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安部元隆プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

筋膜の構造とCC・CFをひも解く「筋膜の基本原理」を徹底解説

安部元隆

安部元隆

テーマ:筋膜リリース



こんにちは、GENRYUです(^^)
ここ数年で「筋膜リリース」という言葉が巷に浸透してきたことで、
「筋膜」って大切なんだという意識が共有出来るようになってきました。
「筋膜」というのも奥が深く、より理解して頂くことで、
あなたの不調をより改善出来るようになります!
そこで今回からこの「筋膜」をもう少し深堀りして、
よりよく理解して頂き、ご自身でも「筋膜リリース」が出来るようになって頂くため、
シリーズでまとめてみようと思います。
ちなみに、僕が治療で使っている技術の一つが「筋膜マニュピレーション」というものなので、
そこから始めていこうと思います。


筋膜マニピュレーションの基本原理
「筋膜リリース」にはいくつかの方法があり、
僕がオススメしたいのは「筋膜マニュピレーション」というものです。
筋膜マニピュレーション(Fascial Manipulation、FM)は、
筋膜(fascia)の解剖学・生理学を基盤に、筋骨格系疼痛や
機能障害を治療する手法です。
その理論的核心である「基本原理」は、筋膜の構造、機能、
異常のメカニズムを体系化し、科学的根拠を提供していきます。
特に、協調中心(Centre of Coordination, CC)と融合中心(Centre of Fusion, CF)は、
筋膜の異常を特定し、効率的にリリースするための鍵となる概念です。
この記事では、FMの基本原理を5つの柱に分け、特に筋膜の構造と連続性を充実させ、
CCとCFという用語を中心になるべくわかりやすく詳細に解説していきますね。


基本原理1:筋膜の構造と連続性
筋膜(fascia)は、全身の運動器官(筋肉、骨、関節、靭帯、神経など)を包み、
連結する結合組織のネットワークです。
「第2の骨格」とも呼ばれ、体の構造と動きを支えます。
筋膜は複数の層で構成され、それぞれが特定の役割を果たします。
以下に、筋膜の構造を詳細に解説していきます。
【筋膜の層と役割】


①浅筋膜
構造:皮膚直下に位置し、疎性結合組織と脂肪組織で構成される。
   コラーゲン線維とエラスチン線維がゆるやかに編み込まれ、柔軟性が高い。
役割:体温調節、保護、栄養供給を担う。血管や神経が通り、皮膚と深部組織をつなぐ。
   例:皮下脂肪層。
特徴:高い伸縮性を持ち、体の表面全体を覆う。運動時の皮膚の滑りを助ける。
②深筋膜
構造:筋肉や筋群を包む緻密な結合組織。コラーゲン線維が規則的に配列し、強度が高い。
役割:筋肉の力を伝達し、動きの調整を担う。筋群を分離し、滑走性を確保。
   例:大腿四頭筋を包む筋膜。
特徴:筋肉の収縮を効率的に伝達し、関節の安定性を補助。
③筋外膜
構造:個々の筋肉を包む薄い膜。コラーゲン線維が筋線維に沿って配列。
役割:筋肉の形態を維持し、筋繊維間の滑走性を確保。力の伝達を補助。
特徴:筋肉の収縮時に摩擦を減らし、効率的な動きを可能にする。
④筋周膜・筋内膜
構造:筋肉内部の結合組織。筋周膜は筋束を、筋内膜は個々の筋繊維を包む。
役割:筋繊維間の滑走性を維持し、微細な力の調整を担う。
特徴:筋肉の微小な動きをサポートし、筋収縮の効率を高める。
⑤筋膜の連続性
筋膜の最大の特徴は連続性です。全身の筋膜は途切れなくつながり、
ネットワークを形成します。
この連続性により、体の遠隔部位が互いに影響します。
例えば、足首の筋膜異常が腰痛や肩の動きの制限を引き起こすことがあります。
⑥解剖学的連続性
筋膜は、頭部から足先まで、骨、筋肉、関節、靭帯、神経をつなぎます。
例:首の深筋膜は背中の筋膜、骨盤、脚へと連続。
⑦機能的連続性
筋膜は力の伝達を効率化します。
例:腕を振る動作では、肩の筋膜が背中、骨盤、脚の筋膜と連動。
イメージ:筋膜を「全身を包むスパイダーウェブ」に例えるとわかりやすいです。
一部が引っ張られたり硬くなったりすると、ウェブ全体のバランスが崩れ、
動きや姿勢に影響が出る。

筋膜の進化的役割
進化の視点からも、筋膜の連続性は重要です。魚類から哺乳類への進化で、
筋膜は四肢の運動や姿勢を支える「第2の骨格」として発達しました。
例:哺乳類の四足歩行では、筋膜が筋肉の力を効率的に伝達し、エネルギーを節約。
この連続性が、現代人の複雑な動き(例:歩行、投球)を可能にします。
筋膜の神経支配と感覚
筋膜には、自由神経終末や感覚受容器(例:ルフィニ小体、ゴルジ腱器官)が
豊富に存在します。


これにより、筋膜は以下の機能を果たします。
感覚機能:筋膜は圧力、伸張、痛みを感知。例:筋膜の硬さが痛みとして感じられる。
運動制御:神経系と連携し、筋肉の協調や関節の位置覚を調整。
例:不良姿勢で首の筋膜が伸張されると、神経終末が刺激され、肩こりや頭痛が発生。
筋膜の連続性の臨床的意義
筋膜の連続性は、疼痛の原因が局所と異なることを説明します。
例:膝の痛みが腰の筋膜異常による場合、腰の筋膜を治療することで膝の症状が改善。
この原理は、筋膜の異常を全身のネットワークから特定するFMのアプローチの基盤です。


基本原理2:筋膜機能異常のメカニズム
筋膜の異常は、筋骨格系疼痛や関節可動域制限の主要な原因です。
外傷、過度な負荷、不良姿勢、循環不全などがきっかけで、
筋膜に以下のような変化が生じます。
①コラーゲン束のねじれ
筋膜のコラーゲン線維がねじれ、硬くなる。筋膜の柔軟性が低下し、動きが制限される。
②ヒアルロン酸の凝集化
筋膜の基質(ゲル状の物質)が凝集し、層間や筋肉との滑走性が低下。
③高密度化
筋膜が「ゲル状態」になり、硬く、流動性が失われる。
これらの変化は、筋膜の滑走性(筋肉や関節がスムーズに動くための柔軟性)や
順応性(負荷に適応する能力)を損ないます。
結果として、筋肉の協調が乱れ、疼痛や動きの制限が生じます。
例:長時間のデスクワークで首の深筋膜が硬くなると、
首の動きが制限され、頭痛や肩こりが発生。
「詳細なメカニズム」
ヒアルロン酸の凝集化により、筋膜と筋肉の滑りが悪化。
コラーゲン線維のねじれが筋膜の張力を不均衡にし、関節や筋肉に過剰な負荷がかかる。
筋膜の異常は、局所的な問題にとどまらず、連続性を介して全身に影響を及ぼします。
例:足首の筋膜異常が、筋膜の連鎖を通じて腰や背中の疼痛を引き起こす。


基本原理3:協調中心(CC)と融合中心(CF)
協調中心(CC)と融合中心(CF)は、FMの核心的概念であり、
筋膜の異常を特定するためのポイントです。以下で、両者をわかりやすく解説します。
協調中心(CC)とは?
協調中心(Centre of Coordination, CC)は、特定の筋肉や
筋群の動きを調整するために、筋膜内で筋力のベクトル(力の方向)が集まるポイントです。
簡単に言うと、ある動きをスムーズにするための「コントロールセンター」です。
「イメージ」
CCを「交通の信号機」に例えるとわかりやすい。
信号機が特定の交差点で車の流れ(筋肉の力)を調整。
信号機が故障すると、渋滞(痛みや動きの制限)が起こる。
「位置」
深筋膜や筋外膜に存在し、特定の筋肉に関連。
例:腕を曲げるCCは上腕二頭筋の筋膜に。
「役割」
筋肉の収縮や関節の動きを調整し、力の方向やタイミングを整える。
筋膜の張力バランスを局所的にコントロール。
「異常の影響」
CC周辺の筋膜が高密度化すると、筋肉の協調が乱れ、
動きがぎこちなくなり、痛みが生じる。
「数」
全身に約80~100のCCが存在。
「具体例」
肩を上げる動きには、僧帽筋や三角筋のCCが関与。
このCCが硬くなると、肩の動きが制限され、肩こりや痛みが。
デスクワークで僧帽筋のCCが硬くなり、肩を上げる動作が制限。
硬いポイントを確認し、治療で改善。
「解剖学的特徴」
CCは、筋膜内でコラーゲン線維が集中する領域に位置。
筋肉の起始・停止部や腱との接続部に近い。
「ポイント」
CCは局所的なポイントで、特定の筋肉や動きに特化。
従来の「ツボ」や「トリガーポイント」と約80%一致するが、
FMでは筋力ベクトルの科学的分析に基づく。
CCは、筋膜の連鎖の中で「問題が集中するポイント」。

融合中心(CF)とは?
融合中心(Centre of Fusion, CF)は、複数のCCの影響が
融合(統合)されるポイントです。
簡単に言うと、複雑な動作や複数の筋群を調整する「ハブ」です。
「イメージ」
CFを「大きなターミナル駅」に例えるとわかりやすい。
複数のローカル線(CC)が集まり、全体の流れ(複雑な動き)を管理。
駅が混雑すると、全体の移動が滞る。
「位置」
複数のCCが関わる筋膜の領域に。
例:肩、肘、手首のCCが連なる上肢のCF。
「役割」
複数のCCからの筋力や張力を統合し、複雑な動作(例:投球、歩行)をスムーズに。
全身の筋膜の連鎖を調整。
「異常の影響」
CFが硬くなると、広範囲の動きや全身のバランスが乱れる。
例:腰のCF異常で歩行や体幹の動きが制限。
「数」
全身に20~30のCFが存在。
「具体例」
歩行には、骨盤、股関節、背中のCCが連動。腰のCFがこれを調整。
CFが硬くなると、歩行がぎこちなく、腰痛が。
立ち仕事で腰のCFが硬くなり、歩行時に骨盤が不安定。
硬いポイントを確認し、治療で歩行がスムーズに。
「解剖学的特徴」
CFは、複数の筋膜層が交差する領域に位置。
例:腰のCFは、腰方形筋と大殿筋の筋膜が重なる部位。
「ポイント」
CFは広範囲の調整ポイントで、複数のCCや筋群を結びつける。
CCと連携し、局所と全体のバランスを整える。
CFは、筋膜の連鎖を管理する「中継点」として、全身の機能に影響。
CCは単一の筋肉や関節の動きに焦点を当て、CFは複数の筋群の連鎖を調整。
例:肩こりの場合、肩のCCが局所の痛みを、
肩と腕のCFが全体の動きの制限を担う。


基本原理4:摩擦法による筋膜の調整
筋膜の異常を治療するために、FMでは摩擦法を用います。
これは、CCやCFに指や肘で圧を加え、摩擦により熱を生み出す手法です。
「メカニズム」
摩擦で熱が筋膜に発生すると、基質が「ゲル状態」から
「ゾル状態」(流動性のある状態)に変化。
コラーゲン線維の癒着が解消され、筋膜の滑走性が回復。
ヒアルロン酸の凝集化が緩和され、層間や筋肉との摩擦抵抗が減少。
「効果」
筋膜の硬さが解消され、筋肉の協調や関節の動きが改善。
痛みが軽減し、全身の筋膜のバランスが整う。
「例」
膝の痛みの場合、膝のCCに摩擦を加え、局所の筋膜を緩和。
さらに、腰のCFに摩擦を加えて全身の連鎖を調整。
肩の動きが制限された場合、僧帽筋のCCと上肢のCFに摩擦を加え、
局所と全体のバランスを改善。
「ポイント」
摩擦法は局所的な治療だけでなく、筋膜の連鎖を考慮。
CCとCFの両方を治療することで、効率的に効果を高める。


基本原理5:生体力学と進化の視点
FMは、従来の運動学(関節や筋肉の動き)とは異なる、
筋膜の特性を生かした生体力学モデルを採用します。
「進化の視点」
魚類から哺乳類への進化で、筋膜は四肢の運動や姿勢の維持を支える「第2の骨格」として発達。
例:筋膜は、筋肉の力を効率的に伝達し、エネルギーを節約。
生体力学モデル:
筋膜の連続性を活用し、力の伝達や動きの連鎖を分析。
例:腕を振る動作は、肩、背中、骨盤の筋膜が連動して行う。
筋膜の張力は、全身の動きのバランスを調整し、関節の負荷を軽減。
ポイント:
このモデルは、局所的な筋肉や関節の分析を超え、筋膜の連鎖性を重視。
痛みの原因を筋膜の連鎖から特定。
CCとCFの実際の例
例1:肩の動きの制限と疼痛
症状:デスクワークで肩こり、腕を上げる動作で痛い。
ポイント:
CC:僧帽筋で局所的な筋肉の協調を調整。
CF:肩と肘の連鎖を調整し、全体の動きを管理。
結果:
CCに摩擦を加え、僧帽筋の筋膜を緩和。肩の動きが改善。
CFに摩擦を加え、肩と肘の連鎖を調整。腕を上げる動作がスムーズに。
例2:腰痛と歩行の困難
症状:立ち仕事で腰痛、歩くと足が重い。
ポイント:
CC:足首で局所的な足の動きを調整。
CF:腰で骨盤と背中の連鎖を調整。
結果:
CFに摩擦を加え、腰の筋膜のバランスを整える。腰痛が軽減。
CCに摩擦を加え、足首の動きを改善。歩行がスムーズに。
「基本原理の科学的根拠」
FMの基本原理は、Carla Stecco博士やAntonio Stecco博士の研究により、
科学的裏付けがされています。
「解剖学」
筋膜の構造(浅筋膜、深筋膜、筋外膜など)が詳細に解明。CCやCFの位置が特定。
「生理学」
ヒアルロン酸の凝集化や筋膜の滑走性のメカニズムが説明。
「病理学」
筋膜の異常が高密度化や疼痛の原因であることが証明。
「ポイント」
CCやCFは、解剖学と筋力学に基づくポイントで、治療の精度を高める。


まとめ:基本原理の意義
筋膜マニピュレーションの基本原理は、以上の5つの柱で構成されています。
もう一度まとめると、
①筋膜の構造と連続性
浅筋膜、深筋膜、筋外膜などが全身のネットワークを形成。
②筋膜機能異常のメカニズム
コラーゲンやヒアルロン酸の変化が疼痛の原因。
③協調中心(CC)と融合中心(CF)
CC:局所的な動きを調整する「信号機」。
CF:複雑な動作を統合する「ターミナル駅」。
④摩擦法
筋膜の異常を熱で解消。
⑤生体力学と進化の視点
筋膜の連鎖を活かした動的モデル。
特に、筋膜の構造と連続性は、FMの理論的基盤であり、
CCとCFは筋膜の異常を効率的に特定し、局所と全身のバランスを調整する鍵です。
筋膜の科学を学ぶことで、筋骨格系疼痛の新たな視点が得られます。
この基本をもとに、次回からのコラムでいくつかの「筋膜マニュピレーション」の方法を
具体的に解説していこうと思いますので、楽しみにしておいてくださいね(๑•̀ㅂ•́)و✧
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)

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安部元隆
専門家

安部元隆(理学療法士)

GENRYU式 綜合整体

科学的根拠に基づいた知見と臨床経験から得られた知見を組合せ「根本原因を探し、戻りが少ない治療法」『GENRYUメソッド』を提供しています。問題点をキチンと細分化して捉え、1つ1つその問題を解決します。

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