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安部元隆プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

「肩のゴリゴリ音の原因は?医学的根拠で解く肩の謎」

安部元隆

安部元隆

テーマ:肩痛



こんにちは、GENRYUです(^^)
肩を回す時に「ゴリゴリ」音がなる経験をされる方、多いと思います。
この音は、医学的には「クレピタス(crepitus)」と呼ばれ、
必ずしも異常を意味するわけではありませんが、
場合によっては肩関節や周辺組織の問題を示唆することがあります。
このブログでは、肩を回すとゴリゴリ音がする原因とそのメカニズムを、
最新の医学的根拠と研究に基づき詳細に解説します。
特に、メカニズムに焦点を当て、肩関節の構造や関連する生理学的・
病理学的要因を具体的に説明していきます。
肩の健康を理解し、不安を解消するための知識を提供致しますので、
最後までご覧ください!


1. 肩関節と肩甲骨の構造:音の発生源を理解する

肩関節は、肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節、肩鎖関節、胸鎖関節からなる
複合的な構造で、広範な可動域を可能にします。
肩を回す動作では、肩甲骨と上腕骨が協調して動き、僧帽筋、菱形筋、前鋸筋、
腱板筋群(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)などが関与します。
ゴリゴリ音(クレピタス)は、以下のような部位で発生する可能性があります。
①関節内
肩甲上腕関節の関節軟骨や滑液。
②関節周辺
腱、靭帯、筋肉、筋膜。
③肩甲胸郭界面
肩甲骨と胸郭の間の滑り面。
④軟部組織
筋肉や筋膜の摩擦。
これらの部位で音が発生するメカニズムは、生理的(正常な)要因と
病理的(異常な)要因に分けられます。以下で、具体的なメカニズムを解説します。
「医学的根拠」
- 肩関節の複合的な構造は、複数の関節と筋肉の協調運動を必要とし、
クレピタスの発生源が多岐にわたることを示しています
(Kibler et al., *Journal of Shoulder and Elbow Surgery*, 2013)。
- クレピタスは、関節内や軟部組織の機械的相互作用による音として
定義されます(Robertson et al., *Journal of Anatomy*, 2017)。


2. 肩を回すとゴリゴリ音がするメカニズム
肩を回す際のゴリゴリ音は、生理的および病理的な複数のメカニズムによって
引き起こされます。以下で、各メカニズムを詳細に説明します。
(1)生理的要因:正常な関節や組織の動きによる音**
多くの場合、肩を回す際の音は正常な生理的現象であり、
以下のようなメカニズムが関与します。
①キャビテーション(気泡崩壊)
肩甲上腕関節内の滑液(synovial fluid)には、酸素、窒素、
二酸化炭素などのガスが溶け込んでいます。
肩を回す際、関節内の圧力が低下すると、これらのガスが気泡を形成し、
崩壊(キャビテーション)することで「ポキポキ」または
「ゴリゴリ」という音が発生します。
この現象は、関節の可動域が大きい肩甲上腕関節で特に顕著です。
「メカニズムの詳細」
関節内の圧力低下は、関節面のわずかな分離
(例:上腕骨頭が関節窩から一時的に離れる)によって生じます。
気泡の崩壊は、音波を生成し、ゴリゴリ音として聞こえます。
この過程は無害で、痛みを伴わない場合、正常と見なされます。
②腱や靭帯のスナップ現象
肩を回す動作では、腱板筋群の腱や関節包、靭帯が骨や他の
軟部組織を越えて移動する際に、「スナップ」または「クリック」音が
発生することがあります。
たとえば、棘上筋腱が肩峰を越える際に、摩擦や弾性による音が生じます。
「メカニズムの詳細」
腱や靭帯の表面が骨や他の組織と接触し、急激に位置を変化させることで、
振動が発生し、音として認識されます。これは、肩の広範な可動域と
腱の弾性による自然な現象です。
③筋膜や筋肉の摩擦
肩甲骨周辺の筋肉(例:僧帽筋、前鋸筋)や筋膜が、胸郭や他の筋肉と
擦れることで、ゴリゴリ音が発生することがあります。
特に、肩甲胸郭関節の滑り面で、筋肉や筋膜が動く際に摩擦音が生じます。
「メカニズムの詳細」
筋膜はコラーゲン繊維のネットワークで構成されており、
滑液が存在しない肩甲胸郭関節では、筋肉や筋膜の動きが
直接的な摩擦を引き起こします。
この音は、筋肉の緊張や水分不足により増強されることがあります。
「医学的根拠」
- キャビテーションは、関節内の気泡崩壊による音の主要な原因であり、
MRIや超音波で観察されています
(Kawchuk et al., *Scientific Reports*, 2015)。
- 腱のスナップ現象は、正常な関節運動に伴う生理的音として認識されており、
痛みがなければ問題ないことが多いです
(Robertson et al., *Journal of Anatomy*, 2017)。
- 筋膜の摩擦は、肩甲胸郭関節の滑り運動に関連し、正常範囲の動きで
発生することがあります
(Stecco et al., *Journal of Bodywork and Movement Therapies*, 2016)。

(2) 病理的要因:組織の異常による音
ゴリゴリ音が痛みや可動域制限を伴う場合、以下のような病理的要因が
関与している可能性があります。
①肩甲骨の異常な動き
肩甲骨の柔軟性低下や筋肉の不均衡(例:大胸筋の短縮、僧帽筋下部の弱化)は、
肩甲胸郭関節の滑らかな動きを妨げ、ゴリゴリ音を引き起こします。
たとえば、肩甲骨が前方に傾斜(anterior tilt)したり、上方回旋が不十分だと、
胸郭との間で異常な摩擦が生じます。
「メカニズムの詳細」
筋肉の不均衡により、肩甲骨の正常な位置が変化し、
胸郭との接触面で不均一な圧力がかかります。
これにより、筋膜や軟部組織が擦れ、ゴリゴリ音が発生します。
長時間のデスクワークや前肩姿勢がこの問題を悪化させます。
②関節軟骨の摩耗や変形性関節症
肩甲上腕関節や肩鎖関節の軟骨が摩耗すると、関節面が粗くなり、
動きの際にゴリゴリ音が発生します。
変形性関節症では、軟骨の菲薄化や骨棘の形成が、音の原因となります。
「メカニズムの詳細」
軟骨の表面が不均一になると関節の滑りが悪くなり、
骨同士や軟骨と骨の摩擦が音を生じます。
加齢や反復的なストレスがこのプロセスを加速します。
③腱板損傷や腱の炎症
腱板(特に棘上筋や棘下筋)の部分断裂や炎症(腱鞘炎)は、
腱が肩峰や関節包と擦れる際にゴリゴリ音を引き起こします。
損傷した腱は、滑らかな動きを失い、摩擦音が発生しやすくなります。
「メカニズムの詳細」
腱の表面が炎症や瘢痕化により粗くなると、肩を回す際に肩峰下滑液包や
骨との間で摩擦が生じる。これがゴリゴリ音として聞こえます。
④滑液包炎
肩峰下滑液包の炎症は、肩を回す際に摩擦音やゴリゴリ音を引き起こします。
滑液包は、腱と骨の間のクッションとして機能するが、
炎症により腫脹し動きの際に音が発生します。
「メカニズムの詳細」
炎症により滑液包内の滑液量が増加または減少すると腱や骨との摩擦が増え、
音が生じる。反復的な肩の動きや外傷が原因となります。
⑤筋膜の癒着や瘢痕組織
長期間の不動、怪我、または手術後の瘢痕組織形成により、
筋膜や筋肉が癒着すると、肩甲骨の動きが制限され、ゴリゴリ音が発生します。
特に、肩甲胸郭関節周辺の筋膜癒着は、摩擦音の主要な原因となります。
「メカニズムの詳細」
筋膜のコラーゲン繊維が癒着すると、筋肉や肩甲骨の滑動性が低下し、
動きの際に振動や摩擦音が生じます。
「医学的根拠」
- 肩甲骨の異常な動きは、肩甲胸郭関節での摩擦音の原因となり、
筋肉の不均衡が主要な要因です
(Cools et al., *British Journal of Sports Medicine*, 2014)。
- 変形性関節症による軟骨の摩耗は、関節内のクレピタスの原因として一般的です
(Loeser, *Arthritis & Rheumatology*, 2013)。
- 腱板損傷や滑液包炎は、肩の摩擦音や痛みと関連しています
(Seitz et al., *Clinical Orthopaedics and Related Research*, 2011)。
- 筋膜の癒着は、肩甲骨の滑動性を低下させ、音の発生に寄与する
(Wilke et al., *Journal of Bodywork and Movement Therapies*, 2016)。

(3)神経系の影響
神経系の調整不良は、肩甲骨や肩関節の動きを乱し、
ゴリゴリ音を増強することがあります。
①運動制御の障害
脳が肩の動きを「脅威」と認識すると、僧帽筋や腱板筋群が過剰に緊張し、
肩甲骨の滑らかな動きが妨げられます。
これにより、胸郭や関節との間で異常な摩擦が生じ、音が発生します。
「メカニズムの詳細」
脳の運動制御領域(運動前野、補足運動野)が過剰に反応すると、
筋肉の協調性が乱れ肩甲骨の動きが不均一になる。
これが摩擦音の原因となります。
②感覚入力の乱れ
前庭系(内耳)や視覚系からの不適切な入力は、肩甲骨の位置や動きに影響を与えます。
たとえば、視線を下に固定することで僧帽筋上部の緊張が増し、
肩甲骨の動きが制限されます。
「医学的根拠」
- 疼痛神経科学の研究では、脳の脅威認識が筋肉の過緊張を引き起こし、
関節や軟部組織の摩擦音を増強します
(Moseley & Butler, *The Journal of Pain*, 2015)。
- 前庭系の機能低下は、肩甲骨の運動制御に影響を与え、
異常な動きや音の原因となります
(Bigelow & Agrawal, *Journal of Vestibular Research*, 2015)。

(4)加齢による組織の変性
加齢は、肩関節や周辺組織の変性を引き起こし、ゴリゴリ音の発生に寄与します。
①軟骨の摩耗
加齢により、肩甲上腕関節や肩鎖関節の軟骨が摩耗化し関節面が粗くなり、
これにより動きの際に摩擦音が生じます。
②コラーゲンの架橋(かきょう)増加
筋膜や靭帯のコラーゲン繊維は、加齢に伴い架橋が増加し硬くなり、
これが肩甲骨の滑動性を低下させ、音の原因となります。
③筋肉の弾力性低下
筋繊維のエラスチンやコラーゲンの減少により、
僧帽筋や前鋸筋の伸張性が低下し、動きが硬くなります。
「医学的根拠」
- 加齢による軟骨の菲薄化とコラーゲンの変性は、関節内のクレピタスの原因となります
(Loeser, *Arthritis & Rheumatology*, 2013)。
- サルコペニア(筋量減少)は、肩甲骨周辺筋の機能低下を招き、
動きの制限と音の発生に寄与します(Cruz-Jentoft et al., *Age and Ageing*, 2019)。


3. ゴリゴリ音が人体に及ぼす影響**
ゴリゴリ音自体は、痛みや機能障害を伴わない場合、通常は無害です。
しかし、病理的要因による音は、以下のような影響を及ぼす可能性があります。
①痛みと機能障害
腱板損傷、滑液包炎、変形性関節症による音は、痛みや可動域制限を伴うことが多く、
これにより日常生活動作(例:物を持ち上げる、服を着る)が困難になる。
②姿勢不良
肩甲骨の異常な動きは、前肩姿勢や猫背を助長し、頸部痛や腰痛を引き起こします。
たとえば、肩甲骨の前方傾斜は、胸椎の後弯を5~10度増加させます。
③運動パフォーマンスの低下
スポーツ活動(例:投球、スイミング)では、肩甲骨の動きが制限されると、
パフォーマンスが低下し、怪我のリスクが高まります。
④心理的影響
ゴリゴリ音が頻繁に聞こえると、「何か異常があるのではないか」と不安を感じ、
運動恐怖やストレスが増加します。
「医学的根拠」
- 肩甲骨の異常な動きは、肩の痛みや機能障害の主要な原因であり、
インピンジメント症候群や腱板損傷と関連します
(Escamilla et al., *Sports Medicine*, 2009)。
- 慢性肩痛は、心理的ストレスやQOLの低下と相関します
(Lin et al., *Pain Medicine*, 2018)。


4. 注意点と専門家の関与
ゴリゴリ音が痛みや可動域制限を伴わない場合、通常は心配する必要はありません。
ただし、以下の場合は専門家の評価が必要です。
①痛み、腫れ、熱感、可動域制限が伴う場合。
②音が頻繁で、日常生活やスポーツに支障をきたす場合。
③外傷や手術後の音が持続する場合。
理学療法士や整形外科医による評価(例:MRI、超音波、動作分析)を受け、
原因を特定することが重要です。
たとえば、腱板損傷や滑液包炎が疑われる場合、早期の介入が症状の悪化を防ぎます。
「医学的根拠」
- 理学療法士による評価と運動療法は、肩甲骨の異常な動きや
クレピタスの管理に有効です
(Page et al., *Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy*, 2010)。
- 日本理学療法士協会のガイドラインでは、肩関節の問題に対して
個別化された診断と治療が推奨されています(https://www.japanpt.or.jp/about_pt/therapy/tools/handbook/)。


まとめ
肩を回すとゴリゴリ音がする原因は、大きく分けて
①生理的要因(キャビテーション、腱のスナップ、筋膜の摩擦)と
②病理的要因(肩甲骨の異常な動き、軟骨の摩耗、腱板損傷、
滑液包炎、筋膜の癒着)があります。
これらのメカニズムは、関節内の圧力変化、軟部組織の摩擦、
神経系の調整不良、加齢による組織変性に起因します。
音自体は無害な場合が多いですが、痛みや機能障害を伴う場合は、
腱板損傷や変形性関節症などの問題を示唆し、姿勢不良、運動パフォーマンスの低下、
心理的ストレスなどの影響を及ぼします。
肩のゴリゴリ音が気になる場合は、まず痛みや制限の有無を確認し、
必要に応じて専門家に相談してください。
当院では、肩のゴリゴリ音だけでなく、膝・腰・股関節等についても
専門のアプローチをご提供しておりますので、
ご興味がある方はお問合せ頂けばと思います(๑•̀ㅂ•́)و✧
次回は、この「肩甲骨のゴリゴリ音対策」の方法をご紹介しますので、
楽しみにしておいてくださいね!
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)

**参考文献**:
- Kibler et al., *Journal of Shoulder and Elbow Surgery*, 2013.
- Robertson et al., *Journal of Anatomy*, 2017.
- Kawchuk et al., *Scientific Reports*, 2015.
- Stecco et al., *Journal of Bodywork and Movement Therapies*, 2016.
- Cools et al., *British Journal of Sports Medicine*, 2014.
- Loeser, *Arthritis & Rheumatology*, 2013.
- Seitz et al., *Clinical Orthopaedics and Related Research*, 2011.
- Wilke et al., *Journal of Bodywork and Movement Therapies*, 2016.
- Moseley & Butler, *The Journal of Pain*, 2015.
- Bigelow & Agrawal, *Journal of Vestibular Research*, 2015.
- Cruz-Jentoft et al., *Age and Ageing*, 2019.
- Escamilla et al., *Sports Medicine*, 2009.
- Lin et al., *Pain Medicine*, 2018.
- Page et al., *Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy*, 2010.

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安部元隆
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安部元隆(理学療法士)

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