膝の痛みでお悩みの方は、まずココを伸ばして!
こんにちは、GENRYUです(^^)
この記事の要点
・膝が気になる方に向けて、膝の上にある「股関節」の動きを自宅で確かめる3つのチェックを紹介します。
・膝は、下の足首と上の股関節にはさまれた「真ん中の関節」です。股関節の動きが変わると、膝の向きも一緒に変わります。
・座ってのひねり、片脚立ち、浅い片脚しゃがみの3つで、足首・足裏のチェックとつなげて読みます。まずは座ったまま3分でできる方法から始められます。
・脳が動きを「予行演習」するしくみを使った、3ステップのエクササイズも紹介します。
・股関節を鍛える運動は膝の痛みや動作の改善に役立つという研究がありますが、膝への負担そのものが減るとまでは分かっていません。
前回のコラムでは、膝が気になる方に向けて、
足首と足裏を自分で確かめる3つのチェック
を紹介しました。
そして最後に、こうお伝えしました。
「足元だけでは説明がつかないと感じた方は、膝の上にある股関節も見てみましょう」
今回はその続きです。
膝が気になる人のための、股関節の動きを確かめる方法
をお届けします。
前回までのコラムをまだお読みでない方は、こちらからどうぞ。
→前々回「膝が痛いとき、膝だけ見ていませんか?」を読む
→前回「膝が気になる人へ|足首と足裏を自分で確かめる3つのチェック」を読む
始める前に:安全のための約束
こんなときは、チェックをせずに医療機関へ
- 膝や足の付け根に体重をかけられないほど痛い
- 膝や足の付け根が急に腫れた、熱を持っている
- 発熱があり、膝が赤くなっている
- 膝が引っかかって伸びない・曲がらない、ガクッと崩れる
- 転んだりぶつけたりした後から痛い
- 夜、じっとしていても強く痛む
- 10代前後のお子さんが、膝や太ももの痛みを訴えて足を引きずっている
最後の項目は、とても大切なので少し説明します。
子どもの股関節の病気(大腿骨頭すべり症など)は、股関節ではなく「膝の痛み」として現れることがあります。
アメリカの研究では、膝の痛みで受診した子どもは、股関節の痛みで受診した子どもに比べて、股関節の画像検査を受けるまでに平均で約3か月長くかかっていました。
お子さんの膝の痛みが続く場合は、整形外科で「股関節も含めて」診てもらってください。
お子さんやお孫さんのいるご家族にも、ぜひこの一文を伝えてあげてください。
「子どもの膝の痛みが続くときは、股関節も診てもらう」
チェック中の約束
- すぐ手をつけるよう、壁や安定した家具のそばで行う
- 痛みがはっきり強くなったら、その場でやめる
- 各チェックは2〜3回まで
- すでに病院やリハビリで指示を受けている方は、その指示を優先する
今回も4つのルールで
前回と同じルールで進めます。
- 「見えたこと」と「原因」を分けて書く
- 条件も一緒に書く(靴か裸足か、どの椅子か、朝か夜か)
- 変えるなら一つだけ
- 結果は「楽になった・同じ・悪くなった・分からない」のどれかで残す
このルールを続けることで、足首・足裏・股関節の記録を、あとから並べて比べられるようになります。
まずは今日、3分だけ
全部のチェックをする時間がない方は、これだけでも大丈夫です。
1. 椅子から2回立ち上がり、膝の気になり度を0〜10でメモします(0=まったく気にならない、10=とても気になる)
2. 骨盤を立てて座り直し(お尻の下の左右の骨に体重を乗せる)、チェック1の「座ってひねる」を左右5回ずつ、ゆっくり行います
3. もう一度2回立ち上がり、0〜10でメモします
→ 数字が変わっても、変わらなくても、それが今日の大切な記録です。
なぜ、膝が気になるのに股関節を見るの?
膝は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)をつなぐ関節です。
この太ももの骨の、もう一方の端にあるのが股関節です。
つまり、股関節の動きが変わると、太ももの向きが変わり、膝の位置や向きも一緒に変わります。
膝は、下の足首と上の股関節に挟まれた「真ん中の関節」なのです。
例えば、立ち上がるときに太ももが内側へひねられると、膝はその上で内側へ入るように見えます。
逆に、股関節がうまくひねれないと、足首や膝が代わりにひねられて、動きを補うことがあります。
膝そのものだけを見ていても、こうした「上と下からの影響」は見えてきません。
研究で分かっていることを、「関連」と「原因」に分けて整理してみます。
関連として分かっていること
- 内側型の変形性膝関節症の方57名を18か月追った研究では、歩くときに股関節を外へ支える力(外転モーメント)が大きい人ほど、膝の内側の進行が少なかった(Chang 2005)
- スポーツ選手や若い人を中心にした研究のまとめでは、股関節・骨盤・体幹のコントロールが、膝の動きや負担に影響しうると考えられている(Powers 2010)
ただし、これらは「関連」です。
股関節の弱さが膝の痛みの「原因」だと決まったわけではありません。
運動の研究で分かっていること
- 膝のお皿のまわりが痛む方(膝蓋大腿部痛)では、股関節まわりの運動を太ももの前の運動に加えると、短期的に痛みと動作が改善するという強い根拠がある(Lack 2015)
- 変形性膝関節症では、股関節の運動を加えると歩く能力はより改善したが、痛みについてははっきりした差がなかった(Hislop 2020)
- 股関節の筋力トレーニングで、痛みと動作は改善したが、歩くときの膝の内側への負担の指標は変わらなかった(Bennell 2010)
最後の研究は、とても大切なことを教えてくれます。
「股関節を鍛えると楽になる人はいる。でも、それは膝への負担が減ったからとは限らない」
ということです。
脳から見た、股関節と膝
では、なぜ「負担の指標」が変わらなくても、楽になる方がいるのでしょうか。
ここで役立つのが、脳の研究です。
1. 痛みは、脳が出す「守って」のサイン
痛みの研究では、痛みは「体が壊れている量」をそのまま表すものではなく、脳が「この部分を守る必要がある」と判断したときに出すサインと考えられています(Moseley & Butler 2015)。
そして、痛みがあると、体は守るために動き方そのものを変える、という考え方(理論)も提唱されています(Hodges & Tucker 2011)。
股関節のひねりが小さい、片脚立ちで体を傾ける。こうした特徴も、硬さや弱さだけでなく、脳が選んだ「守るための動き方」である可能性があります。
2. 脳は、動く前に「予行演習」をしている
体を動かすとき、脳は動きを組み立ててから、筋肉に指令を出しています。
脳の画像研究75本をまとめた報告では、動きを頭の中で思い描くだけでも、実際に動くときに使われる脳の広い範囲が働くことが示されています(Hétu 2013)。
つまり、動きを「思い描く」ことも、脳にとっては動きの練習の一部なのです。
3. 脳に「安全な動き」を経験させる
痛みが「守って」のサインなら、痛みのない範囲で、ゆっくり、感じながら動く経験を重ねることは、脳に「この動きは安全だ」という情報を届けることになります。
股関節を鍛えて楽になる方がいるのは、筋力だけでなく、こうした脳への情報が変わることも関係しているのかもしれません。
ただし、これはまだ研究で確かめられた結論ではなく、考え方の一つです。
だからこそ、「股関節が悪いはず」と決めつけるのではなく、自分の股関節がどう動いているかを確かめることに意味があります。
股関節そのものの痛みが、膝に出ることは?
大人の場合、股関節が原因の痛みが膝に出ることは多くありません。
股関節が痛みのもとと考えられた51名に、股関節へ注射をして痛みの場所を調べた研究では、膝に痛みが出た方は2%でした(Lesher 2008)。
一方で、前に書いたように子どもでは膝の痛みとして現れることがあるので、年齢によって考え方が違います。
チェック1 座って、股関節のひねりを比べる
なぜ「ひねり」を見るのか
股関節は、曲げ伸ばしだけでなく、太ももを内側・外側にひねる動き(内旋・外旋)もできる関節です。
立ち上がりや方向転換、階段では、このひねりの動きが少しずつ使われています。
ひねりが小さい側では、太ももの代わりに膝や足首がひねられて、動きを補っていることがあります。
また、股関節の内側へのひねり(内旋)が小さいことや、ひねったときの付け根の痛みは、股関節の変形性関節症を見分ける目安の一つにも使われています(Altman 1991)。
やり方
1. 椅子に深く腰かけ、背もたれから少し離れて座ります
2. 両膝は90度くらいに曲げ、太ももは平行にそろえます
3. 片方の太ももを動かさないように手で軽く押さえます
4. 膝の位置はそのまま、すねを振り子のように外側へゆっくり振ります
5. 次に、すねを内側へゆっくり振ります
6. 反対側でも同じように行います
少しややこしいのですが、
- すねを外側へ振る = 股関節は「内側へのひねり(内旋)」
- すねを内側へ振る = 股関節は「外側へのひねり(外旋)」
です。
日本で使われている股関節の参考可動域は、内旋・外旋ともに45度です(仰向けで股関節と膝を90度に曲げて測った値)。
ただ、ここでは角度を測る必要はありません。左右でどちらが動きやすいかを比べるだけで十分です。
見るポイント
- 左右で、すねの振れる幅に違いはあるか
- 内側へのひねり(すねを外へ)と、外側へのひねり(すねを内へ)、どちらが小さいか
- 動きの最後で、お尻が浮く・体が傾くなどの「逃げ」はないか
- どこに張りや詰まりを感じるか(お尻、付け根、太ももの外側など)
結果の読み方
片側だけ、すねの振れる幅が明らかに小さい
→ その側の股関節のひねりが小さい状態かもしれません。チェック3で、その側の膝の向きと一緒に見てみましょう。
お尻が浮く・体が傾く
→ 股関節のひねりが足りない分を、骨盤や背中で補っている可能性があります。
足の付け根(股関節の前)に痛みが出る
→ その場で中止してください。続くようなら、股関節を整形外科で診てもらうことをおすすめします。
一つだけ変えてもう一度
骨盤を立てて座り直してから、もう一度行ってみてください。
お尻の下にある左右の骨(坐骨)に体重が乗るように座ると、骨盤が後ろに倒れにくくなります。
座り方が変わるだけで、ひねりの幅が変わる方もいます。
チェック2 片脚立ちで、骨盤の高さを見る
なぜ片脚立ちを見るのか
歩くとき、私たちは必ず片脚で体重を支える瞬間があります。
このとき、骨盤を水平に保っているのが、お尻の横の筋肉(中殿筋など)です。
片脚で立ったときの骨盤の様子を見るのは、「トレンデレンブルグテスト」と呼ばれる古くからの方法です。
ただし研究では、痛みがあるときや、体を立ち脚の方へ大きく傾けて補っているときには、正しく判断しにくいことも指摘されています(Hardcastle & Nade 1985)。
ここでも、「良い・悪い」を判定するのではなく、左右の違いと、体の工夫を見ていきます。
やり方
1. 鏡の前に立ち、片手を壁や家具に軽く添えます
2. 両手(または片手)を、骨盤の出っ張り(腰骨)に当てます
3. 片足を床から5cmほど浮かせ、5秒ほど保ちます
4. 反対側でも行います
ふらつきが怖い方は、壁に添えた手をしっかりついたままで大丈夫です。
見るポイント
- 浮かせた側の骨盤が、下がっていないか
- 体が、立っている脚の方へ大きく傾いていないか
- 立っている脚の膝が、内側や外側へそれていないか
- 立っている足の足裏で、3つの点(親指の付け根・小指の付け根・かかと)を感じられるか
結果の読み方
浮かせた側の骨盤が下がる
→ 立っている側のお尻の横の筋肉が、骨盤を支えきれていないのかもしれません。
骨盤は水平だが、体が大きく立ち脚側に傾く
→ 体を傾けることで、お尻の横の筋肉の仕事を減らしている「工夫」の可能性があります。悪いことではありませんが、歩くときにも同じ工夫をしているかもしれません。
片側だけ、膝がそれる・足裏の3点が分かりにくい
→ 前回のチェック2(足裏)の片脚の結果と比べてみましょう。同じ側に特徴が重なっていれば、大切な手がかりです。
一つだけ変えてもう一度
立っている足の足裏の3つの点を感じてから、もう一度片足を浮かせてみてください。
前回のチェック2とつながる変え方です。
足裏の感じ方が変わると、骨盤の高さや体の傾きが変わる方もいます。
チェック3 浅い片脚しゃがみで、動きの中の股関節を見る
なぜ片脚しゃがみを見るのか
チェック1・2は、その場での股関節の様子でした。
チェック3では、体重を支えながら膝を曲げる動きの中で、股関節・膝・足がどう協力しているかを見ます。
階段を下りる、片脚で踏ん張る、といった場面に近い動きです。
片脚しゃがみ(シングルレッグスクワット)を専門家が見て評価する方法は、評価する人が変わっても結果がそろいやすく、この評価が良い人ほどお尻の横の筋肉の働きが良かったという研究があります(Crossley 2011)。
ただし、この研究の対象は膝の痛みのない若い成人34名です。中高年の方や膝が痛い方に、そのまま当てはまるとは限りません。
やり方
1. 鏡の前で、片手を壁や家具に添えて立ちます
2. 片足を軽く浮かせます
3. 立っている脚の膝を、痛みのない範囲で、少しだけ曲げてまた伸ばします
4. 2〜3回行い、反対側でも行います
膝が痛い方や片脚が不安な方は、両足で立ったまま、体重を片側に7割ほど寄せて浅く膝を曲げる方法でも大丈夫です。
見るポイント
- 膝が、足の人差し指〜中指の方向に進んでいるか、内側や外側にそれていないか
- 浮かせた側の骨盤が下がっていないか
- 体が、横や前に大きく傾いていないか
- かかとが浮いていないか、足先の向きが変わっていないか
- 膝が気になる場面はどこか(曲げ始め・一番下・伸ばすとき)
結果の読み方
膝が内側へそれる・骨盤が下がる
→ 股関節で太ももの向きをコントロールしにくい状態かもしれません。チェック1・2の同じ側の結果と比べてみましょう。
かかとが浮く・足先が外を向く
→ 前回のチェック1(足首)の結果とつながっている可能性があります。
膝は外側へ揺れる
→ 前回お伝えしたように、膝が内側に入るか外側に揺れるかは人によって違います。どちらかを「正解」に当てはめず、そのまま記録しましょう。
一つだけ変えてもう一度
お尻を少しだけ後ろに引きながら膝を曲げてみてください。
膝だけで曲がるのではなく、股関節からも曲げるイメージです。
股関節を曲げる量が増えると、膝の向きや、膝で感じる負担が変わる方もいます。
余裕がある方へ:階段で確かめる
片脚しゃがみで変化が見えた方は、普段の生活で気になる階段でも確かめることができます。
ただし、必ず手すりを持ち、一段だけ、上り下りに慣れた階段で行ってください。
- 一段下りるとき、支えている脚の側の骨盤が下がっていないか
- 体が横に大きく傾いていないか
- 支えている脚の膝は、どちらにそれているか
を観察します。
階段を下りる動きは、片脚しゃがみとよく似ています。
違うのは、下りる側の足が床に着くまで、支えている脚一本で体重を受け止め続ける時間があることです。
膝の痛みが強い方や、階段が怖い方は、無理に行う必要はありません。片脚しゃがみの観察だけで十分な情報が得られます。
足首・足裏・股関節をつなげて読む
前回のチェックと合わせると、足元から股関節まで、6つの記録がそろいます。
いくつか例を挙げてみます。
例1 股関節の情報が重なるタイプ
- チェック1:右の股関節の内側へのひねりが小さい
- チェック2:右脚で立つと、左の骨盤が下がる
- チェック3:右脚の片脚しゃがみで、膝が内側へそれる
- 前回の足首・足裏:左右差ははっきりしない
この場合、「右の股関節の動きが、右膝の動き方に関係しているかもしれない」という仮説が立ちます。
例2 足元と股関節が重なるタイプ
- 前回の足首:右が前に出にくく、かかとが浮きやすい
- チェック3:右脚の片脚しゃがみで、かかとが浮き、膝が内側へそれる
- お尻を後ろに引くと、少し楽になった
この場合、足首と股関節の両方が、右膝の動き方に関わっているかもしれないと考えられます。
例3 どれもつながらないタイプ
足首・足裏・股関節のどこにも、はっきりした左右差がない。
それでも膝が気になる。
この場合は、「止まった状態のチェックでは見えない、歩いているときの動き」を見てみる価値があります。
そして何度もお伝えしているとおり、これらは「原因の断定」ではなく、次に何を確かめるかの「仮説」です。
痛みには、動き方だけでなく、睡眠や疲れ、不安など、さまざまなことが関わっています。
記録のテンプレート
前回と同じテンプレートに、股関節の項目を足して使ってください。
日付・時間:
条件(場所・靴か裸足か・椅子):
チェックしたこと:
見えたこと:
感じたこと:
変えた条件(一つ):
結果(楽・同じ・悪化・分からない):
前回の足首・足裏と同じ側に特徴があったか:
週に2〜3回、1〜2週間ほど記録すると、「いつも同じ特徴」と「日によって変わる症状」が分かれて見えてきます。
1週間の記録から見えること
例えば、こんな記録が集まったとします。
月曜・朝:座ってのひねり、右の内側へのひねりが小さい。片脚立ちで左の骨盤が下がる。右膝は気にならない。
水曜・夜:右の内側へのひねりが小さい。片脚しゃがみで右膝が内側へそれる。右膝が少し気になる。
金曜・朝:右の内側へのひねりが小さい。お尻を後ろに引くと、片脚しゃがみの右膝が少し楽。
日曜・夜:右の内側へのひねりが小さい。片脚立ちは左右同じくらい。右膝は気にならない。
ここから見えてくるのは、
- 右の内側へのひねりが小さいのは、曜日や時間に関係なく、いつも同じ特徴
- 片脚立ちの骨盤の下がりは、日によって出たり出なかったりする
- お尻を後ろに引くと楽になったのは、一度だけの記録(まだ傾向とは言えない)
ということです。
いつも同じ特徴は、「その人の動き方のくせ」かもしれません。
日によって変わるものは、疲れや睡眠、その日の活動量の影響を受けている可能性があります。
この二つを分けて見られるようになると、「今日は膝の調子が悪い。でも股関節のくせはいつもと同じ」といった、落ち着いた見方ができるようになります。
結果をどう受け止める?
楽になった
何が楽になったか(痛み・動きやすさ・不安)を分けて書きます。その場の変化だけで「原因が分かった」と決める必要はありません。
同じ
そのまま「同じ」と書きます。その条件はあまり関係がないかもしれない、という大切な情報です。
悪くなった
その条件はやめて、元のやり方に戻します。確かめるために繰り返す必要はありません。
分からない
前の感覚を思い出せないときも、「分からない」と書けば十分です。
脳と股関節をつなぐ3ステップ・エクササイズ
こんな方に:チェックで股関節の左右差が見えた方。特に、1週間の記録で同じ側にいつも特徴が出る方
このエクササイズは、上で紹介した「脳が動きを予行演習する」しくみを使い、
見る・思い描く → ゆっくり感じながら動かす → 支える力をつける
の順に進めます。
始める前に:今の状態をメモする
- 椅子から2回立ち上がり、膝の気になり度(0〜10)
- チェック1の「座ってひねる」で、ひねりにくい側の動きやすさ(0〜10、10=とても動きやすい)
- チェック2の片脚立ちで、骨盤の下がりや体の傾き
ステップ1 見る・思い描く(1分)
1. 椅子に座り、動かしやすい側で、チェック1の「座ってひねる」をゆっくり3回行い、その動きをよく見て、感じます
2. 次に、ひねりにくい側は動かさずに、目を閉じて、同じ動きをしている自分を思い描きます
3. すねが振り子のように揺れる様子、太ももの付け根がくるっと回る感じまで、できるだけはっきり、5回思い描きます
ポイント:うまく思い描けなくても大丈夫です。「どこがぼんやりするか」も大切な情報です。
ステップ2 ゆっくり感じながら股関節を回す(1〜2分)
1. 骨盤を立てて座り直します(お尻の下の左右の骨に体重を乗せる)
2. ひねりにくい側で、すねを外側へ5秒かけてゆっくり振り、5秒かけて戻します
3. 次に、すねを内側へ5秒かけて振り、5秒かけて戻します
4. これを3往復。動きの最後で、お尻が浮いたり体が傾いたりしない範囲で行います
5. 慣れてきたら、目を閉じて、太ももの付け根が回る感じに注意を向けながら行います
ポイント:大きく動かすことより、痛みのない範囲で、ゆっくり、感じながら動かすことが大切です。脳に「この動きは安全だ」という情報を届けるイメージです。
ステップ3 横向きでの脚の上げ下げ(2〜3分)
こんな方に:チェック2の片脚立ちで、同じ側の骨盤がいつも下がる方
1. チェック2で骨盤が下がったときに、立っていた側の脚を上にして横向きに寝ます。下の脚は軽く曲げます
2. 上の脚の膝を伸ばし、つま先を正面に向けたまま、少し後ろ寄りにゆっくり上げます(床から20〜30cmほど)
3. 上げたところで2秒止め、お尻の横の筋肉が働いているのを感じます
4. 2秒かけてゆっくり下ろします
5. 10回を1セットとして2セット
レベルアップ:楽に20回できるようになったら、上げたところで5秒止めます
回数とタイミングの目安
- ステップ1と2は、1日1回(合わせて3分ほど)
- ステップ3は、週に3回ほどから
- 同じ時間帯(例えば、お風呂上がり)に行うと続けやすくなります
- 回数は目安です。痛みが強くならない範囲で調整してください
よくある間違い
- 速く、勢いで動かしてしまう(脳が動きを感じ取る時間がなくなります)
- ステップ3で、体ごと後ろに倒れたり、腰が反ったりする
- 痛みをがまんして、動きを大きくしようとする
前後で比べる
終わったら、「始める前に」と同じ3つを、もう一度確かめてメモします。
その場で変わった・変わらない、どちらも大切な記録です。1〜2週間続けて、変化の傾向を見てみましょう。
研究で分かっていること
- 変形性の膝や股関節の痛みがある方を対象にした19の研究(706名)をまとめた報告では、動きを思い描く・動きを見る練習を組み合わせると、痛み、動作、生活の困りごとが改善した。ただし、根拠の確かさは「非常に低い〜中程度」とされている(Alba-Quesada 2026)
- 膝の内側の変形性膝関節症の方89名の研究では、股関節まわりの筋力トレーニングを12週間続けたグループで、痛みと動作が改善した。ただし、歩くときの膝の内側への負担の指標は変わらなかった(Bennell 2010)
- 変形性膝関節症では、太ももの前の運動に股関節の運動を加えると、歩く能力はより改善したが、痛みにははっきりした差がなかった(Hislop 2020)
この3ステップの組み合わせそのものを確かめた研究はありません。研究で使われた方法の考え方を、家でできる形にした例として行ってみてください。
注意してほしいこと
足の付け根やお尻に痛みが出る、腰が反ってしまう場合は、その場でやめてください。
よくある質問
Q.股関節に左右差があったら、股関節を鍛えればいいですか?
股関節まわりの運動で、膝の痛みや動作が改善したという研究はあります。
ただ、どの運動がどの人に合うかは、まだ分かっていないことも多いです。
まずは記録で「同じ側にいつも特徴があるか」を確かめてください。
ためしてみたい方は、上の「脳と股関節をつなぐ3ステップ・エクササイズ」を、前後の比較とセットで行ってみてください。迷ったら専門家に相談してください。
Q.股関節が硬いと、膝が悪くなるのですか?
股関節の動きと膝の状態には「関連」があるという研究はありますが、「硬いから悪くなる」と決まったわけではありません。
硬さは、その人が動作をやりとげるための工夫の結果であることもあります。
Q.片脚立ちが5秒もできません。大丈夫でしょうか?
片脚立ちが難しいこと自体は、珍しいことではありません。
壁にしっかり手をついたまま、足を床から1cmだけ浮かせる、つま先だけ床に残す、といった形で十分です。
大切なのは、毎回同じやり方で行い、左右や日による違いを比べることです。
ふらつきが強く、普段から転びそうになることがある方は、チェックより先に専門家に相談してください。
Q.痛くない側の股関節も、毎回チェックした方がいいですか?
はい、ぜひ両側で行ってください。
左右を比べることで、初めて「違い」が見えてきます。
ただし、痛くない側が「正解」で、痛い側をそれにそろえる、という考え方はおすすめしません。もともと左右で違う動き方をしている人も多いからです。
Q.足の付け根も痛いのですが、チェックしてもいいですか?
足の付け根の痛みがはっきりある場合は、チェックより先に整形外科での診察をおすすめします。
股関節そのものの病気が隠れていることもあるからです。
チェックをしてみて「足首・足裏・股関節の記録を、どうつなげればいいか分からない」という方もいらっしゃると思います。
大分駅から歩いて15分ほどの当院(大分市金池町)では、足首・足裏・股関節の動きを一緒に確かめながら、膝のためにどこから見ていくかを整理しています。
1〜2週間記録をつけても同じ側の特徴が続く方、セルフケアをためしても変化が分からない方は、一度ご相談ください。
前回・今回の記録メモがあれば、ぜひお持ちください。
まとめ
今回は、膝が気になる方に向けて、股関節の動きを自分で確かめる3つのチェックを紹介しました。
チェック1 座ってひねる
すねを振り子のように振り、股関節の内側・外側へのひねりを左右で比べる。
チェック2 片脚立ち
骨盤の高さと体の傾きを見て、片脚で体重を支えるときの工夫に気づく。
チェック3 浅い片脚しゃがみ
動きの中で、股関節・膝・足がどう協力しているかを見る。
そして、前回の足首・足裏の記録と同じ側に特徴が重なるかを確かめることが、今回いちばん大切なポイントです。
次回予告
「見る順番」は、
足首 → 足裏 → 膝 → 股関節 → 歩行
でした。
次回はいよいよ最後の段階、
「膝が気になる人のための、歩き方を確かめる方法」
をお届けします。
足首・足裏・股関節で見えたことが、実際に歩いているときにどう現れているのかを、一緒に見ていきましょう。
ぜひ、次回のコラムも楽しみにしておいてくださいね(๑•̀ㅂ•́)و✧
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それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)
参考文献
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片脚立ちテスト・片脚しゃがみの評価
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Crossley KM, et al. Performance on the single-leg squat task indicates hip abductor muscle function. Am J Sports Med. 2011;39(4):866-873. PMID: 21335344
日本の参考可動域
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会・日本足の外科学会.関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂).


