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平松幹夫

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平松幹夫(ひらまつみきお) / マナー講師

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

コラム

マナーうんちく話2209《初夏の初物で「粋」を楽しむ5月》

2024年5月1日

テーマ:歳時記のマナー

コラムカテゴリ:くらし

まぶしい光の中、緑が一段と深さを増し、樹木の清々しい香りがほのかに漂ってきます。
この時期になると鶯も人に近くなり、我が家の庭木にやってきた鶯の鳴き声で目を覚ますときも多々あります。
田舎ならではの豊かなひと時です。
令和6年5月1日は夏も近づく「八十八夜」です。
立春から数えて88日目の「雑節」で、まさに春と夏との節目でしょうか。

そしてこの時期は緑も爽やかですが、天候ガ落ち着いてきます。
5日ごとに風が吹き、10日ごとに雨が降るという「五風十雨」という言葉がありますが、作物が順調に育つ順風な天候という意味で使用されます。
さらにこれが転じて「世の中の泰平を願う言葉」でもあります。
ただ「八十八夜の忘れ霜」という言葉もあり油断大敵です。
急に気温が下がって「遅霜」が降り、農作物に被害が出ることもたびたびありますが、最近は天気予報が発達しているので助かります。

ところで日本では昔から奇数は陽数で縁起がいい数字とされていますが、「八」は「末広がり」に通じ、福を招くといわれています。
その八が二つ重なる「八十八夜」は二重に縁起がいい数字で、この時期に摘まれたお茶は「新茶」とか「一番茶」と呼ばれ、無病息災に通じると考えられていたわけです。
さらに「八」+「八」=「米」になるので、当時大半を占めていた農業従事者にとって、八十八夜は特別な意味を有していたのでしょう。
稲作を中心とした農耕文化で栄え、米を主食にしている日本人にとっても、同じことがいえると思います。
しかし昔は今のように、農業は機械化されていません。すべてが手作業になるので、お茶を摘む仕事は多くの人手が必要で大変です。
そこで活躍したのが日本の唱歌「茶摘みの歌」に登場する、茜色のたすきと菅(すげ)の植物で編んだ傘を被った女性たちです。
「茶摘み子さん」と呼ばれる女性が、この時期になると近隣から集まり、大規模なお茶の栽培農家に泊りがけで働きに出かけたといわれています。

また、この時期ならではの初物「初鰹」があります。
「マナーうんちく話」でも何度も登場しましたが《目には青葉 山ほととぎす初鰹》と詠まれた山口素堂の句が大変有名になり、江戸っ子が競って、誰よりも早く初鰹を食べるようになったとか・・・。
ちなみに当時人気の初物といえば初鮭、新酒、新そば、若鮎などがあったようですが、初鰹が初物の王様になったのは、山口素堂のこの俳句のお陰の様です。
ただ「収穫の秋」「実りの秋」に比べたら、初夏は初物が少なく、初夏の初物といえば「初鰹」と「一番茶」が有名になったわけです。

では、なぜ初物が日本人に人気があり、初物を誰よりも早く食すかが「粋」とされたのでしょうか。
初物には他にはない特別なパワーがあり、それを食したら新たな生命力が得られると信じられていたようです。
神事を行う際、神様にお酒をお供えし、神事が終わればそのお酒を下げて、神事に参加した人が皆で戴きます。これは神様にお供えしたお酒には神様の霊力が宿っているので、それを飲むことで身体に霊力を取り入れるためです。
もう一つの理由は、四季の豊かな国ならではの「季節感」が重んじられていたのだと思います。
そういえば和食が2023年12月にユネスコの無形文化遺産に登録されましたが、その理由の一つに「自然の美しさ」や「季節性」があります。
もともと日本人は往々にして「初」とか「限定」といったキーワードに弱く、これらの言葉はビジネスの現場では非常によく見られますね。

風薫る5月は、初夏の太陽を一杯浴びて、人も花も鳥も、すべてのものが輝いている・・・。
そんな感覚を五感で感じられる絶好の季節であり、これからは初夏の味覚が市場に出回るようになります。
タケノコ、ワラビ、アスパラガス、エンドウ、ソラマメ、サクランボウ、モモ、ビワ、アジ、カツオ、アユなどなどでしょうか。
「女房を質に入れてでも食いたい初鰹」という江戸時代の川柳がありますが、今の日本では鰹を始め初夏の初物は、多少高いかもしれませんが、無理な金額ではないのでありがたいですね。

日本は今、とても豊かで便利な国になりました。
食べ物もしかりでしょう。
食料自給率は38パーセントくらいを推移しているにもかかわらず、世界屈指の美食の国であり、飽食の国でもあります。
しかし、一年中何でも気軽に食べることができ、旬を感じることも少なくなりました。
地球上には年中飢餓に苦しむ人が何億人もいるといわれる中、大変贅沢な話だとは思いますが、四季が豊かで美しい国で、食べ物の旬が感じられなくなることが本当に豊かでしょうか。

タケノコ、エンドウ、ソラマメ、アユ、モモ、ビワなど本当に旬を感じる食べ物を味わう時こそ、前回の「マナーうんちく話」で触れた「喫茶喫飯」の精神で戴き、本来の《粋》な食べ方を楽しんでいただけたらと思います。

では《粋な食べ方》とはどんな食べ方でしょうか?
これには定義はないと思いますが、「粋(いき)」とは江戸時代に庶民から生まれた美意識で、装いや振る舞いが洗練されて格好いいことです。
何となく洒落た言葉であり、心地よい響きでもあり、粋だといわれれば、つい嬉しくなりそうですね。
主に人情味のある男性に対して使用されたようですね。
たとえば「粋な計らい」といえば、人が喜ぶことをさりげなく行うことです。
従って「粋な食べ方」といえば、食べ物に真摯に向き合い、美味しいと反応し、心と身体が喜ぶ美しい食べ方だと考えます。
もちろん感謝の心や、食べ方の作法も心得て頂きたいものです。
つまり「喫茶喫飯」の精神で戴くことではないでしょうか。

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