膝を曲げた時に、膝の前面が突っ張る方、コレ試して。
こんにちは、GENRYUです(^^)
前回のブログでは、なぜ膝に水が溜まってしまうのか?
そのメカニズムを深堀りしました。
今回もその「膝に溜まる水」について考えていきたいと思います。
あなたも一回は聞いたことがあると思いますが、
「膝に溜まった水は抜いた方が良いのか?」「抜かないほうが良いのか?」
このテーマに沿って、医学論文での見解も含めてまとめていこうと思います。
ちなみに、関節に内に溜まった水のことを「関節水腫(かんせつすいしゅ)」といいます。
膝の関節水腫を「抜くべきか」「抜かなくて良いか」を決定する判断基準は、
患者さんの症状、原因疾患の性質、潜在的リスクと利益のバランスに基づきます。
以下に、医学的根拠と論文を踏まえた具体的な判断基準を整理し、わかりやすく説明します。
1. 判断基準の基本フレームワーク
関節穿刺(関節内に溜まった水を抜く方法)の適否を判断する際、以下の要素が考慮されます
症状の重症度: 痛みや機能障害の程度。
水腫の原因: 炎症性(例: 膝OA、関節リウマチ)、感染性、外傷性など。
滑液の量と性状: 少量か大量か、血性か膿性か。
治療目標: 診断、疼痛緩和、機能改善のいずれが優先か。
リスク評価: 感染や出血の可能性。
これらを総合的に評価し、医師が決定します。
以下に「抜くべき場合」と「抜かなくて良い場合」の基準を具体化します。
2. 膝の水を抜く方が良い場合の判断基準
以下の状況では、関節穿刺が推奨される可能性が高いです。医学的根拠を併せて示します。
(1) 強い痛みや関節内圧の上昇による機能障害
基準: 関節水腫が大量(例: 20-50mL以上)で、膝の腫脹が顕著、
痛みが強く(VAS(痛みの程度を数値化したもの)スコア高値)、
可動域制限や歩行困難がある。
理由: 過剰な滑液が関節内圧を高め、軟骨や周辺組織に機械的ストレスを与える。
穿刺で内圧を下げると即時的な症状緩和が得られる。
医学的根拠: Lohmander et al. (2007, Arthritis & Rheumatism, DOI: 10.1002/art.22823) は、
膝OA(変形性関節症)患者で関節水腫が強い場合、穿刺による滑液除去が
疼痛スコアを有意に低下させ、短期的なQOL改善に寄与すると報告。
内圧軽減が神経終末の刺激を減らすメカニズムが関与。
具体例: 膝がパンパンに腫れて曲げられない、夜も痛みで眠れない場合。
(2) 診断の確定が必要な場合
基準: 水腫の原因が不明確で、滑液分析(細胞数、結晶、細菌培養)が必要。
急性発症、発熱、熱感、赤みがある場合に特に重要。
理由: 感染性関節炎(化膿性)、結晶性関節症(痛風、偽痛風)、関節リウマチ(RA)の
鑑別診断に滑液検査が不可欠。
医学的根拠: Punzi et al. (2002, Annals of the Rheumatic Diseases, DOI: 10.1136/ard.61.5.400) は、結晶性疾患で関節穿刺が診断を確定し、治療方針(例: 抗菌薬や抗炎症薬)を迅速に決定すると示唆。Shirtliff & Mader (2002, Clinical Microbiology Reviews, DOI: 10.1128/CMR.15.4.527-544.2002) は、感染性関節炎で穿刺が遅れると関節破壊リスクが上がると警告。
具体例: 膝が突然腫れて熱っぽい、痛風の既往がある場合。
(3) 治療効果を高める場合
基準: 関節内薬物注入(ステロイド、ヒアルロン酸)を計画しており、
滑液が多すぎて薬剤効果が薄れる可能性がある。
理由: 滑液を抜くことで薬剤が関節腔に均一に分布し、炎症抑制や潤滑効果が向上。
医学的根拠: Bellamy et al. (2006, Cochrane Database of Systematic Reviews, DOI: 10.1002/14651858.CD005321.pub2) のメタアナリシスでは、膝OAで関節内ステロイド注射前に穿刺を行うと、疼痛軽減効果が持続すると報告。滑液過多が薬剤希釈を防ぐ。
具体例: 膝OAでNSAIDsが効かず、ステロイド注射を検討している場合。
3. 膝の水を抜かなくて良い場合の判断基準
以下の状況では、穿刺を避け、経過観察や保存療法が選択されることが多いです。
(1) 症状が軽度で自然吸収が期待できる場合
基準: 滑液量が少量(例: 数mL~10mL程度)、痛みが軽度(VAS低値)、機能障害がほとんどなく、
日常生活に支障がない。
理由: 軽度の水腫は滑膜の吸収機能で自然に解消する。過剰な介入は逆に炎症を刺激するリスクがある。
医学的根拠: Hill et al. (2007, Journal of Rheumatology, DOI: 10.3899/jrheum.060962) は、
膝OAの軽度水腫が数日~数週間で自然吸収され、安静や冷やすだけで改善すると報告。
炎症が弱ければリンパ系が正常に働く。
具体例: 膝が少し腫れているが、普通に歩けて痛みも我慢できる場合。
(2) 基礎疾患の治療で炎症が管理されている場合
基準: 膝OAやRAの薬物療法(NSAIDs、DMARDs)が効果を発揮し、
炎症マーカー(CRP、ESR)が低下傾向、腫脹が徐々に改善中。
理由: 炎症が抑えられれば滑液産生が減り、自然吸収が進む。穿刺は一時的効果に留まり、
再貯留リスクを下げるには原因治療が優先。
医学的根拠: Sellam & Berenbaum (2010, Nature Reviews Rheumatology, DOI: 10.1038/nrrheum.2010.135) は、滑膜炎がコントロールされると滑液貯留が自然に減少すると報告。Felson et al. (2011, Annals of Internal Medicine, DOI: 10.7326/0003-4819-155-3-201108020-00008) も、保存療法が有効な場合に穿刺の必要性が低いと示唆。
具体例: RA治療中で膝の腫れが減りつつある場合。
(3) 穿刺のリスクが利益を上回る場合
基準: 皮膚感染症、出血傾向(血友病、抗凝固薬使用)、穿刺部位の状態が悪い(傷、発赤)。
理由: 感染導入や出血のリスクが関節機能への短期利益を上回る。保存療法で対応可能な場合、
無理に抜く必要はない。
医学的根拠: Shirtliff & Mader (2002) は、関節穿刺が稀に感染を誘発するリスクを指摘。
Mann et al. (2013, Haemophilia, DOI: 10.1111/hae.12081) は、血友病患者で穿刺が
関節内出血を悪化させる可能性を報告。
具体例: 膝周囲に傷があり、感染リスクが高い場合
(4) 一過性の機械的負荷による水腫
基準: 過度な運動や軽い外傷後に水腫が生じたが、炎症兆候(熱感、発赤)がなく、数日で改善傾向。
理由: 機械的ストレスによる一時的な滑液増加は、休息で吸収される。炎症がなければ介入不要。
医学的根拠: Shi et al. (2014, Osteoarthritis and Cartilage, DOI: 10.1016/j.joca.2013.11.012) は、一過性の水腫が安静で自然解消すると報告。
具体例: 長時間歩いた後に膝が腫れたが、数日で引いてきた場合。
4. 判断基準を決定づけるフローチャート
以下は臨床的な意思決定を簡潔にまとめた目安です(医師の診察が前提)
①症状の重さ: 強い痛みや機能障害があるか?
Yes → 穿刺を検討。
No → 保存療法を優先。
②原因の不明性: 診断が不明で滑液検査が必要か?
Yes → 穿刺を実施。
No → 既知の疾患なら原因治療を評価。
③炎症の程度: 炎症が強く、治療効果が不十分か?
Yes → 穿刺+薬物注入を検討。
No → 経過観察。
④リスク評価: 感染や出血のリスクが高いか?
Yes → 穿刺を避ける。
No → 症状に応じて判断。
5. 結論
抜くべき場合: 強い症状、診断の必要性、治療効果向上の目的が明確で、リスクが低いとき。
根拠として、疼痛軽減や診断精度向上が科学的に支持されています。
抜かなくて良い場合: 症状が軽く、自然吸収や保存療法で改善が見込めるか、
リスクが利益を上回るとき。自然経過や原因治療の有効性が裏付け。
最終的な判断は整形外科医やリウマチ専門医の診察と画像検査(超音波、MRI)に基づきますが、
判断基準を知っておくだけでも対策が立てやすくなると思います。
次回は、「膝の水を抜くとクセになるから抜かない方が良いのでは??」問題を
医学的根拠を踏まえて調査していきますので、楽しみにしておいてくださいね(๑•̀ㅁ•́๑)✧
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)