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コラム

自閉症に対する無理解が引き起こした悲劇 「彼女の名はサビーヌ」

発達障害を考える

2014年8月16日 / 2018年9月24日更新

彼女の名はサビーヌ


知的障害と自閉症の重複障害とともに生きるサビーヌは、幼い頃から特別な教育的ケアを受けて育ってはきたが、周囲からはなかなか受け入れられない日々を送ってきました。

しかし当時の医療的な水準もあったのか、「自閉症」としての診断を受けられずに28歳まで過ごしてきたのです。その間、姉妹・兄弟がそれぞれの人生を送り自立し、また大切な兄の死もあり彼女の孤独感は増し、不安は家族と自分に対する衝動的な暴力による自傷他害を見せるようになったのです。その結果彼女は28歳のときに精神病院に入院させられたのです。

統合失調症との誤診に苦しむ人々


さて、昨今でこそ「自閉スペクトラム症」という障害が認識されてきましたが、昔は自閉症というのは「早発性痴呆」だとか「若年性統合失調症」である、という認識がなされていました。1970年代から、両者の区別が言われ始めたということですが、サビーヌが自閉症という明確な診断をされずに、精神病院に入院させられたというのも、詳しい事情は明らかになっていませんが、ひょっとしたらそういう背景があってのことかもしれません。

そしてその入院生活は悲惨なものだったようです。暴力が続くと薬漬けにされ、“5年間の監禁”生活だったと解説書には書かれてあります。

「知的障害と自閉症が重複すると、以前の医療水準では高い確率で統合失調症と誤診されてしまうことがある」ということを杉山登志郎さんなどが著書で触れられています。

“カテゴリー診断学を機械的に用いた場合、自閉症スペクトラム障害を知らなければ、統合失調症と診断を受けることは十分にありうることである”
“・・・成人の治療への見直しをおこなっている精神科医に聞くと、発達障害の併存症の見逃しは、非定型的な統合失調症と診断されている患者に少なくなく、統合失調症診断を受けている患者の3割とも、5割とも、7割(!)ともいえる可能性があるという”
(いずれも「発達障害のいま」杉山登志郎 講談社新書2116)

サビーヌの場合ももしかしたらそうだったのかもしれません。
そのような不適切な治療の結果、以前できていた身体活動ができなくなり、しばらくは言葉もなくしていたといいます。

一人の人間として尊重されること


このDVDでは、その後少しずつ回復を遂げたものの、まだまだ入院生活の後遺症の残る彼女と、以前のような活発で自由に振舞っっていたサビーヌとの対比を記録映像とともにドキュメンタリーとして作り上げています。

正直、見ていてこころが痛みますが、タイトルにあるように、彼女は「自閉症」や「統合失調症」の患者ではなく、一人のサビーヌという人間なんだということが伝わってくる映画でした。

そういえば以前取り上げたDVDにも「マイ ネーム イズ ハーン」というのがありましたね。
やはり診断名や患者名である前に、一人の人間なのだ、というテーマがあるように思わされる作品でした。

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