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「第二部」自分の股関節使えている?股関節を「使えているか」をどう見抜くかチェック方法

安部元隆

安部元隆

テーマ:股関節痛



こんにちは、GENRYUです(^^)
前回の記事では、股関節が本来持つ三平面
(屈曲伸展・外転内転・内外旋)の運動能力のうち、
多くの人が矢状面のヒンジ動作しか使えていない現状と、
その神経学的な背景について整理しました。
今回はその続きとして、「では自分の股関節は、実際に使えているのか」を
見抜くための評価の視点について掘り下げていきます。
ここで強調しておきたいのは、「動く」ことと「使える」ことは
まったく別の現象だという点です。
仰向けで力を抜いた状態なら股関節が大きく動くのに、
立位や歩行、負荷がかかった状況ではまったく機能しない、
というケースは臨床現場で非常に多く見られます。
評価の本質は、この「静的な可動域」と「動的な機能」の
ギャップを見つけ出すことにあります。
では、早速やっていきましょう!



1. なぜ「可動域があること」だけでは不十分なのか
一般的な柔軟性チェックの多くは、
他動的(誰かに動かしてもらう、あるいは重力に任せる)な条件で行われます。
しかし、痛みや動作の改善に本当に必要なのは、
自分自身の神経系が、その可動域を
「能動的に」「予測して」「負荷下で」制御できるかどうかです。
これは、いわゆる active range of motion と
passive range of motion のギャップ、
専門的には motor control deficit と呼ばれる現象と関係しています。
他動的には90度曲がる股関節が、能動的には60度までしか
曲げられない場合、その差の30度は「組織的な制限」ではなく
「中枢神経系がその範囲の運動を許可していない」ことを意味している
可能性が高いのです。
したがって評価の第一歩は、他動可動域ではなく、能動的な、
しかもできれば負荷や不安定性を伴った状況での運動の質を見ることにあります。




2. 三平面それぞれの評価視点
2-1. 矢状面(屈曲・伸展)の評価
矢状面の動きは比較的多くの人が保持していますが、
それでも見落とされがちなのが「股関節伸展」です。
長時間の座位生活によって、股関節伸展方向の可動域と、
それを能動的にコントロールする神経学的な
準備状態(股関節屈筋群の遠心性コントロールを含む)が
乏しくなっているケースが非常に多く見られます。
評価としては、片脚立位からもう一方の脚を後方に伸ばす動作(股関節伸展)を
行った際に、骨盤の前傾や腰椎の過伸展で代償していないかを確認します。
骨盤や腰椎が先に動いてしまう場合、股関節そのものの伸展可動域と、
それを制御する神経学的なコントロールの両方、
あるいはどちらかが不足しているサインです。

2-2. 前額面(外転・内転)の評価
前額面での評価の代表格は、片脚立位での骨盤の水平保持です。
反対側の骨盤が沈み込む、いわゆるトレンデレンブルグ徴候的な
現象が見られる場合、股関節外転筋群(中殿筋など)による
前額面の安定化が機能していないことを示唆します。
ここで重要なのは、単に「中殿筋が弱い」という
筋力の問題として片付けないことです。
中殿筋自体の筋力があっても、その収縮タイミングや、
股関節の位置感覚と連動した微調整(いわゆるモーターコントロール)が乏しければ、
片脚立位での骨盤コントロールは崩れます。
評価の際には、静止した片脚立位だけでなく、
軽くジャンプして着地した瞬間の骨盤の安定性
(動的な負荷下でのコントロール)まで見ることで、
より実践的な機能不全を見抜くことができます。

2-3. 水平面(内旋・外旋)の評価
水平面の評価は、最も見落とされやすく、
同時に最も重要度が高い部分です。
歩行時の骨盤の対側回旋、投球・打撃動作における
体幹と下肢の分離運動(セパレーション)は、
すべて股関節の内外旋可動性と、それを制御する能力に依存しています。
評価方法としては、座位での股関節内旋・外旋可動域の
左右差を見ることに加え、立位での体幹回旋動作時に、
骨盤がどこまで独立して動けているか
(股関節から回旋が生まれているか、腰椎から回旋が生まれてしまっているか)を
観察します。
多くの人は、体幹を捻ろうとすると、股関節ではなく
腰椎から先に回旋が生まれてしまいます。
これは典型的な「股関節が使えていない」パターンであり、
腰痛の温床になりやすい代償動作です。




3. 「負荷下でのテスト」がなぜ本質的に重要なのか
先述の通り、股関節の機能不全の多くは、
無負荷・低速度の状況では隠れてしまいます。
これは、中枢神経系が低リスクな状況では防御的な制限を緩めるためです。
しかし、実際の歩行、まして競技動作では、荷重や速度、
不安定性といった要素が加わった状態で股関節が機能する必要があります。
したがって評価においては、以下のような段階的な負荷付与が有効です。
●静止立位での骨盤コントロール(低負荷)
●歩行時の骨盤・胸郭の分離運動の観察(中負荷)
●片脚でのジャンプ着地、方向転換動作の観察(高負荷)
●実際の競技動作(投球・打撃・走行)における
股関節の動員パターンの観察(競技特異的負荷)
負荷レベルが上がるにつれて、隠れていた代償パターンが顕在化してきます。
低負荷では綺麗に見える動作が、負荷が上がった途端に
腰椎回旋優位の代償パターンに崩れる、というのは
臨床現場で非常によく観察される現象です。




4. 「動かせるけど使えない」を見抜くための鑑別ポイント
評価において重要なのは、可動域の量そのものよりも、
その可動域が「どのように」生み出されているかを見ることです。
以下のようなポイントが、股関節が本当に機能しているかどうかを
見分ける手がかりになります。
まず、動作の起点(イニシエーション)がどこから始まっているかを見ます。
股関節から動き始めているのか、それとも腰椎や膝から動き始めているのか。
次に、動作中の代償の有無を見ます。
骨盤の傾き、腰椎の過伸展・過屈曲、膝の内側への入り込み(knee-in)などが
見られる場合、それは股関節がその役割を果たせていない代償のサインです。
さらに、左右差の有無も重要な情報です。
多くの人は利き足・軸足の違いによって、股関節の機能に左右差を持っています。
この左右差そのものが、代償パターンの固定化や、
特定側への負担集中、ひいては痛みの発生部位の予測に役立ちます。




5. セルフチェックとしての落とし込み(一般読者向け)
臨床評価をそのまま一般読者に提供することは難しいため、
ブログでは以下のような簡易的なセルフチェックとして落とし込むことができます。
●片脚立位を10秒キープしたとき、反対側の骨盤が沈み込まないか鏡で確認する
●四つ這いの姿勢から片脚を後方に伸ばしたとき、
 腰が反ってしまわないか確認する
●座った状態で片方の膝を立て、上半身を捻ったとき、
 どちらの方向が窮屈に感じるか左右差を確認する
●歩いているとき、腕の振りに対して骨盤が一緒に回って
 しまっていないか(本来は胸郭と骨盤が逆方向に捻れる
 分離運動が起こるはず)を意識してみる
これらは診断ツールではなく、あくまで
「自分の股関節が、日常的にどれだけ多平面で使われているか」に
気づくためのきっかけとして提示するのが良いでしょう。




おわりに
股関節が「使えているか」を評価するということは、
単純な柔軟性検査ではなく、能動的なコントロール、
負荷下での安定性、そして左右差や代償パターンまで含めた、
包括的な運動の質の観察を意味します。
次回は、この評価によって明らかになった「使えていない股関節」を、
どのように獲得し直していくか、
そのトレーニングの段階的なプロセスについて整理していきます。
評価は、トレーニングの出発点であると同時に、
その人自身が自分の身体をどう捉えているかを変える、
教育的な意味合いも持っています。
「動くけど使えていない」という事実に気づくこと自体が、
股関節軸を取り戻す第一歩になると思います。
ぜひ、次回のコラムも楽しみにしておいてくださいね(๑•̀ㅂ•́)و✧
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)

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安部元隆
専門家

安部元隆(理学療法士)

GENRYU式 綜合整体

科学的根拠に基づいた知見と臨床経験から得られた知見を組合せ「根本原因を探し、戻りが少ない治療法」『GENRYUメソッド』を提供しています。問題点をキチンと細分化して捉え、1つ1つその問題を解決します。

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