Mybestpro Members

安部元隆プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

見落としがち!膝の内側の痛みは「伏在神経」その原因とメカニズムを徹底解説

安部元隆

安部元隆

テーマ:膝痛



こんにちは、GENRYUです(^^)
今回は、多くの方々が問題を抱えている「動き出す時」の
「膝の内側の痛み」についてその原因を深堀りしていこうと思います。
膝の内側の痛みは、運動や日常生活でよく見られる症状ですが、
その原因は半月板損傷や変形性膝関節症だけではありません。
伏在神経(Saphenous nerve)の障害が、膝の内側の痛みを
引き起こす重要な要因として注目されています。
今回のブログでは、伏在神経に問題が生じると膝の内側の痛みが発生する
メカニズムを、現代疼痛神経科学と医学的根拠に基づき、
深く掘り下げて解説していきますので、最後までご覧ください!


1. 痛みの本質:組織損傷を超えた複雑なプロセス
痛みは、身体の組織が損傷した際に生じる単純な感覚だと考えられがちですが、
現代の疼痛神経科学によれば、痛みは脳が身体を守るために構築する
複雑な防御プロセスだと考えられています。
この視点は、膝の内側の痛みを理解する上で重要です。
例えば、MRIで半月板の異常が確認された場合、
それが痛みの直接的原因であると決めつけるのは誤りです。
Brinjikjiら(2015)の研究では、症状のない人々の約80%に半月板の変性や
断裂が見られるにもかかわらず、痛みを訴えていないことが報告されています。
伏在神経障害は、膝の内側の痛みを引き起こす隠れた要因の一つであり、
組織損傷だけでなく、神経系の異常や脳の脅威認識が関与します。
以下では、伏在神経の解剖学的特徴と、それが膝の内側の痛みを引き起こす
メカニズムを詳細に探ります。


2. 伏在神経の解剖学的特徴
伏在神経は、大腿神経(Femoral nerve)から分岐する純粋な感覚神経で、
膝関節内側から下腿内側、足関節内側付近の皮膚感覚を支配します。




その解剖学的特徴は以下の通りです。
「起源」
腰椎1番(L1)から4番(L4)由来の大腿神経が、鼠径靭帯の下方で伏在神経として分岐。
「走行」
ハンター管(内転筋管)と呼ばれる筋膜性のトンネルを通り、
縫工筋、内側広筋、内転筋群に囲まれた環境を通過。
「分枝」
膝蓋下枝が膝内側の感覚を、內側下腿皮枝が下腿内側の感覚を担当。
「特徴」
運動神経を持たないため、障害されても筋力低下は生じませんが、
痛み、しびれ、感覚鈍麻、または感覚過敏(アロディニア)を引き起こします。
伏在神経は特に「ハンター管内」や「縫工筋付近」で圧迫(絞扼)されやすく、
これが膝の内側の痛みの原因となります。
松永ら(1997)の研究では、伏在神経の膝蓋下枝が縫工筋を貫通するケース(52.8%)や
縫工筋後縁を回るケース(41.7%)があり、これらの解剖学的変異が
圧迫のリスクを高めることが報告されています。


3. 伏在神経に問題が生じると膝の内側の痛みが発生するメカニズム
伏在神経に問題が生じると、膝の内側の痛みが発生するメカニズムは、
以下の4つの主要な要因に分けられます。
これらの要因は、神経学的、バイオメカニクス的、疼痛神経科学的視点から
相互に関連しています。
①神経の絞扼(圧迫)と炎症反応
伏在神経は、ハンター管や縫工筋付近で筋肉、筋膜、または
瘢痕組織による圧迫を受けやすい構造を持ちます。
この絞扼は、以下のようなプロセスを通じて痛みを引き起こします。
「機械的圧迫」
縫工筋や内側広筋の過剰な緊張、筋スパズム、または外傷後の瘢痕組織が
伏在神経を圧迫。ハンター管内の狭窄や筋膜の癒着が、神経の滑走性を低下させる。
「局所的炎症」
圧迫により神経周囲の血流が低下し、微小な炎症反応が引き起こされる。
この炎症は、C線維やAδ線維を刺激し、ピリピリとした神経性の痛みを誘発する。
「神経腫形成」
繰り返される圧迫や外傷(例:TKA:人工膝関節置換術後)により、
伏在神経に神経腫(Neuroma)が形成される場合がある。
JSTAGE(2023)の研究では、TKA後の患者の4~10%で
重度の神経性疼痛が持続し、神経腫が関与していたと報告されている。
この絞扼は、膝蓋骨上縁から指3~4本分上方(縫工筋と内側広筋の筋間)に
圧痛点を生じさせ、Tinel徴候(神経を叩くと放散痛が生じる)を
引き起こすことが特徴です。

②感覚入力の異常と脳の誤認識
伏在神経は、膝内側や下腿内側の感覚情報を脳に伝える役割を果たします。
圧迫や障害により感覚入力が乱れると、以下のようなメカニズムで痛みが発生します。
「感覚鈍麻または過敏」
神経の圧迫により、感覚情報が正確に脳に伝わらなくなる。
感覚鈍麻(触覚や振動の感覚低下)や感覚過敏
(軽い触れでも痛みを感じるアロディニア)が起こる。
「脳の誤認識」
感覚入力の異常により、脳は膝周辺に「脅威」が存在すると誤認する。
現代疼痛神経科学によれば、脳は不確実な情報を受け取ると、
防御的な反応として痛みを増幅させる。
このプロセスは、脊髄視床経路や脊柱感覚経路の異常によってさらに強化される。
「運動制御の障害」
感覚入力の乱れは、膝や足の空間的位置認識(固有感覚)を損なう。
本ブログ冒頭の症例では、患者が「足がコントロールできない」と
訴えたように、感覚入力の異常が運動制御の不安定感を引き起こし、
脳の脅威認識を高める。

③脳の脅威認識と痛みの増幅
痛みは、脳が身体を守るために構築する感覚と感情の複合体です。
伏在神経障害による感覚入力の異常は、脳の脅威認識を高め、
以下のプロセスで痛みを増幅します。
「中枢感作」
持続的な神経刺激により、脊髄や脳の神経回路が過敏になり、
通常は痛みを感じない刺激(例:軽い触覚)が痛みとして認識される。
Woolf(2011)の研究では、中枢感作が慢性疼痛の主要な
メカニズムであるとされています。
「情動的要因」
患者の恐怖や不安(例:「膝を触られるのが怖い」)が、脳の扁桃体や
前頭前野を活性化し、痛みの知覚を増強する。
「神経可塑性」
長期的な感覚異常により、脳の感覚野が再編成され、
膝内側の軽微な刺激が過剰な痛みとして認識されるようになる。

④バイオメカニクス的要因と神経へのストレス
伏在神経の圧迫は、単なる局所的問題だけでなく、
全身のバイオメカニクス的異常によっても引き起こされます。
以下の要因が、伏在神経へのストレスを増加させ、痛みを誘発します・
「膝の外反変形」
膝関節の外反(O脚)や下腿の外旋は、ハンター管や縫工筋に力学的負荷をかけ、
伏在神経を圧迫する。
「股関節や足関節の異常」
股関節の内旋制限や足関節の過回内は、膝内側の筋肉や筋膜に過剰な緊張を生じ、
伏在神経にストレスをかける。
「姿勢と歩行パターン」
前傾姿勢や足を引きずる歩行は、縫工筋や内側広筋の緊張を高め、
伏在神経の滑走性を低下させる。


4. 医学的根拠:伏在神経障害の研究
伏在神経が膝の内側の痛みの原因となるメカニズムを裏付ける研究は多数存在します。以下に、主要な医学的根拠を紹介します。
①松永ら(1997)の解剖学的報告
松永ら(1997)は、伏在神経の膝蓋下枝が縫工筋を
貫通するケース(52.8%)や縫工筋後縁を回るケース(41.7%)
があることを報告しました。
この解剖学的変異は、縫工筋の緊張や短縮が伏在神経を圧迫し、
膝内側の痛みを引き起こすリスクを高めます。
この研究は、伏在神経の圧迫が局所的要因に依存することを示しています。

②人工膝関節置換術後の伏在神経障害
人工膝関節置換術(TKA)後の伏在神経膝蓋下枝障害は、
70~100%の患者で発生し、4~10%で重度の疼痛や
知覚異常が持続することが報告されています(JSTAGE, 2023)。
術後の瘢痕組織や神経腫形成が、伏在神経の圧迫や刺激を引き起こし、
膝内側の神経性疼痛を誘発します。
この研究は、外傷や手術が伏在神経障害のトリガーとなることを示しています。

③症例報告:神経障害と感覚異常
ある症例報告では、20代女性が膝内側半月板損傷と
伏在神経障害の症状(しびれ、感覚鈍麻)を併発したケースが紹介されています。
内転筋管周囲のTinel徴候や筋スパズムが確認され、
神経の滑走性改善により症状が軽減しました。
この症例は、伏在神経障害が半月板損傷と誤診されやすいことを強調しています。

④ハンター管症候群の診断
ハンター管症候群の診断には、エコーガイド下のブロック注射が有効です。
膝を約70度屈曲させ、大腿骨内上顆から約10cm上方にリドカインを注射することで、
伏在神経に沿った放散痛を確認し、診断的治療を行います。
この方法は、伏在神経が痛みの原因であるかを特定するのに有用です。


5. 伏在神経障害のメカニズムを踏まえた治療の展望
伏在神経障害による膝の内側の痛みを治療するには、
以下のようなアプローチが効果的です(詳細は次回のコラムで解説します)。
**神経の減圧**
縫工筋や内側広筋の緊張を緩和し、伏在神経の滑走性を改善。
**感覚再教育**
軽い触覚や振動を用いて、脳への感覚入力を正常化。
**バイオメカニクス的調整**
膝の外反や下腿の外旋を矯正し、神経への力学的ストレスを軽減。
**心理的介入**
痛みの再概念化や恐怖軽減を通じて、脳の脅威認識を抑制。
これらのアプローチは、伏在神経の圧迫、感覚異常、脳の脅威認識、
バイオメカニクス的要因を総合的に扱うことで、痛みの根本的な改善を目指します。


まとめ
伏在神経に問題が生じると、膝の内側の痛みが発生するメカニズムは、
神経の絞扼、感覚入力の異常、脳の脅威認識、バイオメカニクス的要因の複合的な結果です。
ハンター管や縫工筋付近での圧迫が神経を刺激し、感覚異常や炎症を引き起こす一方、
脳はこれを脅威と誤認して痛みを増幅します。
さらに、膝や股関節の力学的異常が神経へのストレスを増悪させます。
現代疼痛神経科学と医学的根拠に基づく評価
(触診、神経学的検査、エコーガイド下診断)を活用することで、
伏在神経障害を正確に特定できます。
これらの適切な診断と治療を行うことで、膝の内側の痛みを効果的に管理できます。
当院では、膝の内側痛の痛みの方にこれらを踏まえて治療アプローチを
行っておりますので、ご興味がある方はお問合せくださいませ。
次回のコラムでは、伏在神経障害に対するストレッチと
マッサージの具体的手法を紹介しますので、楽しみにしておいてくださいね(๑•̀ㅂ•́)و✧
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)

**参考文献**
- Brinjikji, W., et al. (2015). Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. *American Journal of Neuroradiology*.
- 松永ら(1997)。伏在神経の解剖学的走行に関する研究。
- JSTAGE (2023). 人工膝関節置換術後に生じた伏在神経膝蓋下枝障害に対し神経腫切除術に至った5例。
- Woolf, C. J. (2011). Central sensitization: Implications for the diagnosis and treatment of pain. *Pain*.
- その他、WebおよびXの情報源(詳細は文中参照)。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

安部元隆
専門家

安部元隆(理学療法士)

GENRYU式 綜合整体

科学的根拠に基づいた知見と臨床経験から得られた知見を組合せ「根本原因を探し、戻りが少ない治療法」『GENRYUメソッド』を提供しています。問題点をキチンと細分化して捉え、1つ1つその問題を解決します。

安部元隆プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

整体とトレーニングによる美容とアンチエイジングのプロ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ大分
  3. 大分の美容・健康
  4. 大分のマッサージ
  5. 安部元隆
  6. コラム一覧
  7. 見落としがち!膝の内側の痛みは「伏在神経」その原因とメカニズムを徹底解説

安部元隆プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼