賞与の算定対象期間について労働トラブルから考えてみた
先日、「同じ業務で定年後再雇用、賃金差別は違法」という
東京地裁での判決がニュースとなり、メディアでも多数
取り上げられていますが、国の制度自体を大きく変えることになる
かもしれない、ちょっと私からすると納得できない判決ですので
今後控訴されることになるかと思いますが、注目していきたいと思います。
定年後退職して再雇用される際には賃金が下がるのは、当然と考えられて
いました。その賃金の減額率などを決めている法律はなく、今回の報道では
再雇用後も同じ仕事をしているなら同じ給与を払えというものでかなり
違和感があります。
定年後は、高年齢雇用継続給付や年金などの一部支給を受けながら
現役時より減るものの補てんがあれば何とかなるということで社会保険
制度にて給付制度がもうけられているわけです。
定年後の賃金引下げが労働契約法に違反するということであるが、
そういうことになると定年後に再雇用などできなくなるし、65歳までの継続雇用義務を
定めている高年齢者雇用安定法そのものにも矛盾することになります。
判決では、業務は変わらないまま賃金を下げる慣行が社会通念上、広く受け入れられて
いるという証拠はないと指摘しているようですが、証拠は確かにないですが
それが雇用を維持していき、お互いにとってちょうどいい落としどころで社会は
成り立っていたわけです。
賃金が下がるのが嫌であれば再雇用契約は成立しないのだから
このあたりもちょっと疑問です。
今後注目される判決ですので追いかけていきたいと思います。
朝日新聞より
同じ業務で定年後再雇用、賃金差別は違法 東京地裁判決
定年後に再雇用されたトラック運転手の男性3人が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法だとして、定年前と同じ賃金を払うよう勤務先の横浜市の運送会社に求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。佐々木宗啓裁判長は「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に反する」と認定。定年前の賃金規定を適用して差額分を支払うよう同社に命じた。
労働契約法20条は、正社員のような無期雇用で働く人と、再雇用など有期雇用で働く人との間で、不合理な差別をすることを禁じている。弁護団によると、賃金格差について同条違反を認めた判決は例がないという。弁護団は「不合理な格差の是正に大きな影響力を持つ画期的な判決だ」と評価。定年を迎えた社員を別の給与水準で再雇用することは多くの企業が慣行として行っており、今回と同様の仕組みをもつ企業に波紋が広がりそうだ。
判決によると、3人は同社に21~34年間、正社員として勤務。2014年に60歳の定年を迎えた後、1年契約の嘱託社員として再雇用された。業務内容は定年前と全く同じだったが、嘱託社員の賃金規定が適用され、年収が約2~3割下がった。
判決は「『特段の事情』がない限り、同じ業務内容にもかかわらず賃金格差を設けることは不合理だ」と指摘。この会社については「再雇用時の賃下げで賃金コスト圧縮を必要とするような財務・経営状況ではなかった」として、特段の事情はなかったと判断した。
コストを抑制しつつ定年後の雇用確保のために賃下げをすること自体には「合理性はある」と認めつつ、業務は変わらないまま賃金を下げる慣行が社会通念上、広く受け入れられているという証拠はないと指摘。「コスト圧縮の手段とすることは正当化されない」と述べた。
会社側は「運転手らは賃下げに同意していた」とも主張したが、判決は、同意しないと再雇用されない恐れがある状況だったことから、この点も特段の事情にはあたらないと判断した。
運送会社は判決について「コメントしない」としている。(千葉雄高)