リスクと向き合う:メンタルヘルス検査義務化に批判
少し前のコラムでは、メンタルヘルスについて「新型うつ」について、そういう症状の人が増えていて、従来のうつ病とは違う特徴があるということをまず理解しておきましょうということを書きました。
メンタルヘルスは一番重要な労務管理のテーマなのでここで取り上げておきたいと思います。ある人事担当者の方からの質問です。
「医者に、うつ病で働くことはできないと言われて休んでいる場合には、労災の請求はできるのか?」という主旨の内容でした。従業員からいきなり電話がかかってきて普通に質問されたようですが、いきなり「労災」などといわれるとびっくりするような内容ですよね?
休み始めて2週間たったところだったようで、傷病手当金についての説明や手続についてもこれからだったかもしれませんね。一般的には、会社が健康保険の傷病手当金を請求することになりますが、これは業務外の傷病だからです。
しかしながら場合によっては、労災認定されることもあります。もちろん労災のほうが給付は手厚いですし、何より通院している医療費が負担がなくなります。
そんなわけで、私の上記の質問に対しての答えとしては、
場合によっては長時間労働による過労・ストレス、セクハラ、パワハラ等が主たる原因なら、業務に起因する傷病として労災認定を受けることができる可能性があります。ただし、要件を満たすことが必要です。
今年6月の厚生労働省の発表では、仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症したとして労災申請した人は、前年度に比べて2割も増加し、合計1,136人に上りました。
右上のグラフをみていただくと精神障害等に係る労災請件数が20年度から21年度(赤い枠で囲っています)で急上昇しているのがわかります。(厚生労働省資料から弊社が独自作成したもの。流用、転載禁止)
これは認定基準が変わったこともありますが、それだけうつ病等に関しての理解が社会全体に浸透しはじめてきて、もしかしたら私ももらえるのではないかと思って請求している人が増えている可能性もあります。
労災で業務上災害と認定されてしまうと当然ながら民事上の責任を会社は追及される可能性もあるわけです。
また労災事故により休業している間及び職場復帰後30日間は、解雇することはできません。
大事なのは、どういう要件の場合に、労災認定されるのかということになります。非常に難しくて細かいところなので、ここでは省略しますが、とにかくまず残業時間が異常に多いところは危険です。
企業には職場環境の安全を図る義務、いわゆる安全配慮義務がありますが、それをきちんと守れないときは損害賠償請求されることもあるということも覚えておきましょう。