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庄司英尚

現場を大事にする社会保険労務士

庄司英尚(しょうじひでたか) / 社会保険労務士

株式会社アイウェーブ(アイウェーブ社労士事務所 併設)

コラム

競合他社への転職制限で退職金不払い「無効」 東京地裁

2012年1月17日 公開 / 2014年7月31日更新

テーマ:判決・判例紹介

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 退職 手続き退職金制度 導入

みなさんこんにちわ

社会保険労務士の庄司英尚です。

競合他社 転職 制限 退職金 減額 不払い 無効 裁判 判決

少し前の朝日新聞の記事からです。




朝日新聞

競合他社への転職制限で退職金不払い「無効」 東京地裁
 
「退職後2年以内に競合他社に移れば、退職金全額を払わない」と合意
させられたのは無効だとして、米生命保険大手の日本支店の元執行役員の
男性が同社に退職金の支払いを求めた訴訟の判決が13日、東京地裁で
あった。光本洋裁判官は「合意は公序良俗に反して無効」と述べ、男性の
請求通りに約3030万円の支払いを同社に命じた。

 被告は米国に本社を置く「アメリカン・ライフ・インシュアランス・カ
ンパニー」。

 判決によると、同社と男性は2005年に退職金支払いについて話し
合った際に、競合他社への転職の制限について合意した。しかし、男性は
この合意に反して、09年6月に同社を退社した直後の同年7月に別の生
命保険会社の副社長に就任したため、同社から退職金の支払いを拒まれ
た。

 判決は「顧客情報の流出を防ぐ目的で、競合他社への転職を禁止すると
いう手段は過大だ」などと指摘。「労働者の職業選択の自由を不当に害し
ており、公序良俗に反する」と結論づけた。

 会社側は「判決を見ていないのでコメントは差し控える」としている。

(引用ここまで)

asahi.comのニュース
http://www.asahi.com/national/update/0113/TKY201201130695.html



実際の事例なので大変参考になります。

他の企業でも競合他社への転職を制限するために
このようなルールを定めていることはあると思います。

競合他社への転職を禁止するという制約は、一定の
条件をつけた上で、ある程度のポジションにいる人に
課す場合があります。

もちろんその対象の範囲も相当でなければなりませんし
職業選択の自由がある以上、合理的な内容でなければ
無効になってしまいます。

これらは競業避止義務契約といいますが、このような
契約をする企業も、年々増えているとともにトラブルも
増加しています。

今回は、この記事からは会社が退職金の支払いを拒否したことと、男性が
合意に反して副社長に就任したことという事実しかわからないので
何ともいえませんが実際には、合意の文書や就業規則の内容によって
大きく変わるところでもあります。

米生命保険大手の日本支店の元執行役員というポジションから考えれば
一般的に競業避止義務を課すのは、おかしくはないのですがあくまで
実態ベースで判断されますので職種や扱っている業務にもよります。

さて、競業避止義務が有効なもので、その契約があるにもかかわらず、
それを無視して就職し、企業側が大きな損害を受けたのであれば、
それは大きな問題です。


今回の判決では、

転職したら、退職金を支給しないということまでの合意は
公序良俗に反するということなので、今後はあらためて
他の企業も契約を見直す必要があるところもあるでしょう。

企業側が辞めた従業員に振り回されてしまい、不利益を被るのは
許されることではありませんが、そもそもがあまりにも無茶な
契約内容の場合、それ自体が無効になることもあるかと思います
ので、そのあたりを慎重に判断して業務を進めていくべきかと思います。

いずれにしても今回のケースは、別のメディアによると
男性は機密情報に触れる立場になく、転職後は異なる業務に
携わっていたとして「アリコ社(アメリカンライフインシュアランス
カンパニー)に実害が生じたとは認められない」
と判断しました。また加えて「転職先が同じ業務を行っていると
いうだけで転職自体を禁じるのは制限として広すぎる。禁止期間も
相当ではない」と指摘しています。

おそらくこの2年の制限は、普通にみても問題がありますし
何より最初にも指摘したとおり、実害が出るとは考えにくい
場合、そもそもの契約が無効になってしまうことになってしまい
ます。過去の判決がたくさんありますのでこのあたりを知らないで
強引に契約をしているとはあまり思いたくないのですが
実際はどうだったのかわかりません。

執行役員という労働者の実態と仕事内容が重要になりますので
そのあたりもよく理解しておかないといけません。

参考になるコラムを以下にご紹介しておきます。

競業避止義務に関するトラブル  現場での解決に全力を注ぐ
http://mbp-japan.com/tokyo/iwave/column/6492/

ヤマダ電機 元幹部社員へ140万円の支払い 競業避止義務
http://mbp-japan.com/tokyo/iwave/column/10780/



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