右肩の痛みを改善する方法

こんにちは、GENRYUです(^^)
肩を回す際に聞こえる「ゴリゴリ」や「ポキポキ」といった音(クレピタス)は、
多くの人が経験する現象です。
前回のブログでは、この音がキャビテーション、腱のスナップ、
筋膜の摩擦といった「生理的要因」や、
肩甲骨の異常な動き、関節軟骨の摩耗、腱板損傷などの「病理的要因」によって
引き起こされるメカニズムを解説しました。
今回は、これらのゴリゴリ音を軽減し、肩の健康を取り戻すためのセルフケア方法を、
最新の医学的根拠と研究に基づき詳しく紹介します。
肩のゴリゴリ音に悩む方々が、不安を解消し、快適な動きを
取り戻すためのガイドとなれば幸いです!
1. セルフケアの目的とアプローチの概要
肩のゴリゴリ音を改善するセルフケアの目的は、以下の3点に集約されます。
①肩甲骨と肩関節の柔軟性・安定性の向上
筋肉の不均衡や筋膜の癒着を解消し、滑らかな動きを取り戻す。
②神経系の調整
脳の「脅威認識」を軽減し、筋肉の過剰な緊張を和らげる。
③組織の健康維持
関節軟骨や筋膜の変性を予防し、長期的な肩の健康をサポート。
セルフケアのアプローチは、ストレッチ、アイソメトリックエクササイズ、
モビリティドリル、姿勢矯正、神経科学ベースのトレーニングを
組み合わせることで、ゴリゴリ音の原因(生理的・病理的)を包括的に対処します。
これらの方法は、自宅で簡単に実践可能で、痛みがなく安全に行えるよう
設計させて頂きました。
「医学的根拠」
- 肩甲骨の安定化と柔軟性の向上は、クレピタスや肩の機能障害の軽減に
有効である(Hsu et al., *Physical Therapy in Sport*, 2015)。
- 神経科学に基づく運動療法は、脳の疼痛処理を改善し、
筋肉の協調性を高める(Bialosky et al., *Physical Therapy*, 2018)。
2. セルフケアの具体的な方法
以下に、肩のゴリゴリ音を軽減するためのセルフケア方法を、
具体的な手順とともに詳しく解説します。
各方法は、医学的根拠に基づき、肩甲骨の動き、筋肉のバランス、
神経系の調整をターゲットにしています。
(1)ストレッチ:筋肉と筋膜の緊張を解放
肩甲骨周辺の筋肉(大胸筋、僧帽筋、前鋸筋など)や筋膜の緊張は、
ゴリゴリ音の主要な原因です。
ストレッチは、筋肉の短縮や筋膜の癒着を解消し、滑らかな動きを回復します。
①大胸筋ストレッチ(ドア枠ストレッチ) 
「目的」
大胸筋の短縮を解消し、肩甲骨の前方傾斜を軽減。
「手順」
1. ドア枠に両手を肩の高さで置き、肘を90度に曲げる。
2. 体をゆっくり前に傾け、胸が開くのを感じる。
3. 30秒間キープし、深呼吸を意識。左右交互に2~3セット行う。
「ポイント」
痛みが出ない範囲で伸ばし、過度な力を避ける。
「医学的根拠」
大胸筋のストレッチは、肩甲骨の前方傾斜を改善し、関節の摩擦を軽減する
(Borstad & Ludewig, *Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy*, 2005)。
②僧帽筋上部ストレッチ
「目的」
僧帽筋の過緊張を緩和し、肩甲骨の挙上制限を解消。
「手順」
1. 右手を左耳の上に置き、頭を右肩に近づける。
2. 左肩を軽く下げ、僧帽筋上部の伸びを感じる。
3. 30秒間キープし、反対側も同様に2~3セット行う。
「ポイント」
首の動きを滑らかに保ち、呼吸を止めない。
「医学的根拠」
僧帽筋のストレッチは、肩こりやクレピタスの軽減に有効である
(Cools et al., *British Journal of Sports Medicine*, 2014)。
③フォームローラーを使った筋膜リリース
「目的」
筋膜の癒着を解消し、肩甲骨の滑動性を向上。
「手順」
1. フォームローラーを背中の肩甲骨下部(僧帽筋下部や菱形筋付近)に置く。
2. 体をゆっくり上下に動かし、硬い部分を30~60秒マッサージ。
3. 1日1~2回、痛みが出ない範囲で行う。
「ポイント」
強い圧迫は避け、軽い圧で筋膜をほぐす。
「医学的根拠」
筋膜リリースは、筋膜の滑動性を改善し、肩甲骨の動きとクレピタスを軽減する
(Wilke et al., *Journal of Bodywork and Movement Therapies*, 2016)。
(2)アイソメトリックエクササイズ:筋肉の協調性と安定性を強化
アイソメトリックエクササイズは、関節を動かさずに筋肉を収縮させる方法で、
肩甲骨の安定性を高め、脳の「脅威認識」を軽減します。
ゴリゴリ音の原因となる筋肉の不均衡や神経系の過剰反応を改善します。
①壁を使った肩甲骨押し込み
「目的」
前鋸筋を活性化し、肩甲骨の滑らかな動きを促進。
「手順」
1. 壁に両手を肩の高さで置き、肘を軽く曲げる。
2. 肩甲骨を背骨に向かって寄せるように、壁を30~40%の力で10~15秒押し込む。
3. 5~10回繰り返し、呼吸を自然に保つ。
「ポイント」
肩に力を入れすぎず、肩甲骨の動きに意識を集中。
「医学的根拠
前鋸筋のアイソメトリック収縮は、肩甲骨の安定性を高め、
クレピタスを軽減する(Hsu et al., *Physical Therapy in Sport*, 2015)。
②肩甲骨の下方回旋エクササイズ
「目的」
僧帽筋下部を強化し、肩甲骨の前方傾斜を修正。
「手順」
1. 椅子に座り、両手を太ももに置く。
2. 肩甲骨を下に引き下げるように、30~40%の力で10秒キープ。
3. 5~10回繰り返し、深呼吸を意識。
「ポイント」
首や肩の力を抜き、肩甲骨だけを動かすイメージ。
「医学的根拠」
僧帽筋下部の強化は、肩甲骨の異常な動きを改善し、摩擦音を軽減する(
Cools et al., *British Journal of Sports Medicine*, 2014)。
(3)モビリティドリル:肩甲骨の可動域を拡大
モビリティドリルは、肩甲骨の動きを滑らかにし、関節や筋肉の制限を解消します。
ゴリゴリ音の原因となる肩甲骨の硬直や筋膜の癒着に対処します。
①キャットカウエクササイズ
「目的」
胸椎と肩甲骨の可動性を高め、筋膜の摩擦を軽減。
「手順」
1. 四つん這いの姿勢で、背中を丸め(キャット)、次に反らせる(カウ)。
2. 肩甲骨を意識的に動かし、ゆっくり10回繰り返す。
3. 1日1~2セット、痛みが出ない範囲で行う。
「ポイント」
動きを滑らかにし、胸椎の動きと連動させる。
「医学的根拠」
胸椎のモビリティ向上は、肩甲骨の動きを改善し、クレピタスを軽減する
(Heneghan et al., *Manual Therapy*, 2015)。
②肩甲骨回旋ドリル
「目的」
肩甲骨の上方・下方回旋を滑らかにし、関節の摩擦を軽減。
「手順」
1. 立った状態で、両腕を肩の高さで前に伸ばす。
2. 肩甲骨を上方に回旋させ(肩をすくめる)、次に下方に回旋させる。
3. 10~15回繰り返し、ゆっくり動かす。
「ポイント」
腕を動かさず、肩甲骨の動きに集中。
「医学的根拠」
肩甲骨のモビリティドリルは、関節の滑動性を高め、異常な摩擦を軽減する
(Kibler et al., *Journal of Shoulder and Elbow Surgery*, 2013)。
(4)姿勢矯正:前肩姿勢と猫背を改善
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による前肩姿勢は、
ゴリゴリ音の原因となる筋肉の不均衡を助長します。
姿勢矯正は、肩甲骨の正常な位置を回復し、摩擦音を軽減します。
①肩甲骨リトラクション(引き寄せ)
「目的」
肩甲骨を正常な位置に戻し、前肩姿勢を修正。
「手順」
1. 立った状態で、両肩を後ろに引き、肩甲骨を背骨に寄せる。
2. 5秒キープし、10回繰り返す。
3. 1日2~3セット行い、日常の姿勢でも意識する。
「ポイント」
胸を張り、頭部をニュートラルに保つ。
「医学的根拠」
姿勢矯正は、肩甲骨の前方傾斜を軽減し、筋肉のバランスを改善する
(Singla & Veqar, *Journal of Bodywork and Movement Therapies*, 2017)。
②デスク環境の調整
「目的」
長時間の座位姿勢による肩甲骨の硬直を予防。
「手順」
1. モニターを目線の高さに設置し、背もたれ付きの椅子を使用。
2. キーボードとマウスを肘が90度になる位置に配置。
3. 1時間ごとに立ち上がり、肩を回す(5~10回)。
「ポイント」
長時間の前かがみを避け、定期的な休憩を確保。
「医学的根拠」
エルゴノミクスに基づく環境調整は、前肩姿勢とクレピタスのリスクを軽減する
(Kim et al., *Journal of Physical Therapy Science*, 2018)。
(5)神経科学ベースのアプローチ:脳と感覚の調整**
ゴリゴリ音の一部は、脳が肩の動きを「脅威」と認識することで
生じる筋肉の過緊張に起因します。神
経科学ベースのトレーニングは、脳の感覚処理を改善し、肩甲骨の動きを滑らかにします。
①視線を使った肩甲骨ドリル
「目的」
視覚系を活用し、肩甲骨周辺筋の協調性を高める。
「手順」
1. 立った状態で、肩を回しながら視線を上、右、下、左に順番に動かす。
2. 各方向で5回肩を回し、痛みが出ない範囲で行う。
3. 1日1~2セット、ゆっくりと実施。
「ポイント」
視線を動かすことで、僧帽筋や肩甲挙筋の緊張を調整。
「医学的根拠」
眼球運動は、脊柱筋の活動を調整し、肩甲骨の動きを改善する
(Bigelow & Agrawal, *Journal of Vestibular Research*, 2015)。
②バランスボールを使ったトレーニング
「目的」
前庭系を刺激し、肩甲骨の安定性を向上。
「手順」
1. バランスボールに座り、両腕を肩の高さで広げる。
2. 肩甲骨を上下に動かし、10回繰り返す。
3. 1日1~2セット、バランスを意識しながら行う。
「ポイント」
不安定な環境で肩甲骨を動かし、脳の運動制御を強化。
「医学的根拠」
前庭系のトレーニングは、姿勢制御と肩甲骨の動きを改善する
(Moseley & Butler, *The Journal of Pain*, 2015)。
3セルフケアのスケジュールと頻度
効果的なセルフケアを行うためには、継続性と適切な頻度が重要です。
以下は、1日の例と推奨頻度です:
朝(5~10分)
- 大胸筋ストレッチ:2セット(各30秒)。
- 肩甲骨リトラクション:10回×2セット。
- 視線を使った肩甲骨ドリル:1セット。
昼(5分)
- キャットカウエクササイズ:10回×1セット。
- 肩甲骨押し込み(アイソメトリック):5回×10秒。
夜(5~10分)
- フォームローラー:1~2分。
- 僧帽筋上部ストレッチ:2セット(各30秒)。
- 肩甲骨回旋ドリル:10回×1セット。
「頻度」
- 痛みがない場合:毎日1~2回、3~4週間継続。
- 痛みや制限がある場合:1日1回、軽い強度で開始し、症状が改善したら頻度を増やす。
- メンテナンス:週2~3回、長期的に継続。
「医学的根拠」
- 継続的な運動療法は、肩甲骨の機能回復とクレピタスの軽減に有効である
(Page et al., *Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy*, 2010)。
- 低強度の運動を毎日行うことで、筋肉の協調性と関節の滑動性が向上する
(Hsu et al., *Physical Therapy in Sport*, 2015)。
4. 注意点と専門家の関与
セルフケアは安全で効果的ですが、以下の点に注意が必要です。
①痛みの確認
エクササイズ中に痛み、腫れ、熱感が増す場合は中止し、専門家に相談。
②正しいフォーム
誤ったフォームは症状を悪化させる可能性があるため、鏡や動画で確認。
③個別対応
ゴリゴリ音の原因(例:腱板損傷、滑液包炎)は個人差が大きいため、
理学療法士や整形外科医による評価を受ける。
「医学的根拠」
- 理学療法士による個別指導は、肩甲骨の異常な動きや
クレピタスの管理に有効である
(Page et al., *Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy*, 2010)。
- 日本理学療法士協会のガイドラインでは、肩関節の問題に対して
個別化された診断と治療が推奨されている(https://www.japanpt.or.jp/about_pt/therapy/tools/handbook/)。
まとめ
肩を回すと聞こえる「ゴリゴリ」音は、キャビテーションや
筋膜の摩擦といった正常な現象から、肩甲骨の異常な動きや
腱板損傷などの病理的要因まで、さまざまな原因で生じます。
このブログでは、ゴリゴリ音を軽減するためのセルフケア方法として、
ストレッチ、アイソメトリックエクササイズ、モビリティドリル、
姿勢矯正、神経科学ベースのアプローチを紹介しました。
これらの方法は、筋肉のバランスを整え、肩甲骨の滑らかな動きを取り戻し、
脳の脅威認識を軽減します!
自宅で簡単に始められるこれらのエクササイズを、毎日5~10分取り入れるだけで、
肩のゴリゴリ音が減り、動きが楽になる可能性があります!
痛みや制限が続く場合は、当院で個別プログラムを提供していますので、
ぜひお問い合わせください(๑•̀ㅂ•́)و✧
肩だけでなく、膝や腰の悩みにも対応していますよ!
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう
**参考文献**:
- Borstad & Ludewig, *Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy*, 2005.
- Cools et al., *British Journal of Sports Medicine*, 2014.
- Wilke et al., *Journal of Bodywork and Movement Therapies*, 2016.
- Hsu et al., *Physical Therapy in Sport*, 2015.
- Heneghan et al., *Manual Therapy*, 2015.
- Kibler et al., *Journal of Shoulder and Elbow Surgery*, 2013.
- Singla & Veqar, *Journal of Bodywork and Movement Therapies*, 2017.
- Kim et al., *Journal of Physical Therapy Science*, 2018.
- Bigelow & Agrawal, *Journal of Vestibular Research*, 2015.
- Moseley & Butler, *The Journal of Pain*, 2015.
- Page et al., *Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy*, 2010.
- Bialosky et al., *Physical Therapy*, 2018.



