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井上博文

大学院・大学編入受験のプロ

井上博文(いのうえひろふみ) / 塾講師

株式会社コムニタス

コラム

論点ずらし

2020年10月13日

テーマ:小論文対策

コラムカテゴリ:スクール・習い事

よく論点という言葉を聞くと思います。
簡単に言うと問う(問われる)ポイントということになります。「なぜ鳥は飛ぶのか?」という問いをたてたとすると、鳥が飛ぶ理由が論点です。そこから徐々に事実がわかります。そして理由が一つではないことも徐々にわかってきます。最初は素朴に「羽があるから」と理由を立てると、それが「正解」で、一応決着したかのように見えます。ところが、当然と言うべきか、「反論」がでてくることになります。「ニワトリみたいに羽があっても飛べない鳥がいるじゃないか」という反論です。したがって、「羽は必ずしも飛ぶためのものとは言えない」という結論になると、「羽があるだけでは飛べない」という事実に至ります。今度は、「じゃあ鳥が飛ぶのは羽以外の条件を探す必要がある」となり、「じゃあ筋肉量を調べて見よう」となります。これは仮説です。調べると言っても、食べても何もわかりませんから、鳥に限らず筋肉学者の意見をいろいろ聞いてみる必要があります。
と、こんな具合に、話が広がることを展開と言い、ここからでも無限に話は展開できます。最近は恐竜に羽毛が生えていた話もあるくらいです。私は、学問のこういった無限の広がりを楽しいと思いますし、自分もこの中にすすんで入りたいと思います。

しかし、このところ、学問の世界に無教養な政治家や政治屋が、本来の論点をずらして好き放題言って、学術会議のみならず、自分たちが単純に嫌いなだけの学者という生き物を貶めるように世論誘導していることに強い不快と危惧を感じます。この問題の論点は「総理大臣が6名を任命しなかった理由」であり、それが「誰が見ても納得できる理由か否か」です。「学術会議の在り方」「予算の使い方」など何の関係もありません。総理大臣が学術会議会員に相応しくないと判断したのなら、当然ですが、その理由はその学問分野での成果の問題でなければなりません。任命拒否ができるなら、当然、総理大臣の知見でそれぞれの学会レベルで、拒否された学者の成果を否定する能力がなければ、学術会議の推薦は全て意味をなさなくなるわけです。だとすると、やはり総理大臣は法律違反を犯していると見られても仕方ありません。にも関わらず、前総理大臣と同様、自分の感情や気持ちや気分で法を蔑ろにし、都合がわるくなると、相手ごと潰しにかかる、メディアを操作して自分に不利な論点を無視させて、有利な論点にずらして、あたかも最初から問題はそれであったかのように誘導する卑劣ぶりに辟易します。

研究者は事実を言うのが仕事です(例外はどこにでもいます)から、今のこの国の政治家たちとは対極にあり、とても疎ましい存在だろうと思います。しかし、政治家とて多くは研究成果の中で生活をしているわけですから、無知や不知の分野に安易に手を出してはいけないことは当然のことです。

それに加えて、より質の悪い手の出し方をするのが、質の悪い、政治家や政治屋で、こういう輩は、「難しいことがわからない」人で、考えようともしません。だから躊躇なく、諸悪の根源は学術会議の前会長などと、抽象的なのに、最大の侮辱を事実確認もせずに(抽象的なので事実いらずですし)、大きな声で叫びます。こういう輩ほど、自分が何かいわれると、相手を「不勉強」などと決めつけ、「アホ」「ボケ」的罵倒の言葉で戦おうとします。学者はこういう下品なことはしませんから、こういった輩とは関わりたくないのですが、それを知っていて、「テレビに出てきて論争しよう」と挑発します。しかし、学者は大学の中ならともかく、公衆の面前で、知性の低い人とは「論争」になり得ないことを知っていますから、そんな無意味なことをしません。こういった輩は論点を維持できないのです。鳥はなぜ飛ぶのか、の論点を維持しないといけないところで、「そもそも」論を持ち出すのが常套手段ですが、「そもそも鳥って卵から生まれたの?」などと言い出します。論点が違うと言われると、「こちらにも言わせて」などと聞かず、無視されると「学者はいつも上から目線」「こういう学者の姿勢が今の日本を」などと、好き放題言い始め、自分の言いたいことだけを、「自分の言っていることだけが正しいわけじゃない」と、言って、自分が正しいとしっかりと主張し、言いたいことがあるなら堂々と言えばいいなどと、自分の姑息さは棚に上げ切ったところで、大事な論点は全て無視して試合終了に持っていきます。
こんな輩が学者に口を挟むなら、学者は結集して、学会など学術の場に来てもらい、彼らのいう「論争」をすべきです。当然、出て来ないでしょうが。

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