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岸井謙児

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岸井謙児(きしいけんじ) / 臨床心理士

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コラム

僕はアメリカに生まれてきたかった ~大人の発達障がいとコミュニケーションを考える ②~

2021年12月24日

テーマ:発達障害を考える

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

コラムキーワード: 発達障害 支援発達障害 診断児童発達支援

さて前回は、私が以前関わったA君の発言(「僕はアメリカに生まれてきたかった」)を紹介して、日本における発達障がいを抱えた彼らとのコミュニケーションのギャップについて紹介しました。今日はもう少し具体的に様々な国の文化におけるコミュニケーションのタイプを参考に考えてみたいと思います。

コミュニケーションのタイプの違い 

コミュニケーションのタイプについて私が参考にした本は次の2冊です。一つはエドワード・T・ホールの「文化を越えて」(阪急コミュニケーションズ; 〔新装版〕)。異文化コミュニケーション学の名著です。そしてこのホールの業績を大変わかりやすく、日常生活場面に即して解説してくれた本、エリン・メイヤーの「異文化理解力」(英治出版)。


          (写真はAmazon より)
今回は特にメイヤーの「異文化理解力」からできるだけ具体的にコミュニケーションのタイプと発達障害の方々のコミュニケーションへのヒントを考えてみます。
まず、メイヤーさんの本の中から大変興味深い写真を紹介します。

           <エリン・メイヤー「異文化理解力」より引用>
ちょっと画質が悪くて申し訳ありませんが、この写真は日本人とアメリカ人の二人の人にそれぞれ「人物の写真を撮るように」と指示を出した結果です。さてどちらの写真が日本人で、どちらの写真がアメリカ人の撮った写真かわかるでしょうか。と言うよりももしあなたが日本人ならば、「人の写真を撮って来てください」と言われたらどちらのような写真を撮るでしょうか?

たぶん多くの日本人は右側の構図の写真を撮るのではないでしょうか。そうなのですメイヤーさんの指示に従ってアメリカ人が撮った写真は左側のアップの写真で、右側の全体の背景の中の人を撮ったのが日本人だったのです。
同じ「人物の写真を撮る」という指示一つをとっても、アメリカ人と日本人ではこれほどまでに指示する内容の理解が異なるのです。つまり日本人は「その背景の文脈を含めた人物の写真」と理解し、アメリカ人は「文字通り人物のみの写真」と理解したのでしょうね。

この違いはどこから来るのでしょうか?

そしてそれが私たちのコミュニケーションの有り方にどういう影響を与えているのでしょうか?
この実験からわかることは、私たち日本人は物事をとらえる時に必ず全体の文脈(コンテキスト)の中で物事を把握しようとする文化だということです。逆にアメリカ人は、「人を撮る」という指示をストレートに反応して「人」だけを撮ったのです。ここまでくると、最初のA君の発言がなんとなくわかってくるような気がします。

つまり「なぜストレ―トに説明をしてくれないのか」「(暗黙の了解とか暗黙のルールが当たり前の)日本という国はとても生きづらい」と言う彼の言葉は発達障害圏のコミュニケーションがある意味「アメリカ的」だということです。

ちなみに内容を重視するコミュニケーション文化のアメリカ人であるエリン・メイヤーさんは、幼いころからいつも「きちんと口で伝えよう。伝えたとおりに行動しよう」と教えられ、アメリカ的なルールである「まずこれから伝える内容を伝え、それから内容を伝え、最後に、伝えた内容を伝えよう」という哲学を教え込まれたといいます。なんと日本の「察する文化」と異なることか!

さらにこんなエピソードも紹介されています。
アメリカ人と日本人が異文化マネージメントについて議論をしました。そこで日本人が「日本では成長するにしたがって、それとなく伝えることや、相手の行間を読むことを暗黙のうちに学びます。・・・中略・・・・数年前その年の新語・流行語に『KY』という言葉がノミネートされました。Kuuki Yomenai の略語で、つまり行間を読む能力が全く欠けている人のことを指します」と紹介すると、そばにいたアメリカ人が「ということは、私たちアメリカ人はみなKYですね!」と言ったということです。
(*しかし賢明にも(?)その日本人はそのジョークに対して慎重に、笑顔を見せなかったと言うことです。馬鹿していると思われたくなかったのかもしれませんね(笑)ここにも日本人の特性がよく出ています)

確かにA君が「アメリカに生まれたかった」というのもうなづけますね。

つながろ!

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