秒)。歩幅を小さくすると右膝が少し楽。
日曜・夜:5mに4.7秒(約1.06m/秒)。右の歩幅はやや小さい。右膝は気にならない。
ここから見えてくるのは、
- 右の歩幅が小さいのは、いつも同じ特徴
- 朝は夜より、歩く速さがやや遅く、右膝も気になりやすい
- 歩幅を小さくすると楽になったのは、一度だけの記録(まだ傾向とは言えない)
ということです。
速さの数字があると、「朝は調子が悪い気がする」という感覚を、数字で確かめることができます。
ただし、0.1m/秒ほどのわずかな差は、ストップウォッチを押すタイミングなど、測り方の誤差でも生じます。何日か続けて、同じ傾向が出るかを見ましょう。
結果をどう受け止める?
楽になった
何が楽になったか(痛み・歩きやすさ・不安)を分けて書きます。その場の変化だけで「原因が分かった」と決める必要はありません。
同じ
そのまま「同じ」と書きます。その条件はあまり関係がないかもしれない、という大切な情報です。
悪くなった
その条件はやめて、普段の歩き方に戻します。確かめるために繰り返す必要はありません。
分からない
違いが感じられないときも、「分からない」と書けば十分です。
脳と足裏をつなぐ「ゆっくり重心移動」エクササイズ
チェックで歩き方の特徴が見えてきたら、次は、脳が膝や足裏の感覚を受け取る練習をしてみましょう。
研究で分かっていること
変形性膝関節症の方を対象にした9つの研究をまとめた報告では、運動によって膝の位置を感じ取る感覚が改善していました。
なかでも効果がはっきりしていたのは、太極拳やヨガのように、ゆっくりした動きと、体の感覚への注意を組み合わせた運動でした。筋力トレーニングや動作の練習だけでは、はっきりした差は見られませんでした(Lou 2026)。
ただし、研究ごとのばらつきが大きく、これから紹介する運動そのものの効果を確かめた研究ではありません。
太極拳のエッセンスである「ゆっくり」「感覚に注意を向ける」を、家でできる形にした運動の例として行ってみてください。
準備
- 壁や安定した台のそばに立ち、すぐ手をつけるようにする
- 裸足か、薄い靴下で行う
- 始める前に、廊下で10歩歩き、膝の気になり度を0〜10でメモする
レベル1 前後の重心移動(目を開けて)
1. 足を前後に半歩ほど開いて立ちます(気になる側の足を前に)
2. 5秒かけて、ゆっくり前の足に体重を移します
3. 前の足の足裏で、3つの点(親指の付け根・小指の付け根・かかと)に体重が乗るのを感じます
4. 5秒かけて、ゆっくり後ろの足に体重を戻します
5. 5往復したら、足を入れ替えて5往復します
ポイント:膝の向きが、つま先と同じ方向を向いたまま動けているかを、目で確かめながら行います。
レベル2 同じ動きを、目を閉じて
レベル1が楽にできたら、壁に手を添えたまま、目を閉じて同じ動きを行います。
目からの情報がなくなると、脳は足裏や膝からの感覚を、より頼りにして体を支えようとします。
目を閉じると、ふらつきや膝の感じ方が変わる方も多いはずです。それも大切な情報です。
ふらつきが強い方は、レベル1だけで十分です。
レベル3 ゆっくり歩き
1. 1歩に4秒ほどかけて、ゆっくり歩きます
2. かかと → 足裏の外側 → 親指の付け根、と体重が移っていくのを感じます
3. 10歩歩いたら、普段の速さに戻して10歩歩きます
回数とタイミングの目安
- 1日1回、3〜5分ほど
- まずはレベル1を1週間。楽にできたらレベル2、レベル3へ
- 同じ時間帯(例えば、朝の歯みがきの後)に行うと続けやすくなります
よくある間違い
- 速く動いてしまう(脳が感覚を受け取る時間がなくなります)
- 膝だけを見て、足裏を感じていない
- 痛みをがまんして続ける
前後で比べる
運動の後に、もう一度廊下で10歩歩き、膝の気になり度を0〜10でメモします。
余裕がある日は、チェック2の5mの速さも比べてみてください。
注意してほしいこと
膝の痛みがはっきり強くなる、めまいがする場合は、その場でやめてください。
記録のテンプレート
日付・時間:
条件(場所・靴か裸足か・疲れ具合):
5mの時間(秒)と速さ(m/秒):
5mの歩数:
動画で見えたこと(正面・横):
感じたこと:
変えた条件(一つ):
結果(楽・同じ・悪化・分からない):
足首・足裏・股関節と同じ側に特徴があったか:
よくある質問
Q.歩き方は、正しい形に直した方がいいですか?
「誰にとっても正しい歩き方」が一つあるわけではありません。
体の傾きや歩幅の違いは、膝を守るための工夫であることもあります。
まずは記録で、自分の歩き方の特徴と、条件を変えたときの反応を知ることから始めてみてください。
Q.膝が痛いなら、歩かない方がいいですか?
変形性膝関節症などの慢性的な膝の痛みでは、運動は国際的な診療ガイドラインでも中心的な対策の一つとして強く勧められています(Kolasinski 2020、Bannuru 2019)。
痛みがはっきり強くなる歩き方や距離は避けつつ、できる範囲で歩くことは、膝を守ることにもつながります。
例えば、膝の気になり度(0〜10)が普段より強くならない距離や時間を記録で見つけ、そこから少しずつ延ばしていく、という進め方がおすすめです。
Q.靴を変えたら、歩き方は変わりますか?
変わることがあります。
だからこそ、記録には「どの靴か」を書いておくことが大切です。
靴を変えて確かめる場合も、靴以外の条件は変えずに比べてみてください。
Q.杖を使うのは、歩き方が悪くなるのでよくないですか?
そんなことはありません。
アメリカのリウマチ学会などの変形性膝関節症の診療ガイドラインでは、杖の使用も勧められている対策の一つです(Kolasinski 2020)。
杖を使うときは、一般的に痛む膝と反対側の手で持ちます。
長さや使い方は、一度専門家に合わせてもらうと安心です。
Q.一人暮らしで、動画を撮ってくれる人がいません
スマートフォンを台や棚の上に置き、少し離れた場所から撮れば、一人でも大丈夫です。
正面だけ、横だけ、どちらか一方でも十分な情報になります。
撮るのが難しい日は、チェック2の速さと歩数だけでも記録しておきましょう。
身近に膝が気になるご家族やご友人がいれば、お互いに撮り合ってみるのもおすすめです。
Q.歩く速さが遅かったら、速く歩く練習をした方がいいですか?
速さは、その日の体調や痛みの影響を受けます。
一度の数字で判断せず、まずは数日分の記録を見てください。
速さが少しずつ落ちている、生活で歩くのがつらくなってきた、という場合は、記録を持って専門家に相談してみましょう。
シリーズのチェックをしてみて「記録はたまったけれど、どうつなげて読めばいいか分からない」という方もいらっしゃると思います。
大分駅から歩いて15分ほどの当院(大分市金池町)では、足首・足裏・股関節・歩き方を一緒に確かめながら、膝のためにどこから見ていくかを整理しています。
1〜2週間記録をつけても同じ特徴が続く方、条件を変えても変化が分からない方、歩く速さが少しずつ落ちてきた方は、一度ご相談ください。
これまでの記録メモや歩き方の動画があれば、ぜひお持ちください。
まとめ
今回は、膝が気になる方に向けて、自分の歩き方を確かめる3つのチェックを紹介しました。
チェック1 動画で見る
正面と横から撮り、膝の揺れ、骨盤、体の傾き、足の着き方を見る。
チェック2 5mの速さを測る
5÷秒で速さを出し、他人と比べるより、自分の数字の変化を見る。
チェック3 条件を一つだけ変えて歩く
普段→一つ変える→普段に戻す、の3回で比べる。
そして、足首・足裏・股関節で見えたことと、同じ側に特徴が重なるかを確かめること。
これで、シリーズでお伝えしてきた「見る順番」、
足首 → 足裏 → 膝 → 股関節 → 歩行
がすべてそろいました。
次回予告
次回は、シリーズの総まとめとして、
「9つのチェックの記録を見返して、次に何をするかを決める方法」
をお届けします。
記録がたまってきた方は、ぜひ手元に用意しておいてくださいね(๑•̀ㅂ•́)و✧
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それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)
参考文献
歩行時の膝の外側への揺れと膝OAの進行
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体の横への傾きと膝の負担の指標
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歩き方を変える研究のまとめ
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