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安部元隆プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

【完結編】最終域の壁を突破せよ!肩関節屈曲・外転を完遂させる「3rdポジション内旋」と後方組織へのアプローチ③

安部元隆

安部元隆

テーマ:肩痛



こんにちは、GENRYUです(^^)
お待たせしました。
いよいよシリーズ最終回、第3弾です。
今回は、肩関節の可動域制限、特に「屈曲・外転の最終域
(耳の横まで腕を上げる動き)」で問題となる
「3rdポジション内旋」と、それに関与する
「後方組織」および「肩甲胸郭関節(内転・前傾方向)」へのア
プローチについて解説します。
第1弾の「初動」、第2弾の「途中経過」をクリアした後に残る、
最後の難関。
「あと少しで完全に腕が上がりきるのに…」という、
その「あと少し」を埋めるための、非常にマニアックかつ重要なアプローチです。
第1回では初動を制する「1st外旋(前上方組織)」、
第2回では途中経過の詰まりを取る「2nd外旋&肩甲胸郭関節(前下方・小胸筋)」
について深掘りしてきました。
これらを実践することで、多くのケースで可動域の改善を
実感いただけたのではないでしょうか。
しかし、臨床の現場では、これらをクリアしてもなお、
「腕が耳の横までピタッとつかない」「最終域で肩の後ろや奥の方が突っ張る」という、
最後の「壁」に直面することがあります。
この最終域の制限を打破する鍵が、今回のテーマである
**「3rdポジション(90度外転位からの)内旋可動域」**と、

それを制限する**「後方組織(posterior cuff など)」**です。
「え?腕を上げる(屈曲・外転)のに、なぜ『内旋』が必要なの?」
そう思われるかもしれません。しかし、ここが肩関節の機能解剖の面白いところであり、
多くの臨床家が見落としがちなポイントでもあります。
なぜ最終域で「内旋」が必要なのか? 後方の硬さがどのように動きをブロックするのか?
解剖学と運動学の視点からそのパラドックスを解き明かし、
シリーズの総仕上げとなる実践的なアプローチ方法まで、余すところなくお伝えします。
では、早速やっていきましょう。



第1章:肩関節の「終着点」と「3rd内旋」の意外な関係
まずは、肩関節が最終域(最大屈曲・外転)に達するとき、
関節の中で何が起きているのかを再確認しましょう。

1. 最終域における「骨頭の求心位」と「関節包の絞り」
肩関節屈曲の最終域ではGHJ(肩甲上腕関節)は「外旋位」、
外転の最終域では「内旋位(または中間位)」となるとされています。
一見矛盾するようですが、共通して言える重要な事実があります。
それは、**最終域においては、関節包や周囲の靭帯が雑巾を絞るように
巻き付き(ツイストされ)、上腕骨頭が関節窩に対して
強く押し付けられて安定化する(求心位が保たれる)**ということです。
この「絞り」が適切に行われることで、骨頭は関節窩の中心に収まり続け、
スムーズに最終可動域まで到達できます。

2. なぜ「3rdポジション内旋」が制限因子になるのか?
では、なぜ「3rdポジション(90度外転位)」での「内旋」可動域が重要なのでしょうか?

一見、屈曲や外転(外旋を伴う動き)とは逆の動きのように思えます。
しかし、臨床的に以下の2つの理由から、3rd内旋可動域の評価と改善は不可欠です。
① 「後方組織の柔軟性」の指標になる
3rdポジションで内旋するという動作は、
GHJ(肩甲上腕関節)の後方にある組織群(棘下筋、小円筋、後方関節包など)を
最も強く伸張するストレッチ動作そのものです。
つまり、「3rd内旋が制限されている」=「後方組織が硬く短縮・癒着している」
ということを意味します。



② 骨頭の「前方変位」を防ぐ
もし、後方組織が硬いまま、無理に腕を上げていく(屈曲・外転・外旋していく)と
どうなるでしょうか?
硬い後方組織が「壁」となり、上腕骨頭が後方へ滑り込むのを阻害します。
その結果、骨頭は逃げ場を失い、相対的に「前方へ押し出される(前方変位する)」力が
働いてしまいます。
骨頭が前方へずれると、関節の適合性が崩れ、前方組織(腱板疎部や関節唇など)への
ストレス増大や、インピンジメントの原因となります。
結果として、最終域での「痛み」「詰まり感」が出現し、可動域が制限されてしまうのです。
つまり、「スムーズな屈曲・外転(最終域)を実現するためには、
逆の動きである3rd内旋が十分にできるだけの『後方組織の柔軟性』が
担保されている必要がある」という逆説的なメカニズムが存在するのです。




第2章:ターゲット組織の解剖学的・運動学的深層
最終域の制限因子となる「肩甲上腕関節(GHJ)の後方組織」と、
それに関連する「肩甲胸郭関節の動き」について、解剖学的に深掘りします。

❶ 肩甲上腕関節(GHJ)の後方ガードマン:棘下筋・小円筋・三角筋後部
GHJの後方を支え、強力な外旋筋でもあるこれらの筋肉は、
拘縮肩や投球障害肩などで非常に硬くなりやすい部位です。

【棘下筋(Infraspinatus)】

* 起始:肩甲骨の棘下窩
* 停止:上腕骨大結節の中部
* 特徴:インプット資料にある通り、横走線維と斜走線維に分かれます。
特に斜走線維は腱成分が多く、関節包の後上方に密接に関与するため、
この部位の硬さは3rd内旋(および水平内転)の強い制限因子となります。

【小円筋(Teres Minor)】

* 起始:肩甲骨の外側縁
* 停止:上腕骨大結節の下部
* 特徴:棘下筋の下に位置し、関節包の後下方を補強しています。
特に断面積の大きい下部線維は、挙上時の骨頭の安定化
(骨頭を関節窩に引き寄せる作用)に重要です。
ここが硬くなると、骨頭が上方・前方へ変位しやすくなります。

【三角筋後部線維(Posterior Deltoid)】

* 表層にある大きな筋肉ですが、深層の棘下筋・小円筋と癒着を起こしやすく、
後方全体の滑走性を低下させる原因となります。


❷ 後方の伏兵:上腕三頭筋長頭と大円筋
肩関節の後下方、腋窩(わきの下)の後ろ側を構成する筋肉群も忘れてはなりません。
【上腕三頭筋長頭(Triceps Brachii Long Head)】

* 起始:肩甲骨の関節下結節
* 特徴:唯一、肩関節をまたぐ二関節筋です。肩関節の伸展・内転に関与しますが、
ここが短縮すると、挙上時(特に屈曲時)に肩甲骨を外側へ引っ張り、
肩甲上腕関節(GHJ)の下方組織の滑走を阻害します。

**【大円筋(Teres Major)】**

* 起始:肩甲骨の下角
* 停止:上腕骨小結節稜(前側につく!)
* 特徴:肩甲骨の後ろからスタートし、上腕骨の前側に回り込んで
付着する強力な内旋筋です。広背筋と共同して働きます。
ここが硬くなると、挙上時に肩甲骨を外側へ引き出す(上方回旋を助ける)動きが
制限されたり、上腕骨を内旋方向へ引っ張りすぎて外旋を阻害したりします。

❸ 肩甲胸郭関節の連動:内転・前傾の必要性
肩甲上腕関節の後方組織をストレッチ(3rd内旋・水平内転)するためには、
土台となる肩甲骨が適切な位置に固定されている、あるいは連動して動く必要があります。
後方組織を伸ばす際には、肩甲骨が外転(外に逃げる)してしまうと
ストレッチ効果が半減します。
そのため、一時的に肩甲骨を「内転・前傾」方向に安定させる機能が求められます。
これには、僧帽筋中部・下部線維や菱形筋群の働きが関与します。
また、最終的な挙上動作においては、第2回で解説した
「上方回旋・後傾・外旋」が必須となります。
後方組織の柔軟性は、この肩甲骨のダイナミックな動きを許容するためにも不可欠なのです。




第3章:実践!解剖学的ストレッチ&運動療法アプローチ
それでは、これらの解剖学的背景に基づいた具体的なアプローチを紹介します。
コンセプトは**「深部の癒着を剥がし、骨頭が後方へ滑り込めるスペースを作る」**ことです。
非常に強力なストレッチが多いので、疼痛自制内で行うよう注意してください。

アプローチ①:後方組織をまとめて伸ばす「スリーパーストレッチ(改)」
3rd内旋の可動域を改善する最も代表的なストレッチです。
ただし、やり方を間違えるとインピンジメントを誘発する
危険なストレッチにもなるため、正しいフォームの指導が不可欠です。
【修正版スリーパーストレッチ(安全・効果的)】

1. ポジション: 患側を下にして側臥位になります。
2. セット: 下になった患側の腕を、肩のラインより少し低い位置(肩屈曲約70度〜80度)で
前に出します。肘は90度曲げます。
* 重要ポイント: 従来の90度屈曲位で行うと、肩峰下インピンジメントを
誘発しやすいため、少し角度を下げた位置(scapular planeに近い角度)で
行うのが安全かつ効果的です。
3. ストレッチ:
* 健側の手で、患側の手首を持ちます。
* ゆっくりと、患側の前腕を床の方へ倒していきます(内旋させていきます)。
* 肩の後ろ側、奥の方が突っ張る感覚があれば正解です。
痛気持ちいいところで20〜30秒キープします。
4. 注意点:
* 肩がすくんだり、体が前に倒れたりしないようにします。
* 肩の前側や頂点に鋭い痛みが出る場合は、インピンジメントが起きている可能性があるので直ちに中止し、角度を調整してください。

アプローチ②:水平内転で伸ばす「クロスボディストレッチ(改)」
これも代表的なストレッチですが、ただ腕を胸の前で引くだけでは、
肩甲骨が一緒に外側に逃げてしまい、肩甲上腕関節の後方組織はあまり伸びません。
「肩甲骨の固定」が最大のコツです。
【肩甲骨固定クロスボディストレッチ】

1. ポジション: 立位または坐位。壁の角や柱を利用します。
2. セット(肩甲骨の固定):
* 壁の角に、患側の肩甲骨の外側縁(脇の後ろあたり)を当てて、
後方へ動かないように物理的にロックします。
* または、背臥位で施術者が徒手的に肩甲骨の外側縁を押さえて固定します。
3. ストレッチ:
* 患側の腕を胸の前へ水平に出します(水平内転)。
* 健側の手で肘を持ち、「肩甲骨が壁から離れないように固定したまま」、
腕をさらに胸の方へ引き寄せていきます。
* 肩甲骨が固定されているため、肩甲上腕関節の後方(棘下筋・小円筋・後方関節包)に
強烈な伸張感が集中します。20〜30秒キープします。

アプローチ③:後下方の癒着を剥がす「上腕三頭筋・腋窩後壁リリース」
腋窩後方の筋肉間の滑走性を改善します。
【セルフリリース&ストレッチ】

1. リリース: 腋窩の後ろ側の壁(広背筋・大円筋・上腕三頭筋長頭が交わるあたり)を、
反対の手の指やマッサージボールで圧迫しながら、腕を内旋・外旋させたり、
小さく屈伸させたりして、組織間の癒着をほぐします。
2. ストレッチ(上腕三頭筋長頭狙い):
* 患側の腕を真上に上げ、肘を曲げて手を背中の方へ回します。
* 健側の手で患側の肘を持ち、下方向へ引き下げます。
* この時、**「胸を張り、脇を締める(肩甲骨を内転・下制させる)」意識を持つ**と、
肩甲骨側の付着部が固定され、長頭がより効果的にストレッチされます。

アプローチ④:仕上げの運動療法「肩甲骨面での挙上(フルカン・エクササイズ)」
後方組織の柔軟性が確保できたら、実際に骨頭を適切な位置(求心位)に
保ちながら最終域まで挙上する筋力トレーニングを行います。
【フルカン・エクササイズ(Full Can Exercise)】

1. ポジション: 立位。両手に軽いダンベル(またはペットボトル)を持ちます。
2. 動作:
* 親指を天井に向けた状態(Full Can = 缶の中身が満タンの状態)で、
腕を斜め前約30度〜45度(肩甲骨面:Scapular plane)の方向に持ち上げていきます。
* この角度は、関節包の捻じれが最も少なく、骨頭が関節窩に収まりやすい安全な軌道です。
* 肩がすくまないように注意しながら、痛みなく上がる最終域まで
ゆっくりと上げ下ろしを繰り返します。
3. 目的: 棘上筋を中心とした腱板の筋活動を促し、
骨頭を関節窩に引き寄せる(求心位を保つ)機能を再教育します。



シリーズ完結まとめ:3つの鍵で肩関節を解放せよ!
全3回にわたり、肩関節屈曲・外転制限に対する可動域改善アプローチを深掘りしてきました。
1. 初動を制する「1st外旋」: 前上方組織(CHL, SAB, 棘上筋)の癒着を剥がし、
クリアランスを確保する。
2. 途中を制する「2nd外旋&肩甲胸郭」: 前下方組織(肩甲下筋)と
土台(小胸筋)を解放し、詰まりをなくす。
3. 最終域を制する「3rd内旋&後方組織」: 後方組織(棘下筋, 小円筋)の柔軟性を高め、
骨頭の後方滑りを許容する。
肩関節の可動域制限は、これらの要素が複雑に絡み合って生じています。
「腕が上がらない」という一つの現象に対し、どのフェーズで、どの組織が
どのように制限をかけているのか?
漫然としたストレッチではなく、解剖学・運動学に基づいた「評価」と、
ターゲットを絞り込んだ「特異的なアプローチ」を行うことで、
これまで改善しなかった頑固な拘縮も、必ず変化していくはずです。
このシリーズが、「腕がスッと上がる喜び」を取り戻すための一助となれば幸いです。
ぜひ実践してみてくださいね(๑•̀ㅂ•́)و✧
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)

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安部元隆
専門家

安部元隆(理学療法士)

GENRYU式 綜合整体

科学的根拠に基づいた知見と臨床経験から得られた知見を組合せ「根本原因を探し、戻りが少ない治療法」『GENRYUメソッド』を提供しています。問題点をキチンと細分化して捉え、1つ1つその問題を解決します。

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