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【第1部:概論編】痛み改善に必須!「6段階フレームワーク」あなたはこの順番通り治療してますか?

安部元隆

安部元隆

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こんにちは、GENRYUです(^^)
腰痛、ひざ痛、股関節痛、首痛など様々な痛みや
首、背中、肩のコリが辛すぎて悩んでいらっしゃる方が
とても多いと思います。
この症状を改善するためにあなたは、
「整形外科」を受診し、痛み止め、シップ、注射などで
対応されていると思います。
また、リハビリでは「筋力トレーニング」「有酸素運動」「ストレッチ・柔軟性改善」と
電気や温熱療法を行っていると思います。
これらの対処法は間違っているとは言いませんが、
痛みや不調を改善するために
臨床神経科学の実践から導き出された答えは、
「キチンとした順序を踏まないといけない」ということです。
それは大きく6つに分けられます。

①まず呼吸を正す
②次に正しく見る
③そしてバランスを取る
④動き方を学ぶ
⑤それらを統合する
⑥最後に認知と運動を融合させる

この6段階の順序そのものが、痛み治療に最も合理的な道筋です。
この順番を段階的に進めていくことが必要だと考えています。
そこで今回のブログでは、
この「痛みを改善するための6段階フレームワーク」を完全解説します。
第1部の本稿では各ステージの神経科学的根拠を深く掘り下げ、
第2部では今日から実践できる具体的なドリルプログラムを公開します。
このフレームワークは単なる「健康法」ではありません。
身体のパフォーマンスを支える神経系の階層構造を理解し、
その最下層から丁寧に積み上げていく、脳科学に基づく最も根本的なアプローチです。
ただ単に対処療法を闇雲に続けるのではなく、
カラダを根本から作り直すことが
痛みを改善する手段であり、健康寿命を伸ばす手段だと考えています。
では早速やっていきましょう!





第1章:なぜ「順序」が命なのか──神経系の階層構造という真実
このフレームワークの最大の特徴は、
6つのステージに「絶対的な優先順位」があることです。
ステージ1をしっかり確立せずにステージ3を訓練しても、
その効果は大きく制限されます。
なぜでしょうか?

1-1. 脳の情報処理は「下から上へ」の階層構造を持つ
神経科学では、脳の情報処理に
「ボトムアップ処理」と「トップダウン処理」という
2つの流れがあることが知られています。
身体の制御においては、より原始的・根本的なシステム(脳幹・小脳・基底核)が
上位の随意運動制御(大脳皮質)の「土台」として機能しています。
Parvizi & Damasio(2001年)が「Brain」誌に発表した
神経階層構造の研究では、呼吸・前庭系という
脳幹レベルの基礎的な制御システムが乱れている場合、
大脳皮質レベルの高度な運動制御や認知機能も
連鎖的に低下することが示されています。
これは「土台が歪んだ建物の上に精巧な構造物を積んでも崩れる」という
物理法則と同じ論理が、神経系にも適用されることを意味します。

1-2. 脳への「入力の質」がすべてのパフォーマンスを決める
このシリーズを通じて繰り返してきた重要な概念が「脳への入力の質」です。
脳は、受け取る感覚情報(固有受容感覚・視覚・前庭感覚・触覚・聴覚)の質
に基づいて、運動指令の精度・痛みの閾値・認知パフォーマンスを決定します。
Proske & Gandevia(2012年)の「Physiological Reviews」誌
掲載の総説が示すように、感覚入力の質が低下すると、
脳は「不確実性(Uncertainty)」を感知して防衛モードに入ります。
防衛モードでは可動域の制限・筋緊張の増大・痛みの増幅・
認知処理速度の低下が連鎖的に起こります。
逆に言えば、脳への感覚入力の質を
「最も根本的なシステムから順番に」改善していくことが、
パフォーマンスと健康の両方を最大化する
唯一の合理的な道筋です。
これが6段階フレームワークの神経科学的根拠です。


参考文献: Parvizi J & Damasio A. (2001). Consciousness and the brainstem. Cognition, 79(1-2), 135-160.
参考文献: Proske U & Gandevia SC. (2012). The proprioceptive senses: their roles in signaling body shape, body position and movement. Physiological Reviews, 92(4), 1651-1697.



STAGE 1 呼吸(Breathing)──1日2万5千回の「神経チューニング」
なぜあらゆることに先立って「呼吸」なのか。
この問いへの答えは、量と質の両面にあります。

1-1. 1日2万5千回という圧倒的な頻度
人間は1日に平均2万4千〜2万5千回呼吸します。
これは、歩行・手の動作・眼球運動を含む
あらゆる運動パターンよりも遥かに多い頻度です。
運動学習の研究において、神経回路の強化は「反復の質と量」によって
決まります(Ericsson et al., 1993年)。
つまり、呼吸パターンの質を改善することは、
1日2万5千回の「正しい神経刺激の反復」を意味します。
これほど高頻度で脳に影響を与える行動は他にありません。

1-2. 呼吸と脳機能の直結回路
脳は酸素と二酸化炭素(CO₂)の適切なバランスによって動いています。
Duffin(2005年)が「Respiratory Physiology & Neurobiology」誌に
発表した研究では、慢性的な過換気(息を吸いすぎる・速く浅い呼吸)による
CO₂の過剰排出が、脳血管の収縮を引き起こし、
脳への血流と酸素供給を逆説的に低下させることが示されています。
さらに重要なのが呼吸と自律神経の関係です。
Zaccaro et al.(2018年)のレビューが示すように、
呼気を延長するゆっくりとした呼吸は迷走神経を直接刺激し、
副交感神経系を活性化します。
これにより、慢性疼痛・不安・パフォーマンス低下の根底にある
「交感神経過活動(脅威モード)」が解除されます。
呼吸の改善は、すべての後続ステージへの
脳の「受信態勢」を整える最初の必須ステップです。

1-3. 「腹式呼吸」という誤った指導と「360度円筒呼吸」の神経学
運動指導の現場で長年「腹式呼吸をしましょう」と教えられてきましたが、
これは指導法として不完全です。
「お腹を出す」という指示は前面の動きのみを促し、
肋骨の側面・背面への呼吸拡張を省略してしまいます。
正しい呼吸は「360度円筒呼吸(Cylindrical Breathing)」です。
吸気時に肺が膨らむにつれ、横隔膜が下降し、
腹腔内圧が360度均等に高まることで、
肋骨は前面・側面・背面の全方向に均等に広がります。
Kolar et al.(2010年)の研究では、この360度
均等な腹腔内圧の形成こそが脊椎の最適な安定化をもたらし、
腰椎・骨盤帯への均一な負荷分散を実現することが示されています。
「腹だけを膨らませる」呼吸では、この脊椎安定化機能は達成されません。
参考文献: Ericsson KA, et al. (1993). The role of deliberate practice in the acquisition of expert performance. Psychological Review, 100(3), 363-406.
参考文献: Duffin J. (2005). Functional organization of respiratory neurones. Respiratory Physiology & Neurobiology, 147(2-3), 167-186.
参考文献: Zaccaro A, et al. (2018). How breath-control can change your life. Frontiers in Human Neuroscience, 12, 353.
参考文献: Kolar P, et al. (2010). Postural function of the diaphragm. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 40(4), 235-245.




STAGE 2 視覚(Vision)──脳への情報の80%を担う「最重要センサー」
呼吸によって脳の受信態勢が整ったら、次に最適化すべきは視覚系です。
「よく見えていれば問題ない」という認識は、この文脈では大きく不十分です。

2-1. 視覚情報は脳への入力の80%を占める
人間の脳が空間認識・運動制御・姿勢維持に使用する感覚情報のうち、
最大80%が視覚由来であることが知られています(Prochazka, 1996年)。
この圧倒的な比率は、視覚系の機能状態が
全身のパフォーマンスに与える影響の大きさを直接示しています。
特に重要なのが「視力(視野の鮮明さ)」ではなく
「眼球運動の精度と協調性」です。
視力が1.5あっても、眼球の動き(滑動性追跡・サッケード・輻輳・開散)に
機能障害があれば、脳への視覚情報の質は著しく低下します。

2-2. 目は「脳の窓」──眼球運動が示す神経系の健康状態
眼球運動を制御する神経核(動眼神経核・滑車神経核・外転神経核)は
脳幹に位置し、前庭系・小脳・大脳皮質と密接に連絡しています。
Leigh & Zee(2015年)の「The Neurology of Eye Movements」が示すように、
眼球運動の異常(滑動性追跡のカクつき・サッケードの精度低下・輻輳不全)は、
小脳機能・前庭系機能・前頭葉機能の状態を直接反映します。
つまり、眼球運動の評価と訓練は、脳全体の神経回路の健全性を
同時に評価・改善する最も効率的な手段の一つなのです。


2-3. 現代人の眼球運動機能は著しく低下している
長時間のスマートフォン・デスクワークによる近距離固視の慢性化が、
現代人の眼球運動機能を著しく低下させています。
Birnbaum(1993年)以来の多くの研究が、近距離作業の多い人々において
輻輳近点の後退(輻輳不全)・開散機能の低下・滑動性追跡の精度低下が
高頻度で見られることを報告しています。
この眼球運動機能の低下が、肩こり・頭痛・腰痛・バランス障害・
集中力低下の隠れた原因となっていることは、
直近のブログを通じて繰り返し解説してきた通りです。
STAGE 2の最適化は、これらすべての問題への
「上流からのアプローチ」となります。
参考文献: Prochazka A. (1996). Proprioceptive feedback and movement regulation. Handbook of Physiology, Section 12, 89-127.
参考文献: Leigh RJ & Zee DS. (2015). The Neurology of Eye Movements (5th ed.). Oxford University Press.



STAGE 3 前庭系(Vestibular)──生命の根幹を担う「重力センサー」
内耳の前庭系は、胎児期・乳幼児期において
神経系の中で最初に完全発達するシステムです。
この事実一つをとっても、前庭系がいかに生命活動の根幹に関わるかが分かります。

3-1. 重力は人生で最も強力な力──だからこそ最初に発達する
人間は生まれた瞬間から死ぬ日まで、24時間365日、
重力の影響を受け続けます。
この生涯にわたる最強の環境入力に対応するために、
前庭系は神経系の中で最優先で発達します。
Muller & O'Rahilly(2004年)の発生学研究では、
前庭神経節と半規管の基本構造は妊娠8週頃には形成され、
脳幹との機能的接続が確立する時期は視覚系や大脳皮質の発達よりも
遥かに早いことが示されています。

3-2. 前庭系の機能不全が引き起こす広範な問題
前庭系の機能障害は、一般的に「めまい・バランス障害」
として認識されますが、その影響はそれだけにとどまりません。
現代の前庭神経学研究が明らかにしているのは、
前庭系が姿勢制御・眼球運動・自律神経・情動・認知機能という
驚くほど広い範囲に影響を与えているという事実です。
Staab et al.(2017年)が「Journal of Vestibular Research」誌に
発表した研究では、慢性的な前庭機能不全が不安障害・うつ病・認知機能低下と
高い相関を示すことが確認されています。
前庭系は単なる「バランス器官」ではなく、
脳全体の情動・認知処理の基盤として機能していることが明らかになっています。

3-3. 斜め方向VOR──複数の半規管を同時刺激する高度な訓練
前庭眼反射(VOR)の訓練において、特に強調するのが
「斜め方向のVOR」です。
これは単純な左右回転・上下うなずきより高度な訓練です。
内耳の三半規管は3つの異なる平面(水平・前垂直・後垂直)に配置されており、
それぞれが異なる方向の角加速度を検出します。
Cohen et al.(1983年)の前庭神経学研究以来、
斜め方向の頭部運動は水平半規管と垂直半規管の2つ以上を
同時に刺激することが確認されており、これが単一平面の訓練より
高い神経統合効果をもたらします。
具体的に言うと、「鼻を右上に上げて左下に下げる」という斜め方向のVORは、
右側の前半規管と左側の後半規管を同時に活性化します。
この複合刺激が、脳幹前庭核の神経回路を多角的に強化し、
日常生活の「予測不能な動作中のバランス維持」能力を高めます。


参考文献: Muller F & O'Rahilly R. (2004). Olfactory structures in staged human embryos. Cells Tissues Organs, 178(2), 93-116.
参考文献: Staab JP, et al. (2017). Diagnostic criteria for persistent postural-perceptual dizziness. Journal of Vestibular Research, 27(4), 191-208.
参考文献: Cohen B, et al. (1983). Semicircular canal and otolith contributions to the VOR. Annals of the New York Academy of Sciences, 374(1), 65-76.



STAGE 4 動き(Movement)──すべての関節を3次元で制御する能力
呼吸・視覚・前庭という3つの感覚入力システムが整ったとき、
初めて「動き」の最適化が本当の意味で可能になります。

4-1. 「動きの地図」の完全性が身体能力の上限を決める
前章で解説した「皮質の地図のぼやけ(Cortical Smudging)」は、
腰椎・骨盤だけでなく、全身のすべての関節に適用される概念です。
脳が各関節の位置・速度・力を正確に把握できているほど、
その関節を安全・効率的に動かせます。
逆に、使われていない関節・動作パターンの皮質表現は
縮小・融合し、「地図のぼやけ」が生じます。
Moseley & Flor(2012年)の神経リハビリテーション研究では、
慢性疼痛患者において患部の皮質表現が縮小・ぼやけており、
その回復が疼痛軽減と機能改善に直結することが示されています。
この原則はパフォーマンス向上の文脈にも同様に適用されます。
使っていない動きのパターンを定期的に練習することは、
脳の「身体地図の解像度」を維持・向上させる最も直接的な方法です。

4-2. 3つの運動面と多平面制御の重要性
人体の動きは矢状面(前後)・前頭面(左右)・水平面(回旋)の
3つの基本平面に分類できます。
日常生活・スポーツのほとんどの動作は、
これら3平面が組み合わさった「多平面複合動作」です。
Kibler et al.(2006年)のスポーツ医学的研究では、
1つの平面のみに特化したトレーニング
(例:矢状面のみのスクワット・デッドリフト)は、
他の平面における動的安定性の向上に転用されにくいことが示されています。
特に高齢者・慢性疼痛患者では、日常生活の「ひねり・横への動き・複合動作」への
対応能力が著しく低下しており、これが転倒・再受傷の主要因となっています。

4-3. 「未練習の動作=脳の防衛モード発動」という鉄則
エリック博士が強調する最重要の原則のひとつが
「脳がこれまで練習したことのない動作を指示されると、
防衛モードに入る」という事実です。
Vlaeyen & Linton(2000年)の恐怖回避モデルが示すように、
「経験のない動作への恐怖」は慢性疼痛の維持・強化の主要因です。
逆に言えば、可能な限り多くの動作パターンをあらかじめ
「安全な状態で」脳に経験させておくことが、
怪我・痛みへの予防的防壁となります。
「やったことがない動きは怖い」ではなく
「やったことがない動きは一つもない」という神経系の状態を目指すのが
STAGE 4の目標です。
参考文献: Moseley GL & Flor H. (2012). Targeting cortical representations in the treatment of chronic pain. Neurorehabilitation and Neural Repair, 26(6), 646-652.
参考文献: Kibler WB, et al. (2006). Functional biomechanics of the kinetic chain. Clinics in Sports Medicine, 25(2), 353-372.
参考文献: Vlaeyen JW & Linton SJ. (2000). Fear-avoidance and its consequences in chronic musculoskeletal pain. Pain, 85(3), 317-332.



STAGE 5 統合(Integration)──4つのシステムを「動的に」結びつける
STAGE 1〜4で個別に最適化した呼吸・視覚・前庭・動きを
「同時に・動的に」機能させる能力がSTAGE 5の統合です。

5-1. 静的習得から動的実行への橋渡し
多くのトレーニングプログラムの弱点は
「静的・単独での能力習得」に留まり、「動的・複合状況での実行」への
橋渡しが不十分な点にあります。
例えば、停止した状態でのバランス訓練(片脚立位)は、
歩行中・スポーツ中という「動きながら」の状況に必ずしも転用されません。
Shumway-Cook & Woollacott(2017年)の運動制御の教科書が強調するように、
バランス・姿勢制御の「機能的転用」のためには、
訓練中に呼吸・視覚・前庭・動作の複数の要素が同時に関与する
「文脈特異的訓練(Context-Specific Training)」が必要です。
STAGE 5はこの原則を具体的に実践するフェーズです。

5-2. 恐怖のない動き──「脳の安全確認」の完成
本シリーズを通じて繰り返してきたテーマである
「脳が安全だと感じる環境を作ること」の完成形がこのSTAGE 5です。
呼吸で脅威レベルが低下し、視覚で空間が正確に把握でき、
前庭系で重力との関係が安定し、多様な動きを練習した脳は
「どの方向に動いても大丈夫だ」という確信を持つようになります。
この状態をMoseley(2003年)は「脳の脅威マトリクスの再構成
(Reconceptualization of the Threat Matrix)」と表現しています。
この状態に達した時、痛みは劇的に軽減し、
パフォーマンスの上限が大きく解放されます。
参考文献: Shumway-Cook A & Woollacott MH. (2017). Motor Control: Translating Research into Clinical Practice (5th ed.). Wolters Kluwer.
参考文献: Moseley GL. (2003). A pain neuromatrix approach to patients with chronic pain. Manual Therapy, 8(3), 130-140.



STAGE 6 認知×運動統合(Cognitive-Motor Integration)──デュアルタスクが命を守る
6段階の最終ステージは、多くのトレーニングプログラムが見落としてきた
最重要の要素、「認知機能と運動機能の統合」です。

6-1. 現実の生活は常に「デュアルタスク」
現実の日常生活・スポーツ・仕事において、運動は決して
「運動だけ」で行われません。
歩きながら会話する、荷物を持ちながら階段を降りる、
スポーツ中に戦術を考えながら動く──
これらはすべて「認知課題と運動課題の同時並行(デュアルタスク)」です。
Woollacott & Shumway-Cook(2002年)が
「Progress in Brain Research」誌に発表した研究では、
デュアルタスク条件下での姿勢制御能力は、
単一タスク(運動のみ)の条件と比較して著しく異なる
神経資源配分パターンを示し、特に高齢者・慢性疼痛患者において
デュアルタスク時の姿勢安定性が優位に低下することが示されています。

6-2. デュアルタスク能力の低下が「転倒・怪我・慢性痛」を引き起こす
加齢とともにデュアルタスク能力が低下することは
多くの研究で確認されています。
Beauchet et al.(2008年)の系統的レビューでは、
デュアルタスク歩行テストのスコア低下が、
将来の転倒リスクと独立した有意な相関を持つことが示されています。
重要なのは、この能力低下の主要因が「認知能力の低下」ではなく、
「運動トレーニングにおいてデュアルタスク要素を組み込んでこなかったこと」に
あるという点です。
つまり、デュアルタスク能力の維持は
「高齢者のリハビリ」だけの問題ではありません。
若年のアスリートから中高年の一般人まで、すべての人にとって
「動きながら考える・考えながら動く」という能力の意図的な訓練が、
パフォーマンスと安全の両方にとって不可欠なのです。

6-3. ワーキングメモリと処理速度の維持──「使わなければ失う」
認知神経科学において「Use it or lose it(使わなければ失う)」という
原則は広く確立されています。
Kramer & Erickson(2007年)が「Trends in Cognitive Sciences」誌に
発表したレビューでは、運動と認知課題を組み合わせた訓練(認知運動統合訓練)が、
運動のみの訓練・認知訓練のみと比較して、
ワーキングメモリ・処理速度・実行機能の改善効果において
優れた結果をもたらすことが報告されています。
これは運動と認知が脳内で共通の神経資源を
共有・強化し合うことを示しています。
参考文献: Woollacott M & Shumway-Cook A. (2002). Attention and the control of posture and gait. Progress in Brain Research, 143, 3-14.
参考文献: Beauchet O, et al. (2008). Dual-task related gait changes in the elderly. Journal of Nutrition Health and Aging, 12(3), 142-149.
参考文献: Kramer AF & Erickson KI. (2007). Capitalizing on cortical plasticity: influence of physical activity on cognition and brain function. Trends in Cognitive Sciences, 11(8), 342-348.





第2章:6段階フレームワークの全体像と相互関係
6つのSTAGEを個別に理解した後、それらの相互関係を俯瞰することで、
このフレームワークの真の力が見えてきます。

2-1. 下位ステージが上位ステージの「土台」を決める
STAGE 1(呼吸)の質が低い状態では、STAGE 2(視覚)の
最適化は不完全にしか達成できません。
なぜなら、交感神経過活動状態(脅威モード)にある脳は、
眼球運動の精度を低下させ、視覚情報処理の効率を落とすからです。
同様に、STAGE 3(前庭)が機能不全の場合、
STAGE 4(動き)の多方向制御能力は大きく制限されます。
前庭系は姿勢制御の基盤的情報を脳に提供するシステムであり、
その機能不全は全身の運動制御の精度を落とします。

2-2. 評価→改善→再評価のサイクルが各ステージで機能する
このフレームワークの実践において、各ステージへの介入は必ず
「ベースライン評価→介入→即時再評価」のサイクルで行います。
この「テストして変える」という手法は本シリーズを通じて
一貫したアプローチです。
各ステージへの介入(呼吸改善・眼球運動訓練・VOR訓練など)が、
上の評価指標(可動域・バランス・筋力・認知パフォーマンス)に
即座に影響を与えることを確認しながら進むことで、
あなたの神経系にとって「最も効果的なステージ・最も優先すべき問題」を
特定できます。
このフレームワークは「6つすべてを完璧にしてから動く」
という直線的なプロセスではありません。
各ステージを評価しながら優先順位を特定し、
螺旋状に深化させていく継続的なプロセスです。





第1部のまとめ:「運動の前に脳を整える」という新しい常識
本稿でお伝えしてきた6段階フレームワークの核心をまとめます。
◆神経系には階層構造があり、下位システム(呼吸・視覚・前庭)が
上位システム(動き・統合・認知)の土台となる(Parvizi & Damasio, 2001年)。

◆STAGE 1(呼吸):1日2万5千回の反復という圧倒的頻度と、
自律神経・脳血流への直接影響を持つ最重要基盤。
360度円筒呼吸が正しい指導法(Kolar et al., 2010年)。

◆STAGE 2(視覚):脳への入力の80%を担い、眼球運動の精度が
全身のパフォーマンスと疼痛を左右する。
目は脳全体の機能を知る最良の窓(Leigh & Zee, 2015年)。

◆STAGE 3(前庭):胎児期に最初に発達する神経系。
重力という最強の環境入力への対応システムで、
不安・うつ・認知機能障害とも深く関連(Staab et al., 2017年)。
斜め方向VORが複数の半規管を同時刺激する高度な訓練。

◆STAGE 4(動き):すべての関節を3次元・多平面で制御する脳の
「身体地図の解像度」を最大化する。
未練習の動作が脳の防衛モードを発動させる(Vlaeyen & Linton, 2000年)。

◆STAGE 5(統合):4システムを動的・同時に機能させる文脈特異的訓練。
脳の脅威マトリクスの再構成(Moseley, 2003年)。

◆STAGE 6(認知×運動統合):デュアルタスク能力の意図的訓練が
転倒・怪我・慢性痛を防ぎ、ワーキングメモリ・処理速度を維持する(Kramer & Erickson, 2007年)。

第2部【実践編】では、この6段階を今日から自宅で実践できる
具体的なドリルプログラムとして完全公開します。
各ステージの評価法・介入手順・即時再評価の方法を詳細に解説し、
あなただけの「ゼロからの身体再構築ロードマップ」を設計します。
ぜひ、次回のコラムも楽しみにしておいてくださいね(๑•̀ㅂ•́)و✧
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)

【主要参考文献】
・Parvizi J & Damasio A. (2001). Consciousness and the brainstem. Cognition, 79(1-2), 135-160.
・Proske U & Gandevia SC. (2012). The proprioceptive senses. Physiological Reviews, 92(4), 1651-1697.
・Ericsson KA, et al. (1993). The role of deliberate practice in expert performance. Psychological Review, 100(3), 363-406.
・Duffin J. (2005). Functional organization of respiratory neurones. Respiratory Physiology & Neurobiology, 147(2-3), 167-186.
・Zaccaro A, et al. (2018). How breath-control can change your life. Frontiers in Human Neuroscience, 12, 353.
・Kolar P, et al. (2010). Postural function of the diaphragm. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 40(4), 235-245.
・Prochazka A. (1996). Proprioceptive feedback and movement regulation. Handbook of Physiology, Section 12, 89-127.
・Leigh RJ & Zee DS. (2015). The Neurology of Eye Movements (5th ed.). Oxford University Press.
・Muller F & O'Rahilly R. (2004). Olfactory structures in staged human embryos. Cells Tissues Organs, 178(2), 93-116.
・Staab JP, et al. (2017). Diagnostic criteria for persistent postural-perceptual dizziness. Journal of Vestibular Research, 27(4), 191-208.
・Cohen B, et al. (1983). Semicircular canal contributions to VOR. Annals of the New York Academy of Sciences, 374(1), 65-76.
・Moseley GL & Flor H. (2012). Targeting cortical representations in chronic pain. Neurorehabilitation and Neural Repair, 26(6), 646-652.
・Kibler WB, et al. (2006). Functional biomechanics of the kinetic chain. Clinics in Sports Medicine, 25(2), 353-372.
・Vlaeyen JW & Linton SJ. (2000). Fear-avoidance and its consequences in chronic musculoskeletal pain. Pain, 85(3), 317-332.
・Shumway-Cook A & Woollacott MH. (2017). Motor Control (5th ed.). Wolters Kluwer.
・Moseley GL. (2003). A pain neuromatrix approach to patients with chronic pain. Manual Therapy, 8(3), 130-140.
・Woollacott M & Shumway-Cook A. (2002). Attention and the control of posture and gait. Progress in Brain Research, 143, 3-14.
・Beauchet O, et al. (2008). Dual-task related gait changes in the elderly. Journal of Nutrition Health and Aging, 12(3), 142-149.
・Kramer AF & Erickson KI. (2007). Capitalizing on cortical plasticity. Trends in Cognitive Sciences, 11(8), 342-348.

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