カラダの側面の痛み、お尻の痛みを解消する「マッサージポイント」
こんにちは、GENRYUです(^^)
この記事の要点
・腰痛は、前かがみで強くなる人、反らすと強くなる人、どちらでもない人など、人によって「痛みが変わる方向」が違います。
・受診の目安を確かめたうえで、「困る場面」「3方向の動き」「くり返したときの変化」の3つを自分で確かめます。
・痛みが楽になる方向が見つかった方は、その方向の動きを一つだけためします。研究では、こうした方法で短期的に痛みが楽になる人が多いことが報告されています。
・画像で見つかる変化は、今の痛みの原因とは限りません。痛みは、脳が「守って」と出すサインでもあります。
・脳の中の「背中の地図」に注意を向ける、ご家族と一緒にできるエクササイズも紹介します。チェック2と3だけなら、3分ほどで始められます。
・脚のしびれや痛みが、足先の方へ広がる動きは、すぐにやめましょう。
「顔を洗おうと前かがみになると、腰がズキッとする」
「立ちっぱなしや、腰を反らすとつらい」
「どの動きが悪いのか、自分ではよく分からない」
そんなお悩みはありませんか?
これまで、膝が気になる方に向けたシリーズなどで、
評価 → 条件を一つ変える → もう一度評価
という確かめ方をお伝えしてきました。
今回は、その考え方を腰痛に当てはめてみます。
テーマは、
前かがみで痛いのか、反らすと痛いのかを、自分で確かめる方法
です。
始める前に:こんなときは医療機関へ
腰痛の多くは、重い病気が隠れていない「非特異的腰痛」と呼ばれるものです。
ただ、ごく一部に、すぐに医療機関で確かめたほうがよい腰痛があります。
各国の腰痛の診療ガイドラインでは、主にがん・骨折・感染・神経の強い圧迫(馬尾症候群)を見逃さないための目安が示されています(Verhagen 2016)。
次のような場合は、チェックをせずに医療機関を受診してください。
- 尿が出にくい・漏れる、便の感覚がおかしい、股のまわりがしびれる(すぐに受診を)
- 脚に力が入らない、つまずきやすいなど、脚の動きが急に悪くなってきた
- 転倒や事故のあとから痛い(特に高齢の方、骨粗しょう症のある方、ステロイドを長く使っている方)
- 発熱がある、原因のわからない体重減少がある
- がんの治療を受けたことがある
- 安静にしていても、夜も、強い痛みが続く
- 胸や背中の痛み、息苦しさを伴う
排尿や排便の変化と、股のまわりのしびれについては、以前のコラムで詳しく解説しています。
→「馬尾症候群」ってなに?を読む
当てはまるものがなければ、ここから先に進みましょう。
「腰のどこが悪いか」より「どの動きで変わるか」
腰痛があると、「腰のどこが悪いのか」を知りたくなりますよね。
ところが、腰の画像検査(MRIやCT)で見つかる変化は、痛みのない人にもたくさん見られます。
痛みのない人を調べた研究のまとめでは、椎間板の変性(すり減りなど)が、20歳で37%、80歳では96%の人に見られました(Brinjikji 2015)。
つまり、画像で見つかった変化が、必ずしも今の痛みの原因とは限らないのです。
これは「関連」と「原因」を分けて考える、とても良い例です。
そこで今回は、「どこが悪いか」を決めるのではなく、
「どの方向に動くと痛みが変わるか」
を確かめていきます。
「楽になる方向」がある人は多い
腰痛のある方の中には、ある方向の動きをくり返すと、痛みが楽になったり、動ける範囲が広がったりする方がいます。
これを専門的には「方向の好み(ディレクショナル・プリファレンス)」と呼びます。
腰痛のある方312名を調べた研究では、約74%の方に、この「楽になる方向」が見つかりました(Long 2004)。
そして、その方向に合った運動をした方は、反対の方向の運動や、方向を決めない運動をした方より、痛みや動作が大きく改善したと報告されています。
また、研究のまとめでは、くり返しの動きで脚の痛みが腰の方へ寄ってくる変化(センタリゼーション)が見られる方は、その後の経過が良い傾向があることも示されています(May 2012、May 2018)。
ただし、
- 「楽になる方向」が見つからない方も、4人に1人ほどいる
- 急性の腰痛では、この方法がほかのリハビリより優れているとまでは言えない(Lam 2018)
- 専門家が評価しても、結果が人によってぶれることがある
ことも分かっています。
だからこそ、自分の体で、条件を変えながら確かめることに意味があります。
急な腰痛と、長く続く腰痛
腰痛は、続いている期間によって、大きく2つに分けて考えられます。
- 急な腰痛:痛み始めてから数週間以内のもの。多くは時間とともに軽くなっていきます
- 長く続く腰痛(慢性腰痛):3か月以上続いているもの
どちらの場合でも、今回のチェックは使えます。
ただ、急な腰痛では、無理に方向を探すより、痛みが強くならない範囲で普段の生活を続けることが、まず大切です。
長く続く腰痛では、「楽になる方向」を手がかりに、少しずつ動ける範囲を広げていくことが、より大切になります。
脳から見た腰痛
画像の変化が、必ずしも痛みの原因とは限らない。
では、痛みはどこから来ているのでしょうか。
ここで役立つのが、脳の研究です。腰痛のシリーズを始めるにあたって、大切な考え方を3つ紹介します。
1. 痛みは、脳が出す「守って」のサイン
痛みの研究では、痛みは「体が壊れている量」をそのまま表すものではなく、脳が「この部分を守る必要がある」と判断したときに出すサインと考えられています(Moseley & Butler 2015)。
これは、「痛みは気のせい」という意味ではありません。
腰からの信号も、脳が判断するための大切な材料です。
ただ、その判断には、これまでの経験や不安、その日の疲れなど、さまざまな情報が合わさっていると考えられています。
画像の変化と痛みの強さが一致しないことがあるのも、こう考えると理解しやすくなります。
2. 脳の中の「背中の地図」がぼやけることがある
脳の中には、体のどこに何があるかを表す「地図」のようなものがあります。
長く続く痛みのある方を調べた16の研究をまとめた報告では、皮膚に触れた2つの点を「2点」として感じ分ける力(触覚の鋭さ)が、慢性腰痛の方では低下していたことが示されています(Catley 2014)。
脳の中の「背中の地図」が、少しぼやけている可能性が考えられています。
ただし、
- これは「関連」で、地図がぼやけたから痛くなったのか、痛みが続いた結果なのかは分からない
- まとめられた研究には偏りのリスクが高いものが多く、結果に一貫しない部分もある
ことも分かっています。
3. 脳に「安全」を教え直す研究
慢性腰痛の方276名を対象にした研究では、痛みのしくみを学ぶ教育と、背中の感覚や動きを段階的に練習するトレーニングを組み合わせました(Bagg 2022)。
12週間、通院と自宅での練習を続けたグループは、偽の治療のグループより、18週の時点で痛みが0〜10の目盛りで平均1.0点多く下がりました。
ただし、改善の幅は小さく、一つの施設で行われた研究です。
「脳に働きかければ腰痛が消える」というものではなく、痛みと上手に付き合うための、一つの手がかりと考えてください。
今回の4つのルール
膝のシリーズと同じ、4つのルールで進めます。
- 「感じたこと」と「原因」を分けて書く
- 条件も一緒に書く(朝か夜か、何をした後か)
- 変えるなら一つだけ
- 結果は「楽になった・同じ・悪くなった・分からない」のどれかで残す
そして、腰痛ならではの、もう一つの大切なルールがあります。
脚のしびれや痛みが、足先の方へ広がる動きは、すぐにやめる
反対に、脚の痛みが腰の方へ寄ってくる、腰だけの痛みになってくる変化は、良いサインのことが多いです。
まずは今日、3分だけ:チェック2と3で3分ほど
全部のチェックをする時間がない方は、これだけでも大丈夫です。
1. チェック2の3方向に1回ずつ動き、いちばん痛む方向の痛みを0〜10でメモします
2. いちばん楽だった方向を一つだけ選び、ゆっくり5回くり返します(チェック3)
3. いちばん痛んだ方向にもう一度動き、0〜10でメモします
→ 数字が変わっても、変わらなくても、それが今日の大切な記録です。脚のしびれや痛みが足先へ広がるときは、その場でやめてください。
チェック1 困る場面を、方向で分ける
まずは、体を動かさずにできるチェックです。
普段の生活で腰がつらくなる場面を思い出して、次の3つのどれに近いかを書き出してみてください。
前かがみ系
顔を洗う、靴下をはく、床の物を拾う、長く座る、車の乗り降り
反らす系
長く立つ、歩き続ける、高い所の物を取る、うつ伏せで寝る
横・ひねり系
寝返り、振り向く、片側に荷物を持つ
記入の例
朝の洗顔と、靴下をはくときに腰がつらい。座りっぱなしの後の立ち上がりもつらい。歩いているときは比較的楽。→前かがみ系が多い。
見えてくること
前かがみ系の場面が多い方は、前かがみの方向で痛みが強くなりやすく、反らす方向が楽な可能性があります。
反らす系の場面が多い方は、その反対の可能性があります。
もちろん、これは「次に何を確かめるか」のヒントです。実際にはチェック2・3で確かめます。
チェック2 3つの方向に、1回ずつ動いてみる
やり方
足を肩幅に開いて立ち、壁や机のそばで行います。
まず、今の腰の痛みを0〜10でメモします(0が痛みなし、10が想像できる最大の痛み)。
1. 前かがみ:膝を伸ばしたまま、ゆっくり前にかがみます(手が太ももの前をすべるように)。痛みが出る手前で止めて、ゆっくり戻ります
2. 反らす:両手を腰に当て、ゆっくり後ろに反らします。痛みが出る手前で止めて戻ります
3. 横に倒す:片手を太ももの横にすべらせるように、ゆっくり横に倒します。左右とも行います
それぞれ1回だけ、ゆっくり行います。
見るポイント
- どの方向で痛みが出るか、強くなるか
- 痛みの場所は、腰の真ん中か、片側か、お尻や脚まで出るか
- どの方向が、いちばん動きにくいか
- 左右に倒したとき、差があるか
記録の例
朝・起きて1時間後。動く前の痛み4/10。前かがみ:膝の上までで腰の右側が6/10。反らす:少し動きにくいが痛みは4/10のまま。横:右に倒すと右腰が5/10、左は4/10。
チェック3 楽そうな方向を、くり返してみる
チェック2で、痛みが強くならなかった方向(または、いちばん楽だった方向)を一つ選びます。
ここが、今回いちばん大切なチェックです。
やり方
反らす方向を選んだ場合の例
1. 立ったまま、両手を腰に当てます
2. ゆっくり後ろに反らし、すぐに戻します
3. これを5〜10回、ゆっくりくり返します
4. 少し休んでから、チェック2の3方向をもう一度行い、痛みと動きやすさを比べます
前かがみ方向を選んだ場合の例
1. 椅子に座り、足を開きます
2. 両手を床の方へ下ろすように、ゆっくり前にかがみ、すぐに起き上がります
3. これを5〜10回くり返します
4. 立ち上がって、チェック2の3方向をもう一度行います
横方向を選んだ場合の例
楽だった側に、ゆっくり5〜10回倒してから、チェック2をもう一度行います。
結果の読み方
くり返したあと、ほかの方向の痛みが減った・動きやすくなった
→ その方向が、あなたにとっての「楽になる方向」かもしれません。
脚の痛みやしびれが、腰の方へ寄ってきた
→ 良いサインのことが多いです(センタリゼーション)。
くり返しても、変わらない
→ 別の方向をためしてみるか、今は「楽になる方向」がはっきりしないのかもしれません。それも大切な結果です。
くり返すほど痛みが強くなる・脚の方へ広がる
→ すぐにやめて、その方向は避けます。続く場合は専門家に相談しましょう。
痛みの強さ以外にも見てほしいこと
結果を見るときは、痛みの数字だけでなく、次のことにも目を向けてみてください。
- 動ける範囲:前かがみで、手がどこまで届くようになったか
- 痛みの場所:お尻や脚の痛みが、腰の方へ寄ってきたか
- 不安:動くことへの怖さが、少し減ったか
痛みの数字が同じでも、動ける範囲が広がった、痛む場所が腰に寄ってきた、という変化は、大切な前進のサインです。
一つだけ変えてもう一度
結果がはっきりしなかった方は、時間帯だけを変えて、もう一度ためしてみてください。
例えば、朝にためした方は夕方に、夕方にためした方は朝に。
腰痛は、朝と夕方で感じ方が大きく違うことが多いからです。
結果に合わせたセルフケア
チェックの結果をふまえて、次の中から一つだけ選び、1〜2週間ためしてみてください。
「楽になる方向」が見つかった方
その方向の動きを、1日に数回、1回5〜10回を目安に続けます。
例えば、前かがみ系の場面でつらく、反らす方向が楽だった方は、
- 朝の洗顔の前に、立って反らす動きを5回
- デスクワークの合間(30分〜1時間ごと)に、立って反らす動きを5回
のように、つらい場面の前後に取り入れるのがおすすめです。
研究のまとめでは、「楽になる方向」に合わせた運動は、短期〜中期の痛みや動作の改善に役立つという中程度の根拠があるとされています(Surkitt 2012)。
ただし、長い目で見て、ほかの運動より優れているかどうかは、研究によって結果が分かれています。
「楽になる方向」がはっきりしない方
痛みが強くならない範囲で、歩くなど普段の活動を続けることを優先します。
急な腰痛の方を対象にした研究のまとめでは、「安静にする」より「できる範囲で動く」ように勧めた方が、痛みや動作がわずかに良かったと報告されています(Dahm 2010)。
また、3か月以上続く慢性の腰痛では、運動によって痛みが0〜100の目盛りで平均約15ポイント下がったと報告されています(Hayden 2021)。
どの運動がいちばん良いかは、まだはっきりしていません。
歩く、体操をする、ストレッチをするなど、無理なく続けられるものを一つ選びましょう。
どちらの方にも共通すること
- つらい姿勢を長く続けない(同じ姿勢は30分〜1時間を目安に区切る)
- くり返すほど痛みが強くなる・脚に広がる動きはやめる
- 1〜2週間ためして、チェック2・3をもう一度行い、変化を比べる
脳と腰をつなぐ「背中の地図」エクササイズ
チェックで「楽になる方向」が見えてきたら、次は、脳の中の「背中の地図」に注意を向ける練習をしてみましょう。
こんな方に:3か月以上、腰痛が続いている方。動くことに不安がある方
急な腰痛の直後の方は、まずは普段の生活を続けることを優先し、痛みが落ち着いてからためしてください。
「楽になる方向」の動きを選んだ方は、それをステップ3として、この形で行ってもかまいません(選ぶセルフケアは一つのままです)。
始める前に:今の状態をメモする
- 今の腰の痛み(0〜10)
- チェック2の前かがみを1回したときの痛み(0〜10)
- 壁にもたれたとき、背中が触れている感じがどのくらいはっきりしているか(0〜10、10=とてもはっきり)
ステップ1 背中の感覚に注意を向ける(1分)
1. 壁にお尻と背中をあずけて立ちます。かかとは壁から少し離します
2. 背中のどこが壁に触れているかを、上から順に感じます(肩甲骨、背中の真ん中、腰、お尻)
3. 左右で、触れている感じに違いがあるかを感じます
4. ゆっくり3回呼吸し、息を吐くときに背中の力を抜いて、触れ方が変わるかを感じます
目を閉じると感じやすくなりますが、ふらつきが心配な方は、目を開けたままで大丈夫です。
ポイント:「はっきり分かる場所」と「ぼんやりする場所」を見つけることが目的です。ぼんやりする場所も、大切な情報です。
ステップ2 ご家族に、背中を触ってもらう(2〜3分)
1. 椅子に座り、少しだけ前かがみになります(痛みが出ない姿勢で)
2. ご家族に、腰のあたりの4か所(背骨をはさんで左右、上と下)を決めてもらい、1〜4の番号をつけます
3. ご家族は、その中の1か所を、指先で軽く触れます
4. 触れられた方は、目を閉じて、何番だったかを答えます
5. これを10回ほどくり返します
ポイント:当たり外れより、背中に注意を向けることが目的です。答えるたびに、脳が背中の地図を確かめ直すイメージです。
ご家族や身近な方と一緒にできる練習です。腰痛のある方が周りにいれば、このコラムを見せて、お互いに試してみるのもよいでしょう。
一人の場合は、ステップ1と3だけで十分です。
ステップ3 「楽になる方向」に、感じながら動く(1〜2分)
1. チェック3で見つけた「楽になる方向」の動きを選びます
2. 1回に3〜5秒ほどかけて、ゆっくり動き、ゆっくり戻ります
3. 動いている間は、腰のどのあたりが動いているかに注意を向けます
4. これを5回くり返します
「楽になる方向」がはっきりしない方は、仰向けで膝を立てて、左右にゆっくり倒す動きで行ってみてください。
ポイント:痛みの出ない範囲で、ゆっくり、感じながら動く経験を重ねることは、脳に「この動きは安全だ」という情報を届けることになります。
回数とタイミングの目安
- ステップ1と3は、1日1回(合わせて3分ほど)
- ステップ2は、ご家族の都合のよい日に、週2〜3回ほど
- 1〜2週間ためして、チェック2・3をもう一度行い、変化を比べる
- 回数は目安です。痛みが強くならない範囲で調整してください
よくある間違い
- ステップ2で、当たったか外れたかに一喜一憂する
- 強く押したり、くすぐるように触れたりする
- ステップ3で、速く、勢いで動いてしまう(脳が動きを感じ取る時間がなくなります)
- 痛みをがまんして、動きを大きくしようとする
前後で比べる
終わったら、「始める前に」と同じ3つを、もう一度0〜10でメモします。
その場で変わった・変わらない、どちらも大切な記録です。
研究で分かっていること
- 慢性腰痛の方では、背中の触覚の鋭さが低下していることが、研究のまとめで示されている。ただし、研究の質には限界がある(Catley 2014)
- 痛みの教育と段階的な感覚運動トレーニングで、痛みが小さく改善した。ただし、12週間の通院を含むプログラムで、家での練習だけで同じ結果になるとは限らない(Bagg 2022)
- 慢性腰痛の方15名の予備的な研究では、家族などの協力で家でも触覚のトレーニングを行ったが、偽のトレーニングをしたグループとの間に、はっきりした差はなかった(Ryan 2014)
つまり、ステップ2の「背中を触ってもらう練習」だけで、痛みが楽になることは確かめられていません。
ここでは、「背中の地図」に注意を向ける練習の一つとして取り入れています。
この3ステップの組み合わせそのものを確かめた研究はありません。研究で使われた方法の考え方を、家でできる形にした例として行ってみてください。
注意してほしいこと
脚のしびれや痛みが足先の方へ広がる、腰の痛みがはっきり強くなる場合は、その場でやめてください。
生活の中でできる、方向別の工夫
運動とは別に、つらくなりやすい方向を、生活の中で少しだけ減らす工夫もできます。
ここでも「変えるなら一つだけ」です。
前かがみ系の場面がつらい方
- 洗顔のときは、膝を軽く曲げ、片手を洗面台について体を支える
- 靴下は、立ったままではなく、椅子に座ってはく
- 床の物を拾うときは、腰だけで曲げず、膝を曲げてしゃがむ
- 長く座るときは、30分〜1時間ごとに立ち上がる
反らす系の場面がつらい方
- 長く立つときは、低い台に片足をのせ、ときどき足を入れ替える
- 高い所の物を取るときは、踏み台を使って腰を反らさずに取る
- 長く歩くときは、ときどき立ち止まって休む
横・ひねり系の場面がつらい方
- 寝返りは、膝を立てて、体を一つのかたまりのように回す
- 振り向くときは、首や腰だけでなく、足の向きごと変える
- 荷物は、左右に分けて持つか、交互に持ち替える
工夫を一つ取り入れたら、1週間後にチェック1の「困る場面」がどう変わったかを書いてみてください。
1週間の記録から見えること
例えば、こんな記録が集まったとします。
月曜・朝:前かがみで右腰6/10。反らす5回の後、前かがみが4/10に。
水曜・夜:前かがみで右腰4/10。反らす5回の後、3/10。
金曜・朝:前かがみで右腰5/10。反らす5回の後、4/10。右お尻の重さが腰の方に寄った感じ。
日曜・夜:前かがみで右腰3/10。反らす5回の後も3/10。
ここから見えてくるのは、
- 反らす動きの後に前かがみが楽になるのは、4回中3回(いつも同じ特徴に近い)
- 朝は夜より、痛みが強くなりやすい
- お尻の重さが腰の方へ寄ったのは、一度だけの記録
ということです。
この場合、「反らす方向が楽になる方向かもしれない」という仮説のもとで、朝の洗顔前に反らす動きを取り入れる、という次の一歩が考えられます。
結果をどう受け止める?
楽になった
何が楽になったか(痛み・動きやすさ・不安)を分けて書きます。続けるかどうかは、生活に無理なく続けられるかも含めて考えます。
同じ
選んだ方向や運動は、今の腰にはあまり関係がなかったのかもしれません。別の方向や、別の運動をためしてみましょう。
悪くなった
その動きはやめて、元に戻します。脚へのしびれや痛みが広がった場合や、痛みが続く場合は、専門家に相談しましょう。
分からない
朝と夕方で結果が違う、などの場合は、時間帯を決めて記録を続けてみてください。
記録のテンプレート
日付・時間:
条件(起きてから何時間か、何をした後か):
困る場面(前かがみ系・反らす系・横系):
動く前の痛み(0〜10):
チェック2(前かがみ・反らす・横の痛みと場所):
チェック3(くり返した方向と回数):
くり返した後のチェック2(痛みと場所):
脚の症状は、腰の方へ寄ったか・足先へ広がったか:
背中の地図エクササイズの前→後(痛み・背中の感じ方、0〜10):
結果(楽・同じ・悪化・分からない):
記録を持って相談するときのコツ
病院やリハビリ、整体などで相談するときは、次の3つを一枚にまとめておくと、話がぐっと具体的になります。
- いちばん困っている場面(例:朝の洗顔、座りっぱなしの後の立ち上がり)
- 痛みが強くなる方向と、楽になる方向(例:前かがみで強くなり、反らす5回の後は楽になる)
- ためしたことと結果(例:反らす動きを1日3回、2週間。前かがみの痛みが6から4に)
「腰が痛い」だけでなく、「この方向で強くなり、この方向で楽になる」と伝えられると、相談を受ける側も、次に何を確かめればよいかを考えやすくなります。
よくある質問
Q.前かがみも反らすのも、どちらも痛いです
よくあることです。
その場合は、横に倒す方向をためしてみるか、痛みがいちばん小さかった方向を、回数を少なめ(3〜5回)にしてためしてみてください。
どの方向でも強くなる場合は、今は無理に方向を探さず、できる範囲で普段の活動を続けることを優先しましょう。
Q.「楽になる方向」の動きは、ずっと続けた方がいいですか?
痛みが落ち着いてきたら、少しずつ回数を減らし、いろいろな方向に動けるようにしていくのが理想です。
ずっと一つの方向だけを続ける必要はありません。
1〜2週間ごとにチェック2をやり直して、ほかの方向も楽に動けるようになっているかを確かめてみてください。
Q.朝がいちばんつらく、昼には楽になります
腰痛のある方には、よくあるパターンです。
朝はチェック2の結果が出にくいこともあるので、同じ時間帯どうしで比べることが大切です。
朝につらい方は、起き上がる前に、布団の中で膝を立てて左右にゆっくり倒す、など、楽な方向の小さな動きから始めてみるのも一つです。
Q.寝るときは、どんな姿勢がいいですか?
誰にとっても正しい寝方が一つあるわけではありません。
仰向けで膝の下にクッションを入れると楽な方もいれば、横向きで膝の間にクッションをはさむと楽な方もいます。
これも「変えるなら一つだけ」で、一晩ずつためして、朝の痛みを記録してみてください。
Q.ぎっくり腰のときも、このチェックをしていいですか?
急に強い痛みが出た直後は、無理に動いて確かめる必要はありません。
まずは受診の目安を確かめ、楽な姿勢で過ごしながら、少しずつ動ける範囲を広げていきましょう。
チェック1(困る場面を書き出す)だけなら、すぐにできます。
Q.病院で「椎間板がすり減っている」と言われました。動いても大丈夫ですか?
先ほどお伝えしたように、椎間板の変化は、痛みのない人にもたくさん見られます。
画像の変化があることと、動いてはいけないことは、同じではありません。
痛みは、脳が「守る必要がある」と判断したときに出すサインでもあります。痛みの出ない範囲で動く経験を重ねることも、大切な一歩です。
ただし、担当の先生から運動の制限を受けている場合は、その指示を優先してください。
チェックをしてみて「楽になる方向がよく分からない」「どの動きをためせばいいか迷う」という方もいらっしゃると思います。
受診の目安に当てはまる方は、まず整形外科などの医療機関を受診してください。
当てはまらず、困っている場面や体の動きを整理したい方は、大分駅から歩いて15分ほどの当院(大分市金池町)でも、前かがみ・反らす・横の動きを一緒に確かめながら、どこから見ていくかを整理しています。
1〜2週間ためしても変化が分からない方は、一度ご相談ください。
記録したメモがあれば、ぜひお持ちください。
まとめ
今回は、腰痛のある方に向けて、前かがみで痛いのか、反らすと痛いのかを自分で確かめる方法を紹介しました。
- まず受診の目安を確かめる(特に、排尿・排便の変化と股のしびれ)
- 画像の変化は、痛みの原因とは限らない。痛みは、脳が出す「守って」のサイン
- チェック1:困る場面を、前かがみ系・反らす系・横系に分ける
- チェック2:3つの方向に1回ずつ動き、痛みの変化を比べる
- チェック3:楽そうな方向を5〜10回くり返し、もう一度チェック2で比べる
- 楽になる方向が見つかったら、その動きを一つだけ取り入れる
- 「背中の地図」エクササイズで、背中に注意を向けながら、楽な方向にゆっくり動く
- 脚のしびれや痛みが足先へ広がる動きは、すぐにやめる
「腰のどこが悪いのか分からない」から、「この方向に動くと楽になる」と自分で言えるようになること。
それが、腰痛と上手に付き合っていく第一歩です。
次回予告
次回は、今回の続きとして、
「楽になる方向の運動を、毎日の生活に取り入れるコツ」
をお届けします。
あわせて、腰まわりのストレッチやマッサージなどのセルフケアも、研究で分かっていることと限界を添えて紹介する予定です。
ぜひ、次回のコラムも楽しみにしておいてくださいね(๑•̀ㅂ•́)و✧
あわせて読みたいコラム
排尿・排便の変化や、股のまわりのしびれが気になる方へ
「馬尾症候群」ってなに?知らないと危険!その症状と隠れた原因を徹底解説
「評価→条件を一つ変える→再評価」の考え方を詳しく知りたい方へ
膝が気になる方のセルフチェック総まとめ|記録の見返し方と、次の一歩の選び方
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)
参考文献
腰痛の受診の目安(レッドフラッグ)
Verhagen AP, et al. Red flags presented in current low back pain guidelines: a review. Eur Spine J. 2016;25(9):2788-2802. PMID: 27376890
痛みのない人の画像所見
Brinjikji W, et al. Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(4):811-816. PMID: 25430861
方向の好み(ディレクショナル・プリファレンス)とセンタリゼーション
Long A, Donelson R, Fung T. Does it matter which exercise? A randomized control trial of exercise for low back pain. Spine. 2004;29(23):2593-2602. PMID: 15564907
May S, Aina A. Centralization and directional preference: a systematic review. Man Ther. 2012;17(6):497-506. PMID: 22695365
May S, Runge N, Aina A. Centralization and directional preference: An updated systematic review with synthesis of previous evidence. Musculoskelet Sci Pract. 2018;38:53-62. PMID: 30273918
Surkitt LD, et al. Efficacy of directional preference management for low back pain: a systematic review. Phys Ther. 2012;92(5):652-665. PMID: 22247407
Lam OT, et al. Effectiveness of the McKenzie Method of Mechanical Diagnosis and Therapy for Treating Low Back Pain: Literature Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2018;48(6):476-490. PMID: 29602304
痛みと脳の研究
Moseley GL, Butler DS. Fifteen Years of Explaining Pain: The Past, Present, and Future. J Pain. 2015;16(9):807-813. PMID: 26051220
Catley MJ, et al. Is tactile acuity altered in people with chronic pain? a systematic review and meta-analysis. J Pain. 2014;15(10):985-1000. PMID: 24983492
Bagg MK, et al. Effect of Graded Sensorimotor Retraining on Pain Intensity in Patients With Chronic Low Back Pain: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2022;328(5):430-439. PMID: 35916848
Ryan C, et al. Tactile acuity training for patients with chronic low back pain: a pilot randomised controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2014;15:59. PMID: 24571855
安静と活動、運動療法
Dahm KT, et al. Advice to rest in bed versus advice to stay active for acute low-back pain and sciatica. Cochrane Database Syst Rev. 2010;(6):CD007612. PMID: 20556780
Hayden JA, et al. Exercise therapy for chronic low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2021;9:CD009790. PMID: 34580864


