あなたの足の指、地面についてますか?足の指と腰痛の関係
この記事の要点
・馬尾症候群は、腰の神経の束(馬尾)が強く圧迫されて起こる、まれですが緊急の対応が必要な状態です。
・尿や便の出方の変化、お尻や股まわりのしびれ(サドル型の感覚低下)、両脚のしびれや力の入りにくさがサインです。
・これらがある場合は、様子を見ずに、その日のうちに(夜間・休日でも)救急外来や整形外科を受診してください。
「両足がビリビリしびれる」「お尻の感覚がおかしい」
「トイレのトラブルが気になる」…
こんな症状、ただの腰痛や疲れだと思って見過ごしていませんか?
実は、これらは「馬尾症候群(Cauda Equina Syndrome, CES)」
という重大な神経疾患のサインかもしれません。
この疾患、知らないと日常生活に大きな影響を及ぼすこともあるんです。
今回は、2025年に発表された、各国の診療ガイドラインをまとめた論文(European Spine Journal)などをもとに、
・馬尾症候群がどんな症状を引き起こすのか?
・なぜそんな状態になるのか?
そのメカニズムを徹底的に解説します。
腰痛やしびれに悩むあなた、必見の情報です!
さあ、馬尾症候群の謎を一緒に解き明かしましょう!
馬尾症候群とは?その基本を押さえましょう
馬尾症候群は、脊髄の末端にある「馬尾神経」(腰仙部神経根)が
圧迫や損傷を受けることで起こる神経疾患です。
馬尾神経は、馬のしっぽのような形からその名がつきました。
この神経の束は、下肢の運動や感覚、膀胱・腸の機能、
性機能をコントロールする重要な役割を担っています。
馬尾神経が何らかの原因で圧迫されると、これらの機能に異常が現れ、
さまざまな症状が引き起こされます。
2025年の研究(Hennessy et al., 2025)では、馬尾症候群が疑われる場合は、急いでMRI検査を行うべきだという点で、各国のガイドラインが一致していました。
それだけ、早く気づいて早く受診することが大切な状態なのです。
では、具体的にどんな症状が現れるのか、どんなメカニズムで起こるのか、
詳しく見ていきましょう!
馬尾症候群の症状...どんなサインに気づくべき?
馬尾症候群の症状は、馬尾神経が圧迫されることで神経信号が乱れ、
さまざまな機能が障害されることから生まれます。
以下は、代表的な症状(いわゆる「レッドフラッグ」)で、
2025年の論文(Hennessy et al., 2025)や他の医学研究
(MSDマニュアル, 2023 など)に
基づいてまとめました。
これらのサインに気づいたら、様子を見ずに、その日のうちに救急外来や整形外科を受診してください。
1. 両側坐骨神経痛
「どんな症状?」
両方の足やお尻に広がる痛み、しびれ、ピリピリ感。
片側だけの坐骨神経痛は一般的ですが、
両側に同時に現れるのは馬尾症候群の大きな特徴です。
たとえば、太ももの裏やふくらはぎに電気が走るような感覚や、
焼けるような痛みを感じることがあります。
例:長時間座っていると両足がしびれ、歩くとさらにひどくなる。
「ポイント」
各国のガイドラインをまとめた研究では、9本中8本が、坐骨神経痛(お尻から脚への痛み)を、受診を急ぐべきサインに含めていました(Hennessy et al., 2025)。
「両足が同時に変」な感覚は、通常の腰痛とは一線を画します。
2. サドル型感覚脱失
「どんな症状?」
会陰部(お尻、股、性器周辺)の感覚がなくなる、または鈍くなる状態。
座ったときに「何かおかしい」「いつもと違う」と感じるのが典型的で、
この領域が馬の鞍のような形に広がるため「サドル型」と呼ばれます。
例:トイレで拭くときに感覚が鈍い、座るとお尻がピンとこない。
「ポイント」
サドル型感覚脱失は、馬尾症候群の強い警告サイン。
各国のガイドラインでは、このお尻・股まわりの感覚の変化が、すべてで受診を急ぐべきサインに挙げられています(Hennessy et al., 2025)。
3. 膀胱・腸機能障害
「どんな症状?」
尿が出にくい、または全く出ない(尿閉)。
尿が漏れる(尿失禁)、特に我慢できずに漏れる。
便が出にくい、または漏れる(便失禁)、便秘がひどくなる。
排尿や排便の「感覚」がいつもと異なる。
例:トイレに行きたいのに尿が出ず、気づいたら漏れている。
「ポイント」
各国のガイドラインでは、排尿・排便の変化も、すべてで受診を急ぐべきサインに挙げられています(Hennessy et al., 2025)。
この症状は、特に注意が必要なレッドフラッグです。
4. 性機能障害
「どんな症状?」
男性では勃起不全、女性では性交時の感覚低下、または性的反応の異常。
突然、性機能に変化が現れるのが特徴。
例:これまで問題なかったのに、性器の感覚が鈍くなる。
「ポイント」
性機能障害は患者さんが話しにくい症状ですが、
馬尾症候群の診断において重要な手がかり。
MSDマニュアル, 2023によると、仙骨神経根の障害を反映します。
5. 下肢の神経障害
「どんな症状? 」
両側の足やふくらはぎの筋力低下(例:歩くのがつらい、つまずく、階段が上りにくい)。
感覚障害(例:足に触れても感じにくい、温度や痛みがわかりにくい)。
反射の減弱(例:踵腱反射や膝蓋腱反射が弱まる、または消失)。
例:足に力が入らず、靴が脱げやすい、足裏の感覚がぼんやりする。
「ポイント」
新しく出てきた脚の力の入りにくさも、多くのガイドラインで受診を急ぐべきサインに含まれています(Hennessy et al., 2025)。
片側ではなく両側に影響が出るのが特徴です。
6. スキャンネガティブCES:見逃されやすいケース
「どんな症状?」
上記の症状(特に軽度の坐骨神経痛や感覚異常)が現れるが、
MRIで明らかな圧迫が見られないケース。
馬尾症候群が疑われた276名を調べた研究では、MRIで馬尾の圧迫がはっきり確認されたのは78名で、残りの約7割はこの「スキャンネガティブ」でした(Hoeritzauer et al., 2018)。
「特徴」
部分的な神経根圧迫(MRIで検出困難)。
機能性神経障害(ストレスや精神的な要因による症状)。
慢性疼痛や他の疾患(例:線維筋痛症)との併存。
「ポイント」
スキャンネガティブCESは、症状が馬尾症候群に似ていても
原因が異なるため、診断が難しい。
この研究では、スキャンネガティブの方に、機能性神経障害(検査で異常が見つからない神経の症状)などを併せ持つ方の割合が高かったと報告されています(Hoeritzauer et al., 2018)。
ただし、MRIで確かめるまでは区別できないため、サインがあれば受診が必要です。
「注意」
これらの症状は単独では他の疾患(例:坐骨神経痛、脊柱管狭窄症)と
似ている場合がありますが、複数のレッドフラッグが同時に現れると、
馬尾症候群の可能性が高まります。
「いつもと違う」と感じたら、すぐに医療機関を受診してください。
馬尾症候群が起こるメカニズム:なぜ神経が障害される?
馬尾症候群は、馬尾神経が物理的に圧迫されたり、
血流が障害されたりすることで発症します。
そのメカニズムを、最新の研究
(MSDマニュアル, 2023 など)に
基づいてわかりやすく解説します。
1. 馬尾神経の構造と役割
馬尾神経とは?
脊髄は胸椎レベル(T12~L1)で終わり、その下に馬尾神経(L1~S5の神経根)が
束になって存在します。
馬尾神経は、硬膜に囲まれ、脳脊髄液(CSF)の中で浮遊しながら、
以下の機能を担います
①腰部神経根(L1~L5)
下肢の運動(歩行、足の上げ下げ)、感覚(触覚、痛覚、温度)。
②仙骨神経根(S1~S5)
会陰部の感覚、膀胱・直腸の括約筋、性機能。
「特徴」
馬尾神経は脊髄に比べて柔軟ですが、脊柱管(背骨のトンネル)が狭くなると
圧迫を受けやすくなります。圧迫されると、神経信号が乱れ、症状が現れます。
2. 主な圧迫の原因とメカニズム
馬尾症候群は、さまざまな要因で馬尾神経が圧迫されることで起こります。
以下は、主な原因とそのメカニズムになります。
①腰椎椎間板ヘルニア(原因として最も多いとされています)
「メカニズム」
椎間板(背骨のクッション)が破れ、髄核が飛び出して
脊柱管内で馬尾神経を圧迫。
特に、大型ヘルニア(中央型または側方型)が複数の神経根を圧迫し、
両側坐骨神経痛や膀胱障害を引き起こす。
「例」
L4/L5やL5/S1のヘルニアが馬尾神経を押しつぶし、
信号伝達を阻害します。
「脊柱管狭窄症」
メカニズム:加齢や変形性脊椎症により、脊柱管が狭くなり、
馬尾神経が慢性的に圧迫。
急性増悪(例:ヘルニアや外傷の併発)で症状が顕著に。
「例」
高齢者で腰痛が悪化し、両足のしびれや
排尿トラブルが現れる(MSDマニュアル, 2023)。
②腫瘍
「メカニズム」
脊髄腫瘍(例:髄膜腫、神経鞘腫)や転移性腫瘍が脊柱管内で馬尾神経を圧迫。
腫瘍の成長により、徐々に神経が締め付けられる。
「例」
がん患者で突然の膀胱障害やサドル型感覚脱失が現れる。
③外傷
「メカニズム」
脊椎骨折や脱臼により、骨片やずれた背骨が馬尾神経を圧迫。
急激な圧迫で症状が急速に進行。
「例」
交通事故や転落で腰椎を損傷し、両足の感覚が失われる。
④硬膜外膿瘍や血腫
「メカニズム」
感染症や血液凝固異常により、脊柱管内に膿や血の塊がたまり、馬尾神経を圧迫。
急速な進行が特徴。
「例」
発熱や腰痛が悪化し、突然の排尿障害が現れる。
⑤その他
術後合併症(例:脊椎手術後の血腫)。
先天性異常(例:脊柱管の狭小化)。
炎症性疾患(例:強直性脊椎炎)。
3. 圧迫による神経障害のメカニズム
①神経信号の遮断
馬尾神経が圧迫されると、神経細胞(ニューロン)を通る電気信号が乱れる。
これにより、運動(筋力)、感覚(触覚)、自律神経(膀胱・腸)の機能が障害される。
②血流障害
圧迫により神経への血流が減少し、酸素や栄養が不足(虚血)。
これが神経細胞の損傷を悪化させ、症状を進行させる(MSDマニュアル, 2023)。
③炎症反応
圧迫部位で炎症が起こり、腫れや神経の過敏性が加わる。
炎症性サイトカインが神経をさらに刺激し、痛みやしびれを増強。
④スキャンネガティブCESのメカニズム
論文によると、スキャンネガティブCESでは、軽度の圧迫(MRIで検出困難)、
機能性神経障害(脳や神経系の誤作動)、または心理的要因(ストレス、うつ病)が関与。
神経信号の乱れが、明確な圧迫なしに症状を引き起こす(Hoeritzauer et al., 2018)。
4. なぜ症状が多様?個人差の理由
(1)圧迫の程度と部位
圧迫が強いほど(例:大型ヘルニア)、症状が重篤。
どの神経根が圧迫されるか(例:L5 vs S2)で症状が異なる。
「進行速度」
急性(例:外傷)では急速に症状が悪化。
慢性(例:狭窄症)では徐々に進行。
「患者の背景」
年齢、基礎疾患(例:糖尿病、がん)、神経の感受性で症状の現れ方が変わる。
「スキャンネガティブケース」
機能性障害や軽度の圧迫では、症状が断続的または軽度。
「日常生活で気づくポイント」
どうやってサインを見つける?
馬尾症候群の症状は、初期には「ちょっとした違和感」として現れることも。
以下のポイントをチェックして、早期に気づきましょう
①両側の症状に注意
片側だけのしびれや痛みは坐骨神経痛の可能性が高いですが、
両側に広がる場合は馬尾症候群を疑う。
②トイレの変化を軽視しない
尿や便のコントロールが「いつもと違う」と感じたら、すぐに医療機関を受診。
③お尻の感覚をチェック
座ったときやトイレの後に、会陰部の感覚が鈍いと感じたら要注意。
④腰痛の悪化
腰痛がひどくなり、足のしびれや筋力低下が加わったら、すぐに受診。
⑤迷ったら受診を
「これって大丈夫?」と迷ったときは、整体院ではなく、まず救急外来や整形外科を受診してください。
5.まとめ:馬尾症候群のサインを見逃さないで!
馬尾症候群は、馬尾神経の圧迫により
①両側坐骨神経痛
②サドル型感覚脱失
③膀胱・腸機能障害
④性機能障害
⑤下肢の神経障害
といった特徴的な症状を引き起こす神経疾患です。
これらの症状は、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腫瘍、外傷などによる
「圧迫」が原因で、血流障害や炎症が加わり、神経信号が乱れることで現れます。
2025年の研究(Hennessy et al., 2025)では、馬尾症候群が疑われる場合は急いでMRI検査を行うことで、各国のガイドラインが一致していました。
特に
①両側坐骨神経痛
②膀胱直腸障害
これは、馬尾症候群の重要なレッドフラッグ。
「いつもと違う」サインを見逃さないことが、健康を守る第一歩です!
上のサインがある方は、整体院ではなく、すぐに救急外来や整形外科を受診してください。
これらのサインがなく、腰痛やしびれが長く続いている方は、まず整形外科で一度診てもらってください。
そのうえで、体の動きや困っている場面を整理したいときは、大分駅から歩いて15分ほどの当院(大分市金池町)でもご相談をお受けしています。
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)
参考文献
Hennessy O, Devitt AT, Synnott K, Timlin M. Assessment and early investigation of cauda equina syndrome - a systematic review of existing international guidelines and summary of the current evidence. Eur Spine J. 2025;34:1545-1551. PMID: 40000448
Hoeritzauer I, et al. The clinical features and outcome of scan-negative and scan-positive cases in suspected cauda equina syndrome: a retrospective study of 276 patients. J Neurol. 2018;265:2916-2926. PMID: 30298195
MSDマニュアル「馬尾症候群」(2023年。該当ページの記載内容は未確認)



